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烏の羽根  作者: Taka多可
7/18

7、命懸

「鶉野さーん!」

「あさなちゃんー?」



夕暮れ時・・・・神社の境内

看護士達が必死であさなを探しているにもかかわらず、あさなは姿を見せなかった。




「どうだった?」

「ダメ・・・絶対神社に居ると思ったのに・・・・・そっち側は?」

「もぬけの殻。」

「う~ん・・・あと、あの子の行きそうな場所は・・・?」


しぶしぶと出て行く看護士。





「…はー、はぁっ はっはぁっ  っぐ…かは……」


誰も居なくなった境内に   小さな荒い息声が聞こえる…




あさなは社の裏側、崖の下に落ちてしまっていた。


誰かが来たことに気がついてあわてて社の裏へ隠れたまではいいが、地面が崩れて……

気がつかれなかったことが、裏目に出た。




「クロ……く…」


『呼んだか?』

         ガササ・・  スタッ!

「!?」




オレは大げさに木の上から飛び降りた。

それがあさなに対してかえって好都合だったようだ。

「……?」


涙目で見上げるあさなを抱きおこす。




「無理スンな。ほら、眼 閉じて…ゆっくり呼吸して……」


あさなの肩を支えて、オレの身体によしかからせた。

鼓動がやけに速い。

オレのもあさなのも…



あさなはぐったいして動かない。

オレは音を立てないよう慎重に翼を伸ばし、数枚羽根を引き抜いた。

あさなの首の後ろに押し当てると、すぐに呼吸は平常に戻った。


「ん・・・?」

「よし、もう大丈夫だな。」


手首を返して羽根を隠して あさなを抱きかかえた。


「きゃっ?」

「病院、帰るよ。」

「やっ…… ヤダ!!帰んない!クロウ君も嫌い! 離して…っ」


「嫌いでいい。」

「…ぇ?」






「好きになっちゃいけないんだ…だから、それでいい。嫌われたほうがやりやすいから… けど、傷つけたことは謝らせてくれ。  ゴメン……」

「………」



あさなは黙って、何も言わなくなった。


オレは強引にあさなを崖の上に運んで、地面に降ろした。




「ちゃんと、病院に帰るまで、ついてくからな。病院に居てもらわないと困る。 こんなところで予定外な死に方されたら、魂の回収が出来ない。」






ゆっくりと歩き出した。

オレの方に向かって。




「え…?」


「……ごめん、嫌いなんていって…… 私のこと、探してくれてたのに…」

「………」


抱きしめた。

止まれない。

抑えきれない。


オレは      悪魔

あさなは     人間

どうしようもないキモチだけが左眼と頬を濡らした。








「天使って 死んだ人間や動物の魂を天界へ運んで、裁きを受けさせるのでしょう?じゃぁ、悪魔は 魂をどうするの?」


帰り道、あさながオレの横を歩きながら聞いてきた。



「ん…昔は神が人間に与えた『力』を回収して、仲間を増やすことが目的だったらしい。動植物の魂はほとんどが天界へ昇ってまた新しい動植物になるけど、ごくたまにオレみたいに自ら魔界へ堕ちていくのもいる。  最近じゃそういう風に自分の意思で魔界へくるのが増えちゃって、『住魔処理』が大変らしくてね。その対策として『再製魂』が行われてる。  回収した魂から『命の欠片』をちょっと取り出して、それを『喰う』ことで、新しい『命』になる。 勿論、悪魔としての記憶は完全に消去される。 どれだけ『命の欠片』が必要なのかとか、どの動植物になるのかもわからない。人間になれないことは、わかってるみたいだけど…  人間ってのは自然界から隔離されているし、神の息を鼻に吹き込まれているせいもあって かなり特殊な生き物になってるんだ。  だから天使になれる人間なんて幼い子どもとか、赤ん坊だ。そのくらい限られているし、逆に悪魔になった人間ってのも聞いたことないな。  普通、人間は人間のままだ。新しい母親の胎内に転送されるんだよ。」


「悪魔や天使は生命体じゃないの?」

「違う。命を授かったのは人間と動植物だけ。その中でも人間は神が特に気にかけている。 人間は自然界で生きていくことが出来ずにそれだけで独立した生活環境を作っているだろ? ≪自然と共存する…≫なんとかっていってるのもあるけど、ムダムダ。人間がそう思いこんでるだけ。   これらは全て神と聖魔神様がお定めになられたことだ。それと同じで神と聖魔神様がわれわれ悪魔と天使も隔離した存在とされたんだ。   天使は神が聖力を分け与えて、白い翼を持つことの許されたものを指す。 さっきも言ったが 基本的に 幼くして死んだ人間や動植物だな。   逆に悪魔は死んだ動植物の魂に残る強い負の意思を聖魔神様が増幅し、魔力を与えられ、生前の姿とは違った姿を持つものを指す。   共通するのはどっちも時間の経過に肉体が影響されない。つまり、『成長や老化』が無いことだ。 自分の意志で自在に変えられるんだ。人間や動植物には そんなこと出来ないだろ? その違いが『いのち』の有る無しの差だ。」


「…じゃぁ 悪魔は命になれるのに、天使はなれないの?」

「無理だな。命の最低条件『負』のエネルギー、それが天使はゼロ。どんな生物も、正と負を持っているからこそ命。100%聖気の塊である天使は二度と生命にはなれない。 まれに、最大級上位天使『ルシフェール』もとい『サタン』様のように天使から悪魔へと堕落した場合があるけれど、彼らはいくら頑張っても、魔界で上級になれても、命にはなれない。」


______



一通り、質問に答えて、もうすぐ病院に着く手前頃まで来た。


「…そうなんだ………」

「でも、なんで急に? 全然オレの言ったこと信用してなかったのに…」

「んー? 信用してみよっかなって 思った、それだけ。じゃぁね!」

「あっ……」


「明日も来てねー!!」



あさなは大きく手を振って走っていった。 オレも振り返した。



「…これでよかった、のかな……」



あさなの背中が見えなくなったころ、オレはあさなを抱きしめた事を


深く後悔していた。


気持ちを抑えきれなくなっている。

やっぱり、悪魔は人間に対して傷を負わせることしか出来ない存在なんだ……




腹の奥が痛い。






…違う








胸が  痛い。

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