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第1話:世界を蝕む存在



 私はふとそこに生まれた。


 そこは私以外誰もいなかった……私には強大な力しか何もなかった。

 自分がここに生まれた理由をずっと考えた。どれだけの時間が過ぎていったか。


 誰もいないこの空間で考え抜いた……そして私は思った。

 

 自分と自分の中にある知識や感情と力を組み合わせて私はある物を作った。

 

 そして私は、無になった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ここは海のど真ん中。

 そこには多くの何かの影はある大陸に向かって移動していた。


 その影の正体は魔王軍。魔王軍というのはこの世で最も残虐極まりない軍隊のこと、軍を操るのは勿論のこと魔王だ。

 この世界の魔王は数人確認されていて、その中で頂点に立つのが大魔王と言われた。


 そして、それは止まることもなく海を渡り、地を踏み、進んでいる。

 その足音はまるで行進のようにまとまっているが、それが聞こえたら終わりと人々には伝われていた。

 最近では神々に倒された魔王が復活したと噂されているが、そのことに関して神々は何とも思っていないとは嘘になるが……。

 神々の中に確実に死ぬ所を見た。という証言もあるが、そんなのは役に立たないだろう。


 今、問題なのは、再び魔王が世界を支配しようとしていることだ。


 まったく懲りない奴らだよ。

 神々の頭に思い浮かぶのも目に見えている。

 だが、そのせいで世界の半分が支配され、神々が破れる所までいったこともあった。

 

 だから、油断してはならない敵なのだ、被害は必ずしもゼロとは言えないのだから……。



 ここは、ウォーシンク大陸南の防壁。嵐の時に波が高くその先の国や町に被害が起きたというわけで設置された砂浜にそびえ立つ壁……防壁の前には多くの騎士が水平線の一点だけを見つめていた。


 その目には明らかに恐怖の色があった。

 その前に魔王軍が現れウォーシンク大陸の半分の騎士達が魔王軍の侵攻を阻止しようとしたが一人も帰ってこなかった。


 はっきり言えば、そりゃあそうだ、という反応だ。

 実際にこれが今の人間の力だった。


 この世界の中で最弱の種族……他より身体能力は低く、地を歩く生物。


 そんな種族に魔王軍は負けるのかと言われたら、恐らく世界中の者がいやッと答えるだろう。


 そして最近の魔王軍はどこから現れたのか分からず、時には海や空や突然町に現れることもある。

 それがこの世界の魔王の軍勢だった。


 つまり、そこにいた者達はこの国のために死に行くようなものだった。

 そのことに対して反発する騎士達は多かった……だけど大切な者のためにとほとんどの騎士が今、ここにいる…。

 騎士達が向いている方は水平線が見えるだけだったが、向こうの海がだんだんと黒く染まるのが見えた。

 あれが魔王軍の影だ。



 「隊長、魔王軍が南側の海に現れましたッ……はぁ、はぁ、はぁ……」防壁の後ろには隊長達のテントがあった。

 

 そこに入った若い騎士は報告をしその場に膝をついた。


 するとその場は一瞬にして凍り付き絶望の表情を浮かべ涙を流し座り込む者もいた。

 この状況は、とうとう来てしまったか……とそれは騎士達が死ぬときはもう近いということだ。


 もう終わりだ、と諦める者がほとんどだ。

 死にたくない、と自分のことしか考えていない者も少なくない…。



 そして絶望のあまり、涙を流す者も……。


 だがその中でもいや最後まで命を懸けて戦うと……。

 勇気のある者は必ずそこにいた。立ち絶望に浸っている騎士達の奥で大きな椅子に座っていた騎士長は思った。


 俺はただのちっぽけな一人の人間……。

 剣術ができるだけ……俺にはそれしかないのか……。


 もうこの際だからと諦めるが騎士としての誇りが強かった。背中に靡く、国の紋章が刻まれたマント……それは国を背負っているという証拠だ。

 騎士長はその場にいた誰よりも勇敢な者の頭に浮かび上がっていた。心に決めた騎士長は他の者にはない恐怖に立ち向かう表情をしていた。


 これが、国を背負う騎士長の姿、そして死を恐れず進む人間の目……。

 この目は人間にしかない目……無数の種族の中で最弱の人間に与えられた、最も深きもの……心……。他の種族より明確に存在する感情…喜び、悲しみ、怒りの無数の感情を持ち、恐怖心を抱えたり、悔しさや、その感情に対する結果もある。

 それはとても美しいもの、人間一人一人に存在する。

 生まれた時から自分の中にそれに任せることもいいが、自分でそれをコントロールし、人間は進んで行く。


 それを理解した騎士長は立ち上がり、大きく息を吸った。

 そして全ての騎士に告げた。

 「今!我々は絶望に満ちている。だがそれでも我々はこのウォーシンク国の騎士として最後まで戦うのだ。たとえどんなに敵わない相手でも騎士の誇りを懸けて魔王軍と戦うと……俺は今まで背負ってきた国のために、そして自分の心とともに…最後まで!戦う!」騎士長は涙をこらえ、鞘から剣を抜き柄を握りしめていた。


 そして騎士長は続けた。

 「この国のために友人のために家族や大切な人のために……俺達は魔王軍をこの国に一切入れないことだ!それが今俺達にできることだ」後ろに刻まれた国のマントが彼らの騎士の誇りを象徴していた。

 その言葉に騎士の全員は国と心に誓い恐怖に立ち向かうと決めた。


 そして全ての騎士が流れるように剣を抜き、魔王軍へ目をやった。

 そこにはもう顔を出していた。


 それに臆することなく、騎士達は恐怖と決めた誓った思いを乗せて大声を上げた。

 「オォォォォッ!やってやるぜェェェッ!」騎士の誇りを持つ者達が歓声という叫び声をあげ、その場にいた大勢の騎士は剣を構え魔王軍に立ち向かった。


 この暗く息もできないこの絶望の中で俺達は国のため人のため自分のため大切な人のために戦うことを決めた。



 そして魔王軍が海から完全に体を出した。

 「魔王軍を陸に上げるなァァァッ!」と声が響きたり騎士たちは魔王軍に向かって走り、剣を向け魔王軍は立ち向かう兵士に魔法陣を向けて魔法を放った。


 これが人間なんだと魔王軍にわからせるために、騎士達は魔法を交わし魔王軍へ少しでも近づこうとした。

 剣で魔王軍を斬り刻むために……。



 だが結果はわかっていた。

 立ち向かった兵士も国もすべて……そう、すべて……。ウォーシンク大陸の南防壁では騎士と魔王軍の戦いはしばらく続いた。



 そして、数時間後……。

 防壁の先にある国は跡形もなくなってしまった。立ち向かった騎士達は次々と灰になり、国では人々が無残に血を流し倒れていった。


 魔王軍はただ自分達の誇りで止めることなく進み、後に残ったのは血で赤く染まった死の道だった。


 生き残った者は当然いなかった。

 もちろんその国の王も……。


 一つだけわかったことは今回の魔王軍二十万の軍勢だったことと謎の幹部が裏で操っていたことが世界最大国家光の国エレクシア領域首都、エレクシアへと情報がわたった。





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