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シャッフルワールド!!  作者: 夙多史
第八巻
296/314

二章 異世界サバイバル生活(7)

 あれだけ派手に暴れたってのに、そこから先は一度も敵と遭遇することなく俺たちは温泉地帯まで辿り着いた。

 敵が現れなかった理由は、一目瞭然。


「あなた方がここまで来たということは、第七位使徒・イアコフと第九位使徒・フィリップは敗北したようですね」


 待ち伏せされていたんだ。湯気立ち昇る天然の温泉を前に、数十人規模の神父とシスターが隊列を組んでやがる。俺たちがここを目指していると完全に見抜かれていたようだな。さっきの筋肉神父とギロチン野郎は集結するための時間稼ぎでもあったわけだ。

『贖罪の魔王』エルヴィーラ・エウラリアの姿はない。代わりに神父やシスターたちを率いているのは、他の誰よりも豪奢な修道服に身を包んだ明るい銀髪の女だった。

 二回ほど見た記憶がある。〈魔王たちの会合(ヴィシャスコア)〉の時と、俺がこの世界に来てすぐ――『贖罪』の魔王軍の拠点に侵入した時だ。

「一つ、質問をします。あなた方は我々の兵を殺生していないようでしたが、彼らも生かしているのでしょうか?」

 冷酷な瞳でじっと俺たちを見詰める銀髪のシスター。話し合いの余地がある、と期待を持ちたくなりそうな質問だな。でも奴の目が言ってるよ。『手加減されているのなら、舐められたものですね』と。

「いや、きっちりトドメを刺したよ」

 答えると、銀髪シスターはすっと目を細くした。

「あなたは嘘をついております」

「なんだと?」

 思い出した。そういえばこの銀髪シスターは嘘が見破れるんだったな。でも、どういうことだ? 俺がトドメを刺したわけじゃないから嘘だと判断されたのか?

「第七位使徒・イアコフ、第九位使徒・フィリップ、両名とも生存しています」

「なっ!? アレで生きてるってのかよ!?」

 なんとなくそんな気もしていたけど、とことんしぶとい奴らだな。くそう、敵だしもう二度と会いたくないのに、ちょっと安心しちまった俺がいる。

「瀕死の重傷ではあるようですが、どの道、あなた方の罪は重いでしょう。――数名、彼らの救助に向かってください」

 銀髪シスターが命じると、隊列の後ろの方から四人ほど駆け出していった。邪魔したくても俺たちに余裕はないし、そんな隙もない。それより気になることがある。

「ちょっと待て、お前は嘘が見抜けるんだろ? 仮にあいつらが生きてたとしても、俺は別に嘘なんてついてなかったぞ!」

 確かに生死の確認はしなかったが、トドメを刺したのは事実だ。

「ああ、あの時を見られていたのですね。私は第二位使徒・マティア。この瞳には虚偽ではなく、真実が映ります。あなたが虚偽を真実だと思い込んでいようと関係ありません」

 銀髪シスター――マティアは前髪で隠れていた自分の右目を指差した。よく見ると、右目だけ白目と黒目が逆になってるよ。こわっ。

「嘘がつけないどころじゃねえな」

 質問され、答えたら、俺の知らない真実まで全部バレちまうってことだ。厄介すぎる。迂闊になにも言えないぞ。滅罪使徒のナンバーツーらしいし、第七位だったイアコフよりも相当強いと思った方がいい。

 と――


「アリエ、トーロ、ジェメリ、薄明の世界に降らせよ! 断罪の光!」


 呪文のような声が聞こえた瞬間、ゾワッとした悪寒が背筋に走った。

「わんこさん、上よ!」

 望月が天を仰ぐ。斜め上空から、無数の光弾が俺たちに向かって雨のように降り注いでいたんだ。

「バトル始めるならよーいドンくらい言えよクソッ!?」

 俺は咄嗟に三人を包めるほどの大盾を生成し、降り注ぐ光弾を防御する。岩山が砕かれ、地面が抉られ、周囲の地形が一気にハチの巣みたいに穴だらけになっていく。

 まさに絨毯爆撃。一撃一撃が、かなり重い。

 あのマティアって奴の術か? いや、詠唱は別人だった。盾を生成する前の一瞬だが、光弾の雨の向こうに翼の生えた人影も見えたしな。

「私がやるわ」

 そう言って望月が影に雷の性質を〈付与(アド)〉させて撃ち放つ。空を駆け昇る黒雷が上空の人影を貫くかと思いきや、避けられたようだ。でもおかげで光弾の雨は止んだぞ。

 大盾を消すと、バサバサという羽音を響かせながら中学生くらいの少女が舞い降りてきた。

「お前は……?」

 後光を背負うような神々しく輝く白い翼。サラサラの長い金髪。マティアと同じくらい豪奢な修道服を纏っていて、右目に眼帯をしている。左目は勝気そうなターコイズブルーの瞳だ。それだけなら天使と見間違えそうだったが、両手に抱えられている無骨なサブマシンガンがなんともアンバランスに映った。光弾はアレで撃ったのか?

