第147話:ランキング戦-2
初戦が終了して10分が経った。
一本目の破壊のポーションを口にした……。
合計五回の戦闘だが、この次からは力の消耗が激しくなってくる。
その考察は、この戦いが終わってからでも問題はない……。
次の相手は風の神だろう…風属性の攻撃だが、はっきり言って油断はできない…。
遠距離攻撃だとすると近づくのは困難だ…。
レイムはひたすら、戦法を考えていた。
どうしたら相手に近づき、剣を当てられるか……。
今はいいが、この先では破壊の力で片付けられる問題が少なくなるのをレイムは恐れた。
破壊の力は絶対と、この決まりは誰にも崩すことはできないのだから…。
「レイム様……」椅子に座り、低い位置に顔を下げ一点を見つめるレイムにロナは恐る恐る問い掛けた。
「あぁ、少し考え事していて……どうやったら破壊の力が崩れることなく、完全無敵の力になるだろうと……」
「……」ロナはその言葉の意味に苦しんだ。
「申し訳ありません…。破壊の力はもう既に無敵かと、どんな神でもあの巨大な魔法陣から放たれる破壊の力は防いだとしても、永遠に保つことはできずに敗北するはずです……」と、そう言った。
本当にそうなのか……。レイムは戦いということで自分自身の力が信じられなくなっていた。
「だけど、今のレイム様はその力が信じられないようですね……」ロナはレイムの気持ちを分かっていた。
どんな時でも、レイムを見てきたロナ…いや守護者ならわかることだ。
ロナの質問にレイムは頷くことはなかった。
だが、それはもうわかっていた。
「でしたら、自分自身の力が信じれるまで、出せばいいと思います……。戦いというものは色々ですが、今の戦いは完全な殺し合いです!そんな時に出し惜しみしている破壊の神など…今レイム様を見ているロナを含め、レイム様を知っている者達が悲しむのでないのでしょうか……。今のレイム様はあの最強と呼ばれた破壊の神ではないような気がしてしまいます……」
その思いは、レイムにも確実に届いていた。
生まれた時から見てきたロナだから言え、感じられる思いを今レイムは少しだが感じたのだ。
「レイム様……破壊の神としての力をお見せください……」とロナは一点だけを、レイムの目を見つめた。
崩れた時は、自分が助けに行きますと、言っているかのような目をしていた。
「わかった……。この戦うは殺し合い…相手との戦いは全力でやるよ!」と歯を出し、ニコリと笑った。
まだまだ未熟だが、未熟だからこその感じ方や初めてのことなどを体験し、それを見ているロナも別のものを感じることができる。
この光景は正しく、生命に許されたものと言ってもいいだろう。
「さぁ、もうすぐ扉が開くぞ!次の対戦者は風の神ルル・レギレスぅぅぅっ!」と司会の声が響いた。
まだ開くことのない扉の前に立ち、自分の頬をパンパンと叩いた。
「よし!じゃあ行ってきます!」とレイムは後ろを振り返った。
「はい!行ってらっしゃいませ、レイム様!」とまったく笑顔を見せないロナが満面の笑顔でレイムにそう言った。
そして扉がガタッっと開いた。
サッサッと砂上を歩く音と微かに舞う砂埃の景色はようやく見慣れてきた所だ。
レイムは目がいい方だ。向こう側に、緑色の髪が靡いていた。
「あれか……」前回の水の神は神器を使っていたのか?……それか神器に値するものを使っていた。
だったら、風の神が使う武器は……。
「なんとなく予想は着く……」そう、先代の神とは戦ったことはあるからだ。
親の二人が4代目となるとレイムの情報量では、有利になるかもしれない…。
だが、神の力は噂や神話なので、ほぼ正解なものもあるからな……。
そして今回の戦いにおいても、風の神は神化を使用してくる可能性が高い。
頭の整理をしながらレイムは、剣を抜き、鎧と翼を展開した。
『破滅黒身鎧』と『破壊の翼』がこの戦いにおいて通常装備になってしまった。
だが、剣だけの装備だったら逆に相手が舐めていると思われてしまう。
そんなズル賢い神とは、破壊の神は思われていないからな……。
そして、「では、第二戦目……戦闘、開始っ!」と一回聞いたことのある言葉と声が再び闘技場に響いた。
相手が何を繰り出すかなんてもういい、絶対は初手で相手の動きを封じること……。
「破壊!」展開した魔法陣は空間にバラバラと複数出現したが、全てルルの方へ向いていた。
そして展開したすぐに、破壊の力が放たれた。
何度も言っているが、小さな魔法陣から放たれる破壊の力も威力は絶大だ。
その瞬間、地面が大きく揺れルルの手前に巨大樹がもの凄い速さで生えていた。
その巨大樹は見るからに加護で守られている。巨大樹からの感じと光でそれは見ただけでわかる。
そして破壊の力はその巨大樹のせいで、ルルには届かなかった。
「糞っ……」風の神は全ての緑を司る神……その植物たちの力の元と言うならば、エネルギー玉を放つことも可能ということか……。
だが、レイムは鎧と翼を装備しているため、まず当たるはずもないが…もし当たった場合はダメージは小ですむ。
そしてあの巨大樹だが、自分の技のせいかあれも攻撃してくると思ってしまう。
それも考えると、何回も出せることはない……絶対に回数制限が必ず来る……。
だけどそれを待っていることはない……高火力で削れば……。
「破壊の物体……漆黒の大剣!」そう唱えると、背後に五本の漆黒の大剣が現れた。
大剣と言うが、人が持てる質量ではなく巨大な剣だ。
ぶっちゃけ飾るような大きさだ。
これなら……。
「ふっ……」レイムはルルに急接近した。
くらえっ!、レイムは左手を思いっきり前に出すと、漆黒の大剣たちがレイムの越しルルに向かった。
「シズゼリア!」と叫んだ瞬間、上からあの槍がズドンとルルの前に落ちてきた。
その槍に全ての漆黒の大剣が衝突した。
だが、神器でも破壊の物体で創った大剣を全て止めることはできないはずだ。
その根拠は決して硬いものではなかった。
そしてそのあいまいな自信は風の神が代々受け継がれている神器によって崩れた。
「なっ……」失態だった。
神器すらも舐めていたようだ……。
神器には神器でなければならないのは、知っている。
「ふっ…」レイムはすぐに漆黒の大剣を下げ、破壊の剣を思いっきり振り下ろした。
「てぁぁぁっ!」
ルルは地面に刺さったシズゼリアに手を伸ばし、すぐさま横に構えた。
ガンッ!、と物体がぶつかる音が響いた。
「やはり、王家の戦いはいつ見ても面白い……。最強の神が他の五人を倒すというのも……神器同士の戦いは誰もが苦戦するが………奴はそんなもの関係はなかったら…」とジルフィスはぶつかり合った時に、音の波紋のように呟いたが、誰の耳にも入ることはないだろう。




