崩壊の音・2
他のゴミの山を崩さないように登り、1番高いところまで来る。
割と安定した場所なので、座っても大丈夫だ。
私は辺りを見渡した。
どこを見てもゴミ。
見渡す限りゴミの山。
「かわいそうにね」
誰に言うでもなく私は言った。
私の声は、空気に放たれ、消える。
ふっ、と笑みをこぼし、自分が座っている所のゴミをひとつかみ。
すっかり汚れてしまったゴミ達。
「私は、君たちと同じ」
ゴミに話しかけるなんて、どうかしてる。
でも、同じモノ同士として、話したかった。
ゴミを宙に放り投げる。
何者にも縛られなくなったゴミは思い思いの方向に飛び、やがて小さな音を立てて落ちた。
「悲しいね…」
でも、涙は出ない。
こんなのもう慣れっこ。
何度も何度も、孤児院でも、このゴミの街でも考えたもの。
悲しい、と思う。
ただそれだけ。
私は、親に捨てられた。
人間に捨てられた。
ゴミ達も人に捨てられた。
恨むべくは、人間。
私と同じ、人間。
――ガラッ、がらがら…ガララッ…
まただ。
また音がする。
何かの崩れる音。
上から下へ墜ちていく音。
まるで、このゴミの山達が崩れているような音。
私は立ち上がった。
その位置から、360°回る。
しかし、どこも崩れている箇所はない。
音が聞こえるだけなのだ。
*
それから、私に昔のような静寂が訪れることはなく。
永遠に、何か崩れていた。
小さな音だったそれは、日に日に、少しずつだけど、大きさを増している。
…墜ちているモノが、増えている。
何の音だろう。
現実に崩れていっているモノではないのだ。
食料と交換してくれる人にこのことを言ってみたのだが、音なんて全く聞こえないという答えが返ってきた。
つまり、他の人に聞こえなくて、私だけに聞こえているということ。
* * *
私はいつものように、ゴミの山に座っていた。
無心に座っているのではなく、音のことを考えながら。
なぜ、私だけ?
捨てられた私だけが、聞こえる音…?
何が崩れているの?
ゴミの山?
ううん、崩れていない。
いつものようにゴミとして静寂を守っている。
汚れた手を太陽にかざす。
まるで、そうすれば手が清められるかのように。
太陽は、きっと汚れることを知らないだろう。
「地球は汚れたのに」
地面。
空気。
自然。
人間の心。
「大変だね、地球も。
こんなに汚れた者達を、捨てられたモノ達を背負って生きているなんて」
言って、はっ、とする。
何も私たち捨てられたモノ達だけが苦しみ、辛い目に遭っているのではない。
地球だって…辛い…?
「聞こえるのは、地球の泣く声…?苦しむ声?」
莫迦な。
何故そんな音が聞こえる?
…私が捨てられたモノで…人間を恨んでいるから?
私には、何も出来ないのに。
*
ぐったりとゴミ山に寝転がり、ぼんやり考えた。
地球の音…。
地球が崩れていく音。
地球が死んでいく音。
地球は治せない。
もう崩れたモノは元に戻りはしない。
永遠に欠けたまま。
「そして人間は気付かない」
毎日毎日、地球が崩れていくのを…。
*
人々が、その鈍感な脳で考え始める。
しかし、捨てられるモノの見解を改め始めたとき、地球は死んでいるよ。
そして人間もゴミになる。
これが末路だよ。
結局、私が言いたかったこと、
分かっていただけたでしょうか?
ぼんやりでも、感じていただければ
幸いと存じます(こんな文(?)でも、
分かったあなたは素晴らしいっw)