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第五十話 ザ・トリガーの昼休み

 そして、とうとう昼休みになった。教室にムツキたちと、藤沢カオリを待機させ、僕は校庭に出た。ケータイが鳴り、ピクチャレスから連絡が入る。


「黒木。俺だ。チーム『ピクチャレス』の召集を願う。お前の言った通り、黒猫が現れた……そうだ。モーツァルトではない奴だ。邪とも連絡が取れた。傷つけずに捕獲しろと言ってきている」


 僕はあのときと同じ配置につき、ピクチャレスを視界に入れた。あとはチーム「ピクチャレス」の捕獲作戦を見守るだけだ。だが、何かがおかしい。前回は、邪とは連絡が取れなかったはずだ。今回に限って、連絡がついている。おかしい。だが、違和感を行動に移すことができない。

 

 僕のサイコキネシスは、空間を対象にして、無差別に発動できる。できるが、それはスピリット・オブ・ソードマンの一撃で斬り捨てられてしまうのは、前回確認済みだった。僕の存在は、二人のタイムリピーターにとって、決して計算外ではない。予想通りの妨害が来ると備えているだろう。

 僕は、その役を演じるべきなのだろう。だが。僕の直観は、僕の銃ベレッタM92は、ピクチャレスを援護しろと囁いていた。

 

 黒猫が、車の下に入り込むのが見えた。

 

「対象の位置を特定しました。これより捕獲を開始します」「ああ、頼む」

「状況開始」

 

 その言葉と共に、車の後方からチーム「ピクチャレス」の人員が躍り出る。そこで。僕は辺りを見渡し、タイムリピーターの出現を知った。

 黒猫は跳躍する。校舎に沿って設置されていた排水パイプをカカッと駆け昇り、二階のベランダへと到達すると、窓の中へと入ってく。

 

 僕は物陰から立ち上がり、タイムリピーターに向け、銃を撃った。

 

 斬、と。僕の銃弾をタイムリピーターの一人、大男のほうが斬り捨てた。

 

「やはりおまえも、タイムリピートしていたか」

 

 それで僕は、あのとき、ティガが無駄に車を斬ったわけではなかったのだと理解した。このタイミングこそが「僕の銃弾を斬る」タイミングだったのだ。奴はタイミングを計っていたのだった。

 

「そういうことだ。お前らの計画通りにはいかせない」


 僕はグロック19を構えたピクチャレスに並び、同じく銃を構えた。猫殺しのエイラを狙い、撃つ。

 

「はっ! 遅い。遅い。遅い」

 

 エイラのスピリット・オブ・ガンマンが、僕らの撃った弾丸を、次々に撃ち落としていく。もはや早撃ちとかそういうレベルではない。その反応速度は、護衛艦に搭載されるコンピュータ制御の近接防空兵器システム(CIWS)、ファランクスに近い。

 見えない壁に阻まれたかのように、僕らの銃撃は弾かれていた。無力感を味わっていた、その時。ガアンと、空気が、吠えた。

 

「今のは……今のは速かったぞ……」エイラがふらつく。


 長い髪を揺らして、銃口を遠方に向ける。ガアン、ガアン。立て続けに音が響く。エイラが狙撃銃の弾丸を迎撃しているのだ。

 U.S Army M24 Sniper Weapon System――レミントン社が開発した、一般部隊から特殊部隊まで幅広く採用されているスナイパーライフルである。軍事部では、薙高のスナイパーライフルはこの型式が多いと、そう教わっていた。


「クソッ! しかたがねえ……モード『イージス』!!」エイラは叫ぶ。


 その瞬間、初速 800m/s にもなる超高速のライフル弾を、エイラは無動作で全て撃ち落とし始めた。完全に自動的な、迎撃体制。

 

「こいつは疲れるからやりたくなかったんだが……モード『神の盾(イージス)』だ。もう何人たりとも私の弾幕は潜り抜けられない」エイラは笑う。


 藤王アキラの準備した狙撃銃は、恐るべきことに、もはや用を成していない。


「それで、この今もまだ続いている狙撃はもう済んだ話として、だ。あんたらは私たちを……『倒す』つもりなのか? そんな貧相な火力で? タイムリピーター二人を?」


「そうだ」と僕は進み出た。「誓って黒猫は殺させない」


 エイラは二階を眺めるやる。もちろん黒猫は落ちてこない。エイラはまっすぐこちらを見返し、ため息を吐いた。


「へえ……あんたら……そんなに死にたいんだ」


 鴉殺しのティガが、スピリット・オブ・ソードマンが、剣を構えた。

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