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歴史もの

意義

作者: しのぶ

※フィクションです。

機体の不調のために出撃が遅れてしまい、俺は一機だけで飛び立つことになった。爆弾の満載された機体に乗り込み、飛行場を飛び立つと、ついにこの時がきたのだと感無量である。

今から敵艦に特攻しに行くのだ。


ずっとこの時のために、この時のためだけに生きてきた。失敗は許されない。必ず完遂しなければ。



飛び立ってしばらくして、無線が入った。上官の声がする。


「飯野、聞こえるか?」


「はい、何でありますか」


「作戦は中止だ。戻ってこい」


「えっ?…なぜでありますか」


「日本は停戦に合意した。作戦は中止になった。だから戻ってこい」




…俺は恐る恐る尋ねた。


「それはつまり、日本が降伏したという事ですか」


「そうだ」




…ショックだった。しかし驚きはしなかった。前からその予感はしていたからだ。


上官は続けた。

「そういうわけだから、戻ってこい」


俺は言った。

「断ります」


「何だと?」


「自分は戻りません。このまま最後まで行きます」


「おい貴様、ふざけるな!!命令が聴けんのか!」


「自分はずっと、この任務のためだけに生きてきました。今さら生きて帰ったところで、そんな自分には何の存在意義もありません。だから自分は、最後まで行きます」


「飯野!!さっさと戻らんか!日本は停戦に合意したのだ。その後に攻撃すれば、どうなるかわからんか!!」


「大丈夫です。攻撃はしません。しかし戻りもしません」


上官はまだ何か言っていたが、無線を叩き壊すと静かになった。



やがて遠くに、敵艦の姿が見えた。敵はすでに気付いているようで、戦闘機を飛ばして来ている。


だが、その必要はない。


俺は急上昇すると、機首を反して、全速力で海に向かって突っ込みながら叫んだ。


「大日本帝国万歳!!」


そして機体は爆発して、何もかも木っ端微塵に砕け散った。






特攻機に無線がついていたかどうかは未検証です。他にもいろいろ穴があると思いますがフィクションなのでご了承ください。


ただし、終戦後にあえて特攻したり自爆したりした特攻隊員がいたのは事実です。

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― 新着の感想 ―
[一言] あまり上手に言えないのですが、共感します。 現代人の自分がそうなのだから、そのときに生きていた人たちの思いは、とても引き返せないものだと想像します。
[一言] 僕が「俺」だったら、同じことをしていたかもしれません。 なんというか、おさまりがつかないですから。
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