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無題  作者: ペルタタ
プロローグ
1/8

~夢~

彼は奇妙な夢を見た。


異常といえる建造物の前に彼は立っていた。


その建造物は彼が見ただけでも今まで発見されてきたどのような歴史的遺産よりも遥か太古のものであることが見て取れた。

いや、実際には『感じとった』というべきなのだろう。

緑色のどろどろとした液体に覆われたその建造物は、見る者を困惑させるような雰囲気をかもしだしており、その雰囲気に惑わされるのであろうか、何も考えずに見たのならそれは石を積み上げただけのものにしか見えない。

そのような建造物が歴史的遺産よりも太古のものだと感じ取れたのは、感性の豊かな彼故であろう。


その建造物は例えるのなら宮殿のようであり積み上げられた石に刻まれた奇妙な象形文字がその建造物が何らかの文明の下に築き上げられたものだと語っていた。


だがそれはありえない、ありえないのだ。

なぜならその石造りの建造物は人間には――すくなくとも象形文字から察した時代の人間には――確実に建造不可能であったからだ。

簡単な形だけならばその建造物を造りだすことはできたであろう。

しかし規模が違う。

人間が作る宮殿とは、規模が違うのだ。

その違いは大きさにある。

人間の造るものと比べると、一つ一つの石が大きすぎる。


建造の方法にしても、ピラミッドのように頂点に行けばいくほど小さく、細くなるのではない。

下から上まで均一な太さの柱をはじめとして、おおよそのものが目立つような隙間がなく、綺麗に石が敷き詰められており、石を上まで運ぶ方法が見つからない。

たとえ運ぶ方法が見つかったとしてもここまで大きな石を、見ただけで大質量なこれらの石をあの高さまで持ち上げることは不可能だろう。


まるで巨人が作ったかのようである。

その表現は正しいのかもしれない。

その建造物には、かすかに見える程度ではあるけれども、人間のものとは考えられないほど大きな足跡のようなものが残っていた。

だが、その足跡には長い爪のようなものがついており、足跡からはこの建造物を築き上げた者がどのような姿なのか想像することは容易ではない。


しかし、この建造物の異常な点はそこではない。

最も異常なのは声である。

その建物の内部から声が聞こえるのだ。

声と表現していいのかさえもわからない。

理解はもちろん、人間には発音さえも不可能であろうその声は、聞いているだけでも頭が、神経がおかしくなりそうである。

発せられているからにはその声もなんらかの意味を持っているのであろうが、聞き取れないためその声の意味することは分からない。


この建造物は声も含め、すべてが人間には実現も理解も不可能なのだ。

彼がここまで理解できたことが不思議に思えるくらいに。




そこまで考えたとき、どこからか声が聞こえた。


「ほぉ、意識を保っている人間がまだいたか」


頭に直接響くような声は、彼に老いた男性を連想させた。

若干喜びを含み、声は続けた。


「丁度いい、あと一人いないかと思っていたところだ」


その声をきっかけに、建造物は崩れ始め、声はしだいに聞こえなくなっていく。

そしてすべてが消え去った時、声が彼を夢の世界から現実へと追いやる。


「待っていろよ、草薙世奈。すぐにお前を迎えに行くからな」



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