第152話:ランキング戦-7
「この剣の名は……」と誰もがその声に耳を傾けた。
そして……。
「終焉を齎す剣……終焉の剣!」
破壊から終焉に進化…いや真の力か…。
一段と破壊の神が強くなった気がする。
―終焉の剣とはよく言ったものだな……。
だが、神化をし更に強くなったことは間違いない。
「行くぞ……」とレイムは手を前に出した。
武器は持っていない……。
舐めてもらっては困る……。と心の中で思いつつビムルも剣を構えた。
初の神化同士の戦いだ。
二人はお互いを睨みつけ、そして同時に動いた。
「なめんなよっ!獄炎!」ビムルが獄炎の剣を振ると、複数の炎の玉がレイムに放たれた。
「破輪黒剣!」周囲の漆黒の大剣がレイムの前に移動した。
その剣は強度としては、破壊の剣と同等だ。
あの硬い防御は簡単には突破できないだろう……。
獄炎はレイムに届くことはなかった。
「てぁぁぁっ!」手を前に出すと、大剣たちがビムルに向かってきた。
「うぉぉぉっ!」大きく獄炎の剣を振った。
キーーン!、向かってきたのは10本中3本だった。
扱いはまだまだのようだ。
そして鎖が伸びる射程距離はほんの数メートルだろう。
「獄炎の領域!」
この距離なら完璧に入る!
その瞬間、下に巨大な赤い魔法陣が展開され下から獄炎の渦が発生した。
ボォーッ!、と獄炎の渦が周りの砂を消滅していった。
中の温度は、火山の中と同じだ。
「はぁぁぁっ!」と姿見えないが、レイムの声が聞こえた。
すると…「ぐはっ……ゲホッ……」痛み…それは俺の胸に何かが突き刺さった。
その瞬間、獄炎の渦が消滅した。
見えたのは、神雷破槍で俺の胸を貫くレイムがいた。
―そんなっ……獄炎の渦に飲み込まれたはず……。
―やっぱり、炎如き破壊の力には敵わないということか……。
「がはっ……」血を吐いた。
まだ神化は保っている……ここで倒れるなんて………。
何か……何かないのか……。
俺はこれを奪回するものを……ある………。
それは俺の手の中に……。
「レイムぅぅぅ……俺はまだまだだぜ……」と血を口から垂らしながら笑みを俺はレイムに向けた。
そのことに少し驚いたのか、硬い表情が一瞬崩れた。
―今だ!この一瞬でっ!
ビムルは獄炎の剣を上に向けた。
その動きを見ても、レイムは分からなかった。
「神器解放!……」そう…神器解放術……。
神化がその神器との重なりで起こるもの……だったら神器と心を合わせればより強いものが……。
獄炎の刀身は赤く光り出し、周囲の温度は上がった。
「くっ……」レイムは一旦距離を取った。
―そうか…神器解放術がまだ残っていた……。
これでは、また迂闊に近づけなくなった。
だが、まだ勝負はついていない…。
あの神器解放はどのような効果なのか……紅蓮の大剣みたいに周囲と自身を強化するものだったり、高火力を一度だけ放てるものだったり様々だが……。
どんな攻撃であろうと、準備は怠るわけがない……。
「破滅黒身鎧!」鎖で繋がれている剣たちが解けることはないが、熱に対して防御を張っているわけではないので、レイムにも余裕で熱がくるからだ。
獄炎の剣は紅蓮の大剣のように周囲を熱で覆っていた。
もしあそこに火薬なんか入れたら大爆発だな…。
すると、ビムルが動き出した。
笑みを浮かべ、普通に歩きこちらへ向かっている。
―まずいな…あれは身体と攻撃力が強化されている…。
―だけど、問題なんか何一つ……ない!…。
「はぁぁぁっ!」レイムは神雷破槍を構え、接近した。
「うぉぉぉっ!」ビムルは大きく剣を振った。
キーン!、刀身に見事に槍の先は当たっている。
剣と槍では、分が悪い……。
「はぁぁぁっ!」ビムルはランスを跳ね返し、また剣を振った。
殺った!……ビムルは心の中で叫んだ。
キンッ――!
