5、悪魔
あさなにオレが悪魔であることを告げたが
彼女の反応は少し意外だった。
少しは驚いたようだったが それ以上に楽しんでいるように見えるのは
気のせいなのか…?
「・・・・それで、子供に石を投げつけられて左眼にこんな大きな傷になって残ってるんだ。 今もあんまりはっきり見えないんだ。あっさり死んじまったからそこから先は覚えてないな。」
「酷いね…その恨みで悪魔になったの?」
「まぁ、そういうことだよな。 …てかさ、少しは怖がれよ!」
「だって、すごいもん! 悪魔と友達なんて…!!」
「はぁ・・・ (悪魔の威厳って こんなモンなのか?)」
あさなが話してくれた事情はこういうことだった・・・・・・・
あさなの小さいころに死んだ本当の父親の新しい妻には
旦那が死ぬ寸前から付き合いだした男がいるらしい。
無茶苦茶な理由をつけてあさなを学校へ行けなくしたのはこの男だ。
肺が悪いのは事実だが、入院する必要はなかった。
通院だけで十分だったのに 反論する隙もなく 病院へ押し込まれた。
そして、義理の母は再婚しようとしているが、男があさなを極度に嫌っていて
『死んだら結婚する』と、約束している・・・・
「じょ、冗談じゃねぇぞ!!! なんだって子供の死を願う親が居るんだよっ!?
人間くらいじゃないか、同族を喰うわけでもなく殺す生き物は…信じられねぇ……」
「クロウ君、義母さんのこと悪く言わないで…私のせいなんだ…
私がまだ生きてるから……仕方ないの……」
「・・・・ふん、じゃぁ、お前も早く死んでしまいたいわけだ。」
「! ちがっ ・・そんなこと言ってない!!」
「天使の神は『他人の為に命を省みない』行為が偉いみたいに言ってるけど
そのとおりにしたいわけだ。 やっぱ、お前みたいなのの魂は天使がほしがるわけだ。 もう、いい。じゃぁな!!」
「・・・・・・!」
ばたんっ!!
オレは、言いたいことを全部言い切ってしまった……
言ってしまってから、外へ出て頭が冷えてから
ようやくあいつをズタズタに傷つけたことに気がついた。
八つ当たりなんかして……!
引き返そうとしたが、足が動かない。
そして、 病院の玄関とは逆方向に走り出していた……
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「ど・・・どうしてクロウ君がそんなこと、言うのよ!!
私の気持ちなんか わかんないくせに・・・・!」
必死で言い返した。
けれど、半分も言い終わらないうちにクロウ君は部屋から出て行ってしまった。
ドアの閉め方も酷かった。
「・・・何よ・・・・『自分は悪魔だ』ーなんて、格好つけちゃって…
悪魔なんか居るわけないじゃない… あのときだって、きっと廊下で覗いていたんだ…
………クロウ君のバカっ… 意地悪!」
洗面台で乱暴に顔を洗って着替え
キャップ帽を被って病院の非常階段から外へ抜け出した。
運良く看護士さんたちには見つからなかった。
「もう…嫌…………」
私は足が動くままに歩き出した……