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シャッフルワールド!!  作者: 夙多史
第二巻
53/314

間章(1)

 スライムのマルファを異界監査局の機関に引き渡した迫間漣と四条瑠美奈は、自分たちが住んでいる学生寮を目指して夜道を歩いていた。

 異世界人のみが入居する寮は学園の敷地内にあるが、彼らは異世界人ではない。そのため学園の麓にある一般の寮に部屋を割り当てられている。

 全寮制ではない伊海学園で寮に入っていることからわかる通り、彼らの出身地はここから遠く離れている。異能の力に目覚めていなければ、二人共今ごろは故郷で普通の高校生活を謳歌していたことだろう。

「なあ、瑠美奈」

 登りなら冬でも汗を掻きそうな坂道を下りながら、漣は隣を歩く頭一個半ほど背の低い少女に声をかけた。

「なに?」

 素っ気なく瑠美奈が答える。腰まで伸ばした綺麗な黒髪が足を動かすたびに左右に揺れている。

「なんか最近、俺たちに関係ない仕事・・・・・・ばっかりさせられてねえか?」

「異界監査官なんてそんなもんでしょ? 不幸にも誘波に気に入られた白峰零児なんてどんだけ無駄な仕事押しつけられてると思ってんのよ。行動に制限のあるあたしたちにも仕事があるだけマシと考えなさい」

 白峰零児はどこかの異世界で行方不明になっている幼馴染を捜している。いや、捜しているというよりは、その幼馴染が帰ってくるのを待っているという感じだ。『次元の門』の監視に意味があるとはいえ、普通の監査官の倍は引き受けているように思える。加えて新人監査官の引率……漣であれば面倒臭くてやっていられない。

「でもまあ、確かに最近は『混沌の闇(ケイオス・ダーク)』関連の仕事がないわね。あの異界はあたしたち影魔導師にしか対処できないし、開かないってことはいいことよ」

「まあな、開けばそれだけ俺たちみたいな人間が増えるかもしれないもんな。〝影〟に侵蝕されるなんて面倒臭いことになるのは俺たちだけで充分だ。ましてや、先輩たちのように『混沌の闇』に喰われる人間は絶対に出しちゃいけない」

 三年前、当時所属していた剣道部の打ち上げでカラオケに行った帰りのことだ。漣と瑠美奈の先輩である広瀬智治ひろせともはる望月絵理香もちづきえりかが、忽如として開いた異世界に『喰われた』。助かった漣と瑠美奈もその異世界――『混沌の闇』と関わったことで異能者となってしまった。


 ――日影しか歩けない体と引き換えに。


 影魔導師は、体内に侵蝕してきた『混沌の闇』の〝影〟を逆に制御下に置くことでなれる。その力を利用して周囲の影に干渉し、繰り、異能力として具象することができる。

 一方で、強い光を浴びると意識を失ってしまうという弱点もある。特に日光などは長時間浴び続けると命を落としてしまうことだってざらじゃない。

 よって、影魔導師が真価を発揮するのは影の満ちる〝夜〟なのだ。

 死んでいないゾンビ、血を吸わない吸血鬼、まさにそんな感じだろう。異世界人ではないが、人間とも言えるか怪しい存在だ。

 ただ、異界監査局は一定以上の知能や意志力があればスライムだろうと〝人〟として扱ってくれる。漣たちのような体でも差別する者は一人たりともいない。そこは居心地よく思っている。

「まあ、異世界の脅威から人々を守るって点なら、今日の魔王討伐も俺たちの役割とは全くの無関係ってわけじゃないか」

「なにを今更言ってんのよ、漣。あたしたちが影魔導師連盟とは別に異界監査局にも所属しているのは、なにも『混沌の闇』の情報が集まりやすいからって理由だけじゃないでしょ?」

「わかってるよ。だから面倒臭くてもしっかり仕事やってんじゃねえか」

 異能を持ってしまったのだから一つの脅威以外にも力を振るいたい、そう言って異界監査官になった瑠美奈には漣も深く共感しているのだ。


「――ったく、ガキ臭くてめえらの決意を確認し合ってんじゃねえよ」


 坂道を下り終えた時、そんな乱暴な声が漣たちの耳に刺さった。

 二人は警戒心のレベルを跳ね上げて前方を睨む。そこには黒い鍔広の帽子を目深に被った男が夜闇に溶け込むように佇んでいた。漣や瑠美奈と同じ影魔導師のロングコートが長身痩躯の体を包んでいる。

 知っている人物だ。漣と瑠美奈は同時に警戒を緩める。

「久しぶりですね、師匠。どうしてこんなところに?」

 この人が関わると絶対面倒なことになるんだよなぁ、と思いつつ漣が訊いた。

 師匠と呼ばれた帽子の男は、コートのポケットから煙草を取り出してライターで火をつける。燻らせた煙草で一服してから、師匠は億劫そうに口を開いた。


「てめえらに仕事だ。当然、影魔導師連盟の方な」


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