「なっ……」獄炎の剣を止めたのは、周囲の剣たちだった。
手に剣がなくても周囲にあることをすっかり忘れていた。
だが、ビムルはその防御をどうにか破ろうと攻撃を続けた。
「はぁぁぁっ!」
キン!
「てぁぁぁっ!」
キン!
「ふっ…」
「はっ…」
何度剣を振っても、壁と相手をしているかのようだった。
「この防御は破れなよ……」と剣たちの向こう側からレイムの声が聞こえた。
―じゃあ、これで終わりなのか……。
―何故、この戦いに出たのか…。
「この戦いは無駄になんかするわけが…ないだろう……」ビムルの口が歪み、笑みを浮かべた。
この状況で、笑みを浮かべているのだ。
それを見たレイムは訳が分からなかった。
「じゃあ、それを証明してよ!」レイムは地面を蹴り、ビムルと距離を取った。
「あぁ、教えてやる……男の戦いの最期を……」獄炎の剣をレイムに向けた。
誰もがこの後の状況を黙って見ている……。
「我が神器……我の言葉を聞け……」
すると、刀身が更に光り出し、純白の光へと進化した。
それは炎ではなく光そのものだった。
「くっ……まだ何か隠し持っているのか……」
あの光は全く予想もつかない……。
だったら……。
「ふっ……」レイムも神雷破槍をビムルに向け、破壊の力を溜めた。
相手がそうやるんだったら、自分もそうすると……。
「男の最期か……どっかの誰かさんもそんなことを言っていたような……」と控室では、誰かがそう呟いた。
本当の敵は、あなたの後にいる者……。
私が我が剣を使うかもしれない時はその後の者との戦い……。
今、使うことなんて…ありえない……。
「破壊の一撃!!」と叫ぶと、神雷破槍の先端から黒と白の光が放たれた。
「いけぇぇぇっ!焔の光!!」炎が光になった瞬間だ。
二つの光は二人の間で激突した。
衝撃は凄まじく……。
だが、ズドーーン!、と大きな音とともにべムルの光が破壊の一撃に飲み込まれた。
そして……。
「これが、俺の最期……」
べムルも破壊の一撃に飲み込まれた。
勝負は最初から決まっている……。
だけど、5人は戦うことを決意したのだ。
「勝負あり…勝者、破壊の神レイム・レギレス様ぁぁぁっ!」と司会が叫んだ。
するとすぐさま、「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」と物凄い歓声が上がった。
「はぁ、はぁ、」と息を吐き、レイムの体力も少しは減っていたようだ。
するとレイムは自分が入る扉の方を見て、手を仰いだ。
すると扉が開き、ロナが顔を出した。
どうしたのか、という表情をしていた。
「瓶を……」とレイムが叫ぶと、すぐさまロナから小瓶が投げ込まれた。
それを受け取り、飲み干すと…体力、スタミナ、魔力は全回復した。
いつもだったら、その扉に入るレイムだが……レイムの足は動かなかった。
そして瓶を投げ捨て、向こう側の扉の方を向き、神雷破槍を地面に突き刺した。
つまり、レイムはここで待つと言っている。
「最後の戦いの前だ……」と呟き、精神を落ち着かせていた。
そしてそのことを理解したのか、向こう側の扉がゆっくりと開いた。
出てきたのは、金髪の髪…ラウル様と同じ雰囲気を感じる。
そう…彼が光の神シルス・レギレス……。
レイムの弱点の属性の神だ。
「僕も我慢できずに来てしまった……。君が戦う気なのだから…僕も本気で行かせてもらうよ……」と少しウザい喋り方で話し、すぐにシルスは神化をした。
周囲に眩い光が差し込む…レイムはそうゆう光でさえ嫌っている。
そして真の姿を現した。
「さぁ、君が言う、終焉の剣とこの太陽の剣で戦いを始めよう……」とシルスはそう言い、レイムを見つめ笑みを浮かべた。




