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第六十三話 事情聴取

 10年前……旧校舎がまだ現役だった頃。薙高がP2の存在を許容し始めて数年後のこと。

 あるとき、モノボードの噂が流れ始めた。


 曰く「モノボードは完全な存在である」

 曰く「モノボードに触れた者はモノボードになる」

 曰く「モノボードは増える」

 曰く「モノボードは増えて溢れる」

 曰く「モノボードは遮断できない」

 曰く「モノボードは可能性の麦束」

 曰く「モノボードは絶望の怨嗟」

 曰く「モノボードはP2を超えたP2である」

 曰く「モノボードは人の新たな可能性である」

 

 噂が急に広まりだし、すぐ下火になってから、三か月ほど。

 まるで打ち合わせでもしたかのように、深夜の校庭にぽつぽつと人が集まり始め、そいつらが屋上を目指して行進を始めた。奇妙な姿だったよ。制服のやつもいたし、運動着ジャージのやつもいたし、寝巻姿パジャマのままのやつもいた。

 

 当時から、屋上には鍵が掛かっていた。それは警察も調べていて、間違いない。

 

 ところが、そいつらはそんなことを意に介さず、屋上に辿り着いた。壁抜けでもしたのか、外壁でも伝ったのか。そのへんはよくわからない。

 とにかくかなりの人数が集まって、何かの臨界に達したんだろうな。光って、輝いて、爆発して終わりだ。モノボードは完成し、羽化して新しい神が生まれた。抜け殻(にんげん)は全員発狂し、屋上から飛び降りて死んだ。

 これにはさすがの生徒会もお手上げ。第三者機関である警察が介入して調べても、原因不明。

 まあ、ここまでは知ってるよな。

 

 奇妙なのはそれからだ。学園は気付かないふりをしているが、あるいは本当に気付いてないのかもしれんが、その直後から「P2が増えた」。

 元々の数を考えれば、爆発的増殖といっても過言じゃない。カンブリア紀の大進化みたいに、突如として学園内にP2(超常現象)とP2持ち(超能力者)が増えたんだ。

 まだ学園SNSも無い時代、ケータイを持っている人間が手動で連絡を取り合うしかない時代だ。このP2の増殖を管理できる人材が薙高に居なかったんで、薙高はパニックの一歩手前にまで陥った。事態収拾のためにイレイサーも投入されたらしいが、焼け石に水だった。

 

 そこで我らが薙刀学園会長の出番さ。会長はいっそ開き直って、薙高でのP2使用を全面的に認可。自衛のための銃器の持ち込みも許可し、軍事同好会を軍事部に昇格。P2問題の調査のために情報部、新聞部を強化し、P2問題の調停のために平安部を設立。

 つまり現在の薙高四天王は――イレイサーという例外はあったものの――全て会長によってお膳立てされたものなんだよ。

 

「おじいちゃんがそんなことをしてたなんて知らなかった……」


 あ? あんた会長の孫か。そーかそーか。なら知っておくべきだな。

 噂に聞くところによれば、いま第二次モノボード事件が進行中なんだろう?

 また人がいっぱい死んで、P2が今より増えるなんてことになったら、きっと薙高というシステムは成り立たなくなるぜ。

 ザ・トリガー。あんたならわかるだろう? もしP2(超常現象)が一定量を超えて増えすぎたら、P2とP2が引き寄せあって、ビリヤードの玉突きのように事件が連鎖して、薙高は収拾のつかない混沌へと突入することになる。

 だから――

 

 モノボードを遮断しろ。ザ・トリガー。

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