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第二話 僕はヒーローではない

 JOJOという漫画を知っているだろうか。スタンド能力という特殊能力を持った連中が、出会っては戦い出会っては戦うという、まあそんな話だ。

 彼らは一生戦い続けるのだろうか。それとも、あるとき運命の糸はぷつりと切れて、平穏な暮らしが手に入るのだろうか。平穏な暮らし。僕が求めても手に入らない生活。

 ところで、僕は引き金引きだ。

 入学式は何も起こらずに終わった。尤も、先生たちと風紀委員が目を光らせている場所では、何も起こせないというほうが正確だが。

 僕たちは先生に案内され、教室へと入った。あいうえお順に席が割り当てられる。今日から、ここが自分の教室、自分の席になるのだ。

「ロッカーは廊下にあるわ。でも……あらあら、誰かに壊されてるわねえ」

 先生はまるで他人事のようにロッカーを見つめる。

 特に、僕のロッカーは完全に破壊されていた。それはきっと、朝の連中からの宣戦布告の合図なのだ。しかし、僕はロッカーを「直さない」ことにした。僕の能力は、見世物ではなかったし、僕はそもそも、ヒーローでは無いからだ。

 

 ザ・トリガー「僕はヒーローではない」

 

「さあ皆さん。各自の情報端末を見てくださいね。どの部活動に入るかは、一週間以内に決める必要があります。必ずどこかの部には所属しなくてはいけません。また、薙高では『兼部』が推奨されています。入りたい部活動があれば、その全部にチェックしてください。気に入らなければ、退部は自由です」

 薙刀高校では、学園SNSソーシャルネットワーキングサービスによって、生徒は管理されている。

 メールボックスを覗くと、さっそく、何通かのメールが届いていた。

 

 ――今朝、藤沢カオリを助けたのは、あなた?(yes/no)

 

 藤沢というのか。あの女は。僕は迷うことなく、noと答えた。銃を持った三人の男を骨折させたのは、僕ではない。僕としては、そういうことにしておきたい。入学初日にヒーロー扱いされるのはまっぴらだ。

 

 ――あなたはどんな方法で三人を同時に相手にしたの?

 

 出会ってもいないし、相手にもしていない。と僕は答えた。

 

 ――ザ・トリガー。あんたは誰を敵に回したか知っているのか?

 

 知らないし、興味も無い。そう回答して、気付いた。相手は既に二つ名のことを知っている。

 こいつは……誰だ?

 

 ――なら忠告しておく。できるだけ早く、平安部部長のよこしまに会え。

 

 今日は入学式があったこともあり、午前中は学校の規則と学園SNSの使い方を教えるホームルーム、午後からは部活動見学という予定だった。

 僕は学園SNSで、平安部という部活動の公式コミュニティの概略に目を通した。

「平安部は、特になにもせず、お菓子などを食べる部活です」

 僕は迷うことなく平安部にチェックを入れた。特になにもしない部活。これこそ僕にふさわしい部活動だ。邪という部長に会って、僕の話を聞いてもらおう。そうすれば、僕は何事にも巻き込まれずに、植物のような平穏を得られるかもしれない。


 ……しかし、僕のそんな甘い考えは、あっけなく打ち壊されることとなる。


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