第九話 スウマキツミ
「ああ、俺? 俺はスウマキツミ。いやそんなことはどうでもよくってさ」
「え? ああ。俺のサングラスが似合ってないって? Tシャツもジーンズもダサイ? まあそのくらい分かってるって。ただ、そのへんの店でセットで買っただけだよ」
「で、君、モノボードって知ってる? このへんで有名な噂なんだけどさ」
「♪新月の晩、時計仕掛けのモノボードたちが現れる ってね」
「ああ、知らない。そっか。残念」
「ありがと。それじゃ」
「え? 私と付き合って? お兄さん困っちゃうなー」
「なに? そういう意味じゃない? ボスからの命令が来ている?」
「あー。そうか。君、敵なんだ。あっそう」
「そうだ。君の情報端末借りてくね。前のやつ使えなくなっちゃってさー」
「じゃーねー。ボスの中の人にヨロシク」
スウマキツミは薙高生に接触して情報を集める。
スウマキツミは宝くじの一等を連続して当てている。
スウマキツミは捕まらない。
スウマキツミは逃げ足が早い。
スウマキツミは時間を操作している。
スウマキツミはタイムリピーターである。
スウマキツミとは何なのか?
クローゼットの現有戦力は全て通用しなかった。至近距離から撃ち込んだはずの銃の弾丸すら当たらない。P2持ちに至っては、なぜか攻撃すら仕掛けられない。
スウマキツミとは何なのか?
兵藤カツヒコは部下からの報告を聞き、電子タバコを噛み締める。
タイムリピーターとは何なのか?
文字通り時間を遡行する者なのだとしたら。
俺達は「既に失敗して」いるんじゃあないのか?
兵藤カツヒコは部下に撤退を命じる。戦闘で分が悪いどころではない。メンバーの能力から癖まで、全て見透かされているという事実。
タイムリピーター。それは、深入りするにはあまりにも異常な存在だった。