年末年始ポスカ用SSの残骸
窓の外はすっかり暗くなり、白いものがチラついていた。
今朝から降り続けたそれのせいで、今日も、ついでに明日も雪掻きだ。
「だから冬は嫌いだよ」
「アンタ、夏も嫌いでしょう」
年末年始のスペシャル番組を見ながら、ぼんやりと呟くと、頬杖を付いていた幼馴染みがこちらに視線を向けた。
黒縁眼鏡が、蛍光灯の光に当てられて、キラリと光る。
「極端な季節が嫌い。後、冬はまた来年ってなるから嫌い」
結局今年も死ねなかったよ、そういう意味を込めて言えば、皮の剥かれていない蜜柑が投げ付けられた。
鼻が潰れるかと思ったが、そんな簡単な話ではなく、炬燵布団に入れていた両手を出す。
テーブルの上に転がったそれを拾い上げて、自分の手で剥き出せば「どうせ来年も死ねないものね」と言われてしまった。
異論反論、色々と唱えたいところだが、毎年恒例のやりとりなので、そんなこと唱えられるはずもない。
幼馴染みの言っていることは、あながち間違いじゃないのだ。
現にボクは生きている。
蜜柑を剥き終わったところで、テレビの中からバラバラな「ハッピーニューイヤー!」が聞こえた。
「……今年も宜しくしてね。生きてる限り」
「どうせ今年も死ねないんだから、宜しくするに決まってるでしょう」
ボクが剥いた蜜柑を半分、奪い取った幼馴染みが笑うので、ボクも小さく笑ってみた。