第151話:ランキング戦-6
「はぁぁぁっ!」肉体的力は当然ビムルの方が上だ。
「くっ……」レイムは軽く飛ばされた。
そしてビムルも炎の鎧を纏った。
そういえば、性別での男はビムルが初めてだ。ビムルに劣るのは筋力とスタミナだ。
スタミナを削ればいいが、レイムはそれまでのスタミナはない……。
つまりは、ビムルのスタミナを削ることは不可能ということ……自分のスタミナが消える前に倒さないといけない。
「はぁぁぁっ!」次にビムルが接近し、レイムに剣を振り下ろした。
キンッ!
「うっ……さすがに重いな………」剣を受け止めるのも容易だ。
「力だけでは、俺の方が上だ……」ビムルは自分の方が上だとわかり、もっと強く力を入れた。
「糞っ……破壊の手!」
その瞬間、レイムの背後から破壊の手がべムルに衝突し、ビムルは遠くに飛ばされた。
「破壊の神の6つの力の一つ……」破壊の手ならこの闘技場を埋め尽くせる。
破壊の手は打撃、魔法も可能だ。
「全てを貫け……」とレイムは左手を前に出した。
黒い魔法陣が掌を中心に展開した。
すると無数の破壊の手も魔法陣を展開した。
そこまで操れることには、ビムルは知らなかった。
「何っ……獄炎の剣!」
それに気づいたビムルは、すぐさま神器を地面に突き刺した。
すると、ビムルの周りに獄炎の壁が現れた。
この威力は、人が通ったら向こう側には誰もいないくらいの力だ。
そして…「破壊!」レイムの手と無数の手から破壊の力がビムルに放たれた。
シュン――ズドーーン!!と獄炎の壁が破壊の力とぶつかり見えなくなった。
これを見た観客は…あぁ、終わったと思った者も少なくないだろう。
あれほどの破壊の力を受けては、立ち上がることはできないだろう。
衝撃が止み、煙の中に赤き光と周りに火花が走っていた。
―あれは……炎……だけどあの破壊をどうやって……。
レイムは自分が外したのかと思ったが、そんなことはない……。
目に見えて、あの距離で外すはずがない……。
どう考えても仕方がない…。とレイムは剣を構え、突撃する体勢を取った。
その瞬間、炎の影が消えた。
「っ……」どこを見てもいない!どこに……。
そして後ろに感じる熱を感じ後ろを向いた。
「なっ……そんなこと………」
そこには、神化をしたビムルの姿があった。
あのスピード……。
相手が神化してしまえば、レイムは不利になる。
神化は全体的にアップする……それで戦闘では回復と言う意味で発動も考えるべきだった。
「あがっ……」剣を振った動作は見えなかった。
だが、レイムの横腹には剣が確実に当たっていた。
グシャッ!
血が空中に飛び、レイムは吹っ飛ばされた。
赤い血が砂に染まった。
「くっ……」傷を負ったレイムの額から汗が零れた。
だが傷はすぐに回復はしなかった。
傷口を抑えるレイムはわかる……傷口には赤い炎がまとわりついていた。
これが傷の回復を邪魔していた。
「全て、の力よ……破壊の、力に……」レイムはその力を破壊の力へと変換し、やっと傷の回復ができた。
あんな攻撃を毎回受けていては、回復の余裕がなくなってしまう。
「糞っ……」
しかも鎧を纏ったのに……。
悔しいが事実だ……。
その時、レイムの心にあの感情が芽生えた。
それは、ラウル様と魔王軍を倒したあの日からのこと……。
そう、レイムはまだわかっていないが、その目にあの紋章が浮かんだ時の感情だ。
その感情は、我儘というべきのもの……自分が最強…誰にも負けない……邪魔なものは全て殺す……。
これは、誰の感情で誰の記憶なのか……。
「レイム様……今です!……剣を信じてください……」とロナの声がその感情を吹き飛ばした。
一瞬のことでレイムは理解ができなかったが、ロナに言われた通りに剣を握り…そして信じた。
向こう側には、炎の神……理性は保っているが、早く次の攻撃をしたいらしい……。
強大な力に飲み込まれる心は強い欲求が沸き上がってくる。
そんな向こう側には、剣を見つめる少女……。
そしてレイムはその言葉を発した。
「我が力目覚めよ!破壊神典『星を殺す者』!」夢に出てきたあの言葉を口にした瞬間、自分の中から無限に湧き出てくる力にレイムは飲み込まれた。
見た者は3代目だけだろう。
あの大戦で3代目破壊の神と戦いそれを目にしたのは、全員だ。
その全員がその瞬間、息をのんだ。
雲の上から…誰も見えない所から巨大な魔法陣が展開された。
ズドーーン!、とそこから放たれたのは黒い雷だった。
それは、レイム目掛けて流れていった。
そして、ズドーーン!!、とレイムは光に飲み込まれた。
だがこれは攻撃ではなく、覚醒という意味なのだろう。
そしてレイムが手をはらうと、その光が周囲に広がった。
その後に破壊の神の真の姿が見ている者に衝撃を与えた。
鎧はなく、黒い茨のようなものが体に巻き付いているかのごとく……レイムの両方の手首足首、首には奴隷のような黒い輪があり、そこから2本ずつ伸びる計10本の鎖の先には、10本の漆黒の大剣が更に大きくなり、柄の部分には黒い輪があり、黄金で施されていた。
常に浮遊していることは変わらない…。
頭には王冠と上には黒い輪があった。
そしてレイムが足を乗せているのは、破壊の剣が神化によって新の姿になったもの…。
背中には巨大な翼が……周囲には破壊の手も漂っていた。
「あれが……破壊神の神化……なんと神々しい……」と観客にいる者達やそれを見守る魔王達や3代目4代目の神々達がそれを見据えていた。
「なるほど……神化同士の戦いか……」とべムルはそう言った。
この状況でも、呟けるとはまだ力はあるようだ。
「あぁ……この姿になった以上……私の剣を受けてもらうぞ!」と若干口調も変わっていたが、そこも魅了的だ。
私の剣と言われ、ビムルはレイムの足の下にある巨大な剣を見た。
大きさは漆黒の大剣より大きかった。
そこが、核…弱点と言っていいほどのデカさだ。
この形態のレイムは剣を握っていない…。
足場として刀身に足の乗せていた。
「その踏んでいる……破壊の剣でか……」とビムルは問いかけた。
それが破壊の剣ということは明白だ。
だが踏んでいる以上それで攻撃とは、信じられないのだろう。
ビムルの方は剣が同じく巨大化になり、更に威力も増しているだろう。
周囲には、火花と炎が舞い、鎧を纏い…全体的に赤い印象だ。
獄炎の神に進化したような感じだ。
そしてビムルの問いにレイムが口を開いた。
「破壊の剣……そうだな……さっきまではそうだった……」とレイムは柄の部分の撫でながらそう言った。
んっ…さっきまでは……。
ビムルは何を言っているのかがわからなかった。
「これは、真の姿……だとしたら……我が力は更なる進化を遂げた……」といつもとは違うテンションで少し気持ち悪い…。
レイムは両手を広げた。
「つまりは……」とビムルは言った。
進化つまりは、何かが加えられる……それとも全くのものに進化する……。
進化と聞いてこうなるが……。
するとレイムは、背を曲げ、真上を向いた。
「この剣の名は……」と誰もがその声に耳を傾けた。
そして……。
「終焉を齎す剣………終焉の剣!」




