13、対峙
頭を走り回る激痛に、声もでない。
どうやら、ぶっ飛んできた瓦礫をモロ頭に喰らったようだ。
あさなの結界を張るのはギリギリ間に合った。が…こっちのダメージが大きすぎる。
「くぁ…ッ がっ……」
腕に、瓦礫を退かすだけの力さえ入らない。
下手に動けば崩れて潰れるかもしれない、という状況のせいでもあるが…
今の俺は、瓦礫の中に、力を貯めておいた翼で空洞を造っている状態だ。
こんな形で力を使うつもりはなかったのだが。
「(どうするか……)」
((クロ…ぅく……ん……))
「!!」
あさな……?
そうだ……
俺が意識を失えば結界も消えてしまう。
体中ズキズキするが、このまま黙っている訳にはいかない。
「…ッ くたばってたまるか!おらぁぁああ!!!」
パシィイ……ン!!
ズドンッ ガシャン パン!
《ピィィxiEぃいィッ!!》
《なにぃっ!?》
《ふきゃぁっッ!》
翼に貯めておいた力を一気に全部放出した。
跳ね返ってくる衝撃で瓦礫を後ろへ吹き飛ばす。
壁の大穴から破片がバラバラと落ちていく音を背に受けながら……
「…!げほっ がぇ゛っ…えぼっ……」
びちゃっ ぱたたっ
鮮血が床に落ちていく。
ここまでずたずたにされたのは数年振りだ。
兎に角…殺してやりたくてたまらない。
ムカつく天使共を八つ裂きにしてやりたい。
俺は口の中の血を吐き出しきり、無言のまま、デカイ天使を睨んだ。
《驚いたな、まさか動けるとは……それに、今の閃光で室内にいた準天使達が幾らか消滅してしまった。 もしかして、それなりの部位の悪魔か?》
そういった天使は片眉だけをほんの少し動かした。
「……ほんの数年前、枯葉の期に生まれた新米悪魔だ。」
《…成る程、道理で気性が激しいと思った。消えかけていた邪気を一気に膨れ上がらせるなんて並の悪魔には出来ない。若いからこそ、という訳だ。そして、取り返しの付かない過ちを犯すのも若さ故…と。》
「ちっ…バレバレか。」
どう考えても今、ここに立っていること自体がおかしい。
とんでもない量の失血。 …つまり、力を暴発させた反動だ。
《立ったところで悪いのだが、消えてもらわねばならん。消滅させよ!!》
《《ウィリりリィイいEぃイeeeいイぃッ!!!》》
準天使、下級天使が不気味な奇声を上げ、壁の穴から突撃して来る。
「くっ…がぁああああ!!」
ずどぉお…ん!
《《グぎャやあアャ………!?》》
空間に亀裂を造りだし、その中に天使達を閉じ込めていく。
その中は異次元へと繋がっていて、戻ってくることはほとんど不可能。
手負いの俺を見て油断したのだろう。天使はあっさり飲み込まれていく。
怯んで踏み止まった幾らかの戦天使だけを残し、巨大な亀裂は消えた。
「ゼーッはーッ、はぁ…っ」
《まだそんな大技が使えるのか。》
「けっ、これで打ち止めにきま……っ?!」
ふと見た先には あさながベットにもたれ掛かってぐったりしている姿があった。
「ぁ…あさな…!?」
《気安く呼び掛けるな、愚図が。》
「!!」
どかぁあんっ!!!
デカイ図体からは予想も出来ない俊敏。
一瞬後に特大の回し蹴りを喰らっていた。
「うがっ…、ごほ…!」
《悪魔ごときに某自らが手を降すことになろうとはな…》
俺は口を拭い、立ち上がって…羽根を毟った。
「心配いらねー、テメェが細切れれば済むことだッ!!」
翼、全部毟ってでも…コイツだけはぶっとばす!
「だぁぁりゃぁぁぁあああああ!!」
《ふん…。》
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黒く光る羽根と銀色の聖気の塊は、何度もぶつかり、弾ける。
そして時間は無情に過ぎ去っていく。