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烏の羽根  作者: Taka多可
2/18

2、黒翼

「ケンゴ!しっかりしろ!!」

「けんちゃん、ママよ、わかる!?」

「ん、う…」



かもめ病院

一番端の病室で6歳くらいの男の子がベッドの上でうなされている。

それを家族みんなで囲っているようだ。


彼は心臓の病気で、血液を上手く全身に行き渡らせることが出来ず

ドナーが見つからない中、人工心臓で命をつないできたが

とうとう限界になったらしい。


小さな身体に、負担が大きかったのだ…



看護士も最善をつくさんと必死で呼びかける。


そんな時


 ココンッ


「あ・・クロウ・・く・・・・」

{よっ! 遊びに来たぜ。}


いつの間にか窓が開いていて その窓辺に14・5歳の少年が立っていた。

  黒い髪   赤い服


そして、窓が開いているのに風は全く吹いていなかった。



「ありがとう…けど、僕、今 動けないよ……」

{心配要らないぜ。 ほら手、伸ばしてみな。こっちだ…}


男の子はガタガタと震える手をゆっくりと伸ばしていく



「けんちゃん! どうしたの?!」

「…ママ、あそこにクロウ君が いるの……呼ん、で…」

「何言ってるの!? 誰も居な・・・」


  ビュゴォオオッ!!!



母親が振り向いたと同時に今まで止まっていた風が、一気に吹き込んできた。


そして、一羽の真っ黒な(からす)が紺色の闇へ消えていくのが見えた…



「おぃ! 母さん!! ケンゴが……!!」

「! けんちゃん!けんちゃん!!」

「はやく!はやく!!!!」









赤い服の少年は病院の屋上に居た。

しかし、屋上へ上がる階段は夜の間は封鎖されている。



少年の背には黒い、ツヤのある翼が生えている。

左目に大きな傷がある。

そして、右手には 小さく、しかし強い光を放つ石を握っている。



「今回は早かったな。」

振り向くと、白い服(どこぞの魔法使いのようなローブ?)の男が立っている。

背には少年と同じように羽が生えているが、羽毛ではなく昆虫のそれように透き通っている。

盲目なのか 目は閉じられたままだ。

少年の指南役に当たるようだ。


「えぇ、邪魔になる要因が少なかったので…」


少年は光る石を男に投げてよこした。


「…クロウ、お前 その大雑把な性格、どうにかしなさい。」

「ガル=ベルゼバロ先輩! オレに説教は『馬の耳に念仏』ですよっ」

「・・・・減点するかな…?」


うっすらと瞼が開いた。

ゾッとするほど恐ろしい、赤い複眼…


「!!! やっ そのっ い、以後、気をつけまッス!」

「…まぁ良いだろう。 次のターゲットだ。今度のは面倒だぞ、注意しなさい。」

「はいっっ!」


ガル=ベルゼバロ と呼ばれた男は、少年にカルテを渡し、そのまま消えた。


「ふぃ~…怖かった… あの人に睨まれるのだけは勘弁してほしいぜ…」


ベルゼバロ先輩は、かの有名な七人の悪魔王が一人

『ハエの王』ベルゼブフの子孫の系統。

普段物静かな分、ちょっとでも怒らせたら…半殺しにされるだろう。






パラパラとカルテをめくる。

「ふーん、ケンゴと同じ病院か…ま、良いか。あいつ以外には姿見せてないから問題ない と。

 …『さびしがり』『脱走癖がある』…なんだコリャ? うーん、確かに面倒そうだなぁ。」


少年は乱暴にポケットにカルテを突っ込むと翼を広げた。



   「悪魔もラクじゃないゼッ!!」


少年は屋上から飛び降りた。

それとほぼ同時に一羽の烏が神社へ向けて飛んでいった。



少年の名は 粕我かすが クロウ


烏の 漆黒の 翼を持つ







悪魔だ。

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