9、記憶
「んん~・・・」
その夜・・・
オレはいつも通り神社の木の上で寝転がった。
けれど、いつもはすぐに眠れたのになかなか寝付けない。
ヒトの姿のまま地面におりた。
フォボとディモがそんなオレを心配してか付いてきた。
「大丈夫だよ。 ちょっと散歩してくるだけだ。」
月が一番きれいな時間だ。
少し・・昔の事を思い出していた。
・・・・たしか、巣立ちしてすぐの頃だ・・・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――――
久しぶりの里帰り…
人間が神社の境内へやって来た。
その時からなんとなく嫌な予感がしていた。
「おい、みろよ!カラス捕まえたー!」
「げーっヤメロよ気持ち悪りぃ。」
「ぁ、コレで改造銃の練習しようぜ?」
「おっいいじゃん。やろうやろう。」
黒い人間は、なにか知らないが黒い棒を振り回したり木を蹴ったりしながら五月蠅く騒いでいた。
よく見ると、捕まっている烏はオレの兄弟達だった。
片足をロープでつながれて、その片方は神木にくくられた。
ガガガガガガガッ! バンバン!!
聞きなれない不気味な音・・・
必死で逃げる兄貴、ぶら下がる弟や妹・・・
敵わない。 わかっていてオレは人間達の前へ突っ込んだ。
「ぅわあ!?」
ガツン!
顔面に体当たりしたはずだった。
目をえぐってやろうと思ったけれど、見えない何かにはじかれて、地面に転がった。
「こ・・・こんのやろぉ!!」
ドスッ……!
何が起こっているのかわからない。
自分の体が痛いのか熱いのか・・・そんなこともわからない。
目が片方見えないことに気が付いた。
顔になにか突き刺さっているらしい。動く事さえ出来ない。
どのくらい経ったのか・・・
まだ生きているのか、もう死んでいるのかも、いまだによくわからない。
そんなところへまた人間が現れた。
だが、そいつは皆をオレの近くへ置いた。
足からロープを外している。
そして、皆を布で一羽ずつくるんで地面に埋めた。
オレは赤い布だった。
「この間は犬と猫、昨日はウサギ、今度はカラスか・・酷いものね・・・・・・」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
ここまでが、普通の烏だった頃のオレの最期の記憶。
こんなにはっきり思い出したのは久しぶりだ・・・
そして、気が付いた。
「そうか・・・あのハンカチ、あさなのなんだよ。オレのじゃねーんだ。」
オレたちを、埋めてくれたのが あさな だったんだ。