6、葛藤
「………、…… ……」
なんか、話し声っていうより悲鳴に近い。
いやな気配もする。
「…っへ!」
いらいらしてた俺は、何の躊躇もなくそっちへ向かって歩いていく。
「ちが、違う!家族には手出ししないと…!」
「契約上、そんなものは書かれてないねぇええええ?」
「ほらよく見なよ、奥さんとお嬢さんが怖い目にあっちゃうよ?」
「やめろおおおおおお!」
「このボタン、押したら終わりだねぇええ?」
「ほい。」
がちゃん!
「「「は?!」」」
「ひぃ!?」
「うるせーぞ、あんたらよ。表通りあるいてて聞こえてたぞ。ふつーの人間さんにもばれちゃうだろーが。」
「何しさらすんじゃ小僧!?」
「殺されたいんか!」
刃物を出すヤクザ。
その刃先にぷすっと指を当てる。
指先から血がにじむ。
「悪いけど、そーゆーの効かないから。」
ぎり。
ぐしゃ。
めきめき…
「…ぎゃぁぁぁっぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!????」
刃物が金属の板状に延びていき、木製の柄が木の幹が成長していくように膨らんでいく。
ヤクザの手を巻き込んで。
「何だこのガキ!!?」
「何をしやがった!」
「ちょっとだけ元に戻してるだけだ。」
「はっぁぁぁ?!」
「…よく考えたら、あんたたちってヤクザなんだから…殺したところで大事にゃならねぇよな。」
「や、やめろ!こいつがどうなってもいいのか!?」
「ひぃぃ!!」
家族を盾に、脅されていた男。
意味のない人質。
「べつに。」
「おま、お前悪魔かよ!!」
人でなし! の意味なのだろうが。
「おう、悪魔だ。 ノインナチュラル(自然法則否定型悪魔属)所属のルーキーだ。」
「…は?」
「悪いけど、今スッゴクむかついてるんだ。八つ当たり、かんべんな。」
にこー。 っと笑って見せた。
ずぶぅ!
ばぎゅ!
びぢゅぅう!
「ひ……ひぃ…」
「大丈夫かおじさん。」
血みどろの手で男を引っ張って立たせる。
「こ、ころ…」
「殺さねーよ。 俺は、相手が気に食わない場合だけだ。おじさんには何の関心もない。助けたつもりもない。誰かに口外した場合は気に食わなくなるかもしれないな。」
「…ひぃぃぃぃ………!」
必死に逃げてったな。
まぁ、あれが普通だ。
あいつ、やっぱり変だ。
いらいらする。
公園で手を洗いながら、いらいらする腹の中を押さえようとしてた。
とにかくぎりぎりするこの痛いものをどうにかしたくて、とりあえず…
寝床 (まぁつまりいつもの神社) へ戻ることにした。