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短編

名誉欲

作者: 一星屋

 すわ、新種か!?

 恩師の著作にない草を現地にて見、彼は心臓を縮こまらせ、しかる後に拡大させた。

 喜びあふれる爆発は、超新星爆発でもお目にかかれないような動きであったろう。なぜなら彼の体全体を、ひゃっほうと宙に浮かべせしめたのである。

 これで私の名前が、学術史において永遠に刻まれることとなったのだ。

 人はいずれ死ぬるもの。近隣の人々に刻まれるとしても、紙に記される如くあまりにも頼りない。そこを私は石に刻む許しを得たのであり、つまり私は人のある限り不滅の存在となったのだ。

 と言った所で、彼は心を落ち着かせた。

 いやまて、新種を発見したとしても、必ずしもそうなるとは限らない。

 星々ならば発見者の名前が付けられる所を、草花では確実でないのである。

 これは困ったことになった。新種の草を見つけたというのに、私の名前は永遠になりえないかもしれないのだ! それは到底許されることではない。

 私の名前は石に刻まれる如く、後世の人々が諳んじえなけれなならぬ。

 だがしかし、ああ、これが星々ならばよかったのだが。月とすっぽん、雲泥の差。星と草と来たものだ。無論、草とて学術的な価値は極めて高いのである。それを発見したことは大きな功績であるし、重要な事項だ。喜ばしくないはずがない。

 おお、そうだ!

 彼は再び宙に浮いた。

 学術的な発見をしておきながら黙っていたとなれば、極めて大きな事件となる。事件史に私の名前が刻まれるではないか!

 これなる草がどれほど重要かは、今から研究して突き止める必要はあるものの……手段としては十分である。

 よし、これを早速掘り出して、研究室に秘めておこう。


 こうしてこれなる草は、発見されて暫く記録になかったのである。

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