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第四十六話 猫とタイムリピーター

 しかし黒猫のクロを最初に見つけたのは、幸運なことに、猫殺しのエイラではなかった。それは、昼休み中のピクチャレスであった。彼は何かを見つけることにかけては天才的なのである。

 

「猫……? あのサイズ……化け猫のモーツァルトではない……俺の記憶が正しければ、今の薙高にはよこしまの張った猫払いの結界があるはずだが……?」

 

 すぐにピクチャレスはケータイを取り出し、邪ツカサへと連絡する。いまやピクチャレスは平安部実働部隊、みやびに所属していたから、緊急の連絡先を知っていたのである。しかし、圏外。繋がらない。

 

「肝心な時に限って圏外か。クソッ」

 

 ピクチャレスはザ・トリガー、黒木シュンに連絡を入れる。

 

「黒木。俺だ。至急、軍事部のチーム『ピクチャレス』の召集を願う。黒猫が一匹現れた……そうだ。モーツァルトではない奴だ。何かがおかしい。ああ……タイムリピーター絡みかもしれん……念のため確保しておいたほうがいい」

 

 クロはそんなふうに自分がVIP待遇されていることなど知らずに、足早に通りを歩いていく。人ごみをすり抜け、裏道に入り、屋根に昇り……クロには特に目的地は無い。

 そしてクロは、校舎脇に停めてある車の下が涼しそうだと思い至るや、猫のように――実際猫なのだが――するりと潜ると、ひんやりした地面に顔をうずめた。

 

 ピクチャレスに連絡が入る。

 

「対象の位置を特定しました。これより捕獲を開始します」「ああ、頼む」

 

 ピクチャレスは、先週出来たばかりの自分のチームの組織度の高さに、むしろ驚いていた。チームの全員が携帯する小型のレシーバーは、司令塔となるケータイからの迅速な指揮、命令を可能にしていた。

 

「状況開始」


 その言葉と共に、車の後方からチームの人員が躍り出る。驚いた猫は、人の居ないほう、つまり車の前方の広いスペースに逃げるだろうという想定であった。そこを投げ網で捕まえる、という作戦である。

 しかし、クロは普通の猫ではなかった。

 クロは跳躍すると、校舎に沿って設置されていた排水パイプをカカッと駆け昇り、二階のベランダへと到達すると、窓の中へと入っていった。むろん、いきなり猫が飛び込んできた二階の教室では大騒ぎである。

 

「やられました。想定外の動きでした」作戦失敗の報告が入る。

「愚痴はいい。いまからでも、なんとか確保できないか」

「とりあえず二階に人員を移動させます」ピクチャレスの言葉に、チームが答える。


そのとき。斬、と。何かを力任せにぶった切るような音が、響いた。

ピクチャレスが音のしたほうを見やると、さっきまで猫が潜んでいた車が、真っ二つに切断されていた。その傍には、大男と女が居る。女のほうには、見覚えがあった。金髪のタイムリピーター。猫殺しのエイラ。

 

「あの猫は渡さん」車を斬ったであろう男、ティガが低い声で宣言する。

 

 ピクチャレスは即座にグロック19を抜き放つも、エイラの放ったM9の銃弾がその銃を弾き飛ばす。ピクチャレスは武装を解除された。

 

「あの猫は私が『使う』。手出しするなら、死ね」


 エイラの銃口はピクチャレスに定められた。

 

 そんな絶体絶命のタイミングで、ザ・トリガーは到着するべくしてその場に到着した。なぜなのか。彼がザ・トリガーだから、としか言いようがない。能力を使うなら、今、この瞬間しかない。

 対象を選ばぬ無差別サイコキネシス――空間が、歪み、荒れ狂った。

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