翼の少女がニヤリと笑う。


「我が名はマトフェイ! 熾天の聖女にして原罪を赦す者! 我が『極夜の驟雨』を凌ぐとはなかなか楽しませてくれるようね」


 マティアの隣に降り立った少女は偉そうに名乗ると、サブマシンガンを持ったままの手で気障ったらしく前髪をふさぁっと払った。

 後ろの神父やシスターとは比べ物にならない魔力を感じる。てことは、こいつも十二使徒の一人だろうな。さっきの光弾の雨も対応が遅れていたら危なかった。

「クックック、使徒イアコフと使徒フィリップを葬ったようだけれど、その程度で調子に乗らないことね。奴らは十二使徒の中でも最弱。人の子ごときに負けるとは滅罪使徒の面汚しよ!」

 なんか盛大に死亡フラグっぽいこと言ってるけど、あの二人を見下すレベルってことは危険だ。隣のマティアが第二位だったから、まさかこのアホそうな女が第一位――

「嘘をつくことは罪ですよ。最弱なのはあなたでしょう、第十二位使徒・マトフェイ」

「わたし最弱じゃないもん!? あんな筋肉や根暗なんかに負けないもん!?」

 違った。最弱だった。嘘を許さないマティアに秒で否定され、マトフェイと名乗った少女はなんか悔しそうに地団太を踏み始めたよ。

 とはいえ、さっきの攻撃は本物だ。十二使徒の末席だからと言って油断はできないぞ。それに、マティアとマトフェイの二人だけじゃない。十二使徒級の魔力を持つ奴が他にも……三人いる。

「B以上は罪B以上は罪B以上は罪B以上は罪B以上は罪B以上は罪」

 なんか悍ましい呪詛を振り撒いている若いシスター。実力を隠す気がないのか、あそこだけ黒いオーラが滲み出ているな。

「活きのいい若者じゃ。このババアに喰わせろ。骨も残さずしゃぶってやるでな」

 くたびれた修道服を纏った老婆。腰が九十度くらい曲がって後ろで手を組んでいるが、凶悪の形相と言ってる内容は聖職者じゃなくて山姥だろ。

「……」

 最後の一人は遠くて神父かシスターかはわからないが、二つ向こうの岩山からスナイパーライフルのようなもので俺たちを狙っている。

「十二使徒が五人か……」

 イアコフとフィリップを含めても足りない。全員揃っていることを想定していたから最悪の事態ではないにしろ、ピンチには変わりないぞ。残りは『煉獄の魔王』を警戒しているんだろうか?

「望月、ルウを預かっててくれ」

「どうするつもりなのかしら、わんこさん?」

「大丈夫。考えがある」

 俺は背負っていたルウを望月に預けると、数歩前に出てマティアたちを睨みつけた。

「状況は把握していただいたようですね。それでも逃げないのは諦めたからでしょうか? それとも、勝てるとお思いで?」

「……」

「無回答は懸命な判断です。そうでなくては、滅ぼし甲斐がありません!」

 マティアが右手を勢いよく前へと振り翳す。すると、控えていた神父やシスターたちが一斉に突撃を開始した。

「俺は貧乏性だから魔力を節約しながら戦ってきたが、そうも言ってられないからな。ここは魔王らしく、ド派手に暴れてやるよ!」

 鬨の声が上がる中、俺はできるだけ悪そうに見える笑みを貼りつけ――上空に巨人だろうと叩き潰せそうな戦鎚を五つ生成した。


〈魔武具生成〉――ウォー・ハンマー。巨大版。空中生成。遠隔操作。


 ごっそり魔力を使っただけあって、その巨体で空を覆い尽くす戦鎚は圧巻の一言だ。突撃していた神父やシスターは動揺して足を止め、雄叫びが悲鳴に変わる。

「怯んではなりません! 結界発動!」

 マティアの指示で一斉に詠唱が始まる。振り下ろしたウォー・ハンマーは乳白色の半透明な壁に遮られ、振動だけが大地に響いた。

 構わない。叩き続けるだけだ。

「B以上は罪B以上は罪B以上は罪オラァ!!」

 魔力が高まる。十二使徒の呪詛女が……なんだ? 先端が二股の鉤爪状になったトングみたいな武器を構えてやがる。いや待て、アレは『ブレストリッパー』じゃねえか! 直訳すると『乳房切断機』って意味になる拷問具。B以上ってそういうこと?

「ハッ! 望月、そこから離れろ!」

 俺の声に反応にした望月が跳び退る。直後、さっきまで彼女がいた空間と地面が見えない力に嚙み砕かれるように抉られたぞ。クロウディクスみたいな距離の概念を無視する攻撃か?

「ハァ!? 避けてんじゃねえよクソビッチがッ!?」

 なにあいつ怖ぇよ……。

「余所見してていいのかい? ほれ、ババアが行くぞい!」

「――ッ!?」

 しわがれた声に振り向くと、山姥シスターが腰を九十度曲げたままロケットみたいな勢いで俺に突っ込んできていた。両手から光のブレードが伸び、地面や岩を豆腐みたいにスパッと切断してやがる。


〈魔武具生成〉――日本刀。二刀流。


 ガキィイイイイン!!

 擦れ違い様の斬撃を身構えた日本刀で受け流す。おかげで俺は無事だったが、足下が大きく斬り取られて崩れ始めたよ。

 慌てて前に飛ぶ。崩れた山肌から熱々の温泉が噴き出していた。

「あーあ、勿体ない――って言ってる場合じゃない!?」

 俺は咄嗟に日本刀を顔の前でクロスさせる。刹那、遠くから射出された小さな光弾が日本刀の腹に直撃した。危ない、スナイパーがいるの忘れていたよ。

 バキン、と。重ねていた日本刀が両方とも折れた。

「は?」

 反射的に首を捻って日本刀を貫通してきた光弾を避ける。嘘だろ。それなりに魔力を込めたはずだ。なのに破壊された。魔王軍幹部の魔力と破壊力が銃弾サイズに圧縮されていたってことだ。

 山姥と呪詛女はまだどうにかできる。だが、遠くから今の弾丸で狙われたんじゃ一溜りもないぞ。

「あいつは潰しとかないと」

 生成し直した日本刀を構え、魔剣砲を二つ向こうの岩山に向かって放つ。当たらなくてもいい。しばらくの間だけでも狙撃を封じさえすればな。

「クックック、我が右目に刻まれし聖痕(スティグマ)が貴様らに終焉を齎すことだろう」

 空。いつの間にか翼を広げて飛んでいたマトフェイが、眼帯を外した右目に十字の輝きを宿している。

「ヴェルジネ、ビランチャ、カプリコルノ、破壊を持って世界を漂白せよ。天の裁き!」

 また中二病っぽい呪文を唱え、二丁のサブマシンガンの銃口を地上へと向けた。銃口の前に魔法陣が展開し、最初に奇襲された時よりも巨大化した光弾が流星群となって降り注ぐ。

 防ぎ切れない。が、これは逆に好都合だ。

「望月! 悪いが全部避けてくれ!」

「無茶を言うわね、わんこさん。でも、ようやくわかったわ。そういうことね」

 弾がでかくなったおかげで隙間も大きい。俺たちは最小限の動きで降り注ぐ光弾をかわし、無理なものだけ防いだ。

「うっそ、なんで当たんないの……ハッ! クックック、滑稽に踊るがいい。熾天の聖女に捧げる舞としては悪くないわ」

 あいつもなかなかの脅威だが、このアホみたいな威力をバカスカ撃つだけなら問題ない。こっちだって巨大ハンマーでバカスカぶっ叩き続けているから、そろそろ来るはずだ。

「敵は魔王です。油断してはいけません。前衛は我ら十二使徒が引き受けます。あなた方は巻き込まれないように下がって援護に徹してください」

 マティアは指示を出すだけでまだ戦闘には加わっていないが、あいつまで加勢されたらちょっと厳しいかも――


 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!


 よし、来たぞ。この地鳴りのような音は……待って違う。これちゃうねん。俺の腹の音や!

「ぐぉおおおォォ、こんな時に……」

 凄まじい便意の波が押し寄せ、俺は堪らず膝をついてしまった。集中が乱れて巨大ハンマーが消える。ルウの薬効いてないやん! それとも効果が切れたの? もう二度と温泉卵なんて食うもんか!

「クックック、いついかなる時でも熾天の聖女は勝利のために戦った。全ては我が魔王様の行く道に転がる小石。トドメよ」

 上空のマトフェイが二丁の銃口を重ねるようにして構えた。二重の魔法陣から光の柱が蹲る俺目掛けて降ってくる。

「なにをしているの、わんこさん!?」

 ルウを負ぶったまま影の翼で飛んできた望月が間一髪、俺を回収してくれた。背後を見ると大穴が開いてたよ。こんな極限の緊張状態だってのに、俺の腹はゴロゴログキュルルと悲鳴上げていて収まる気配がない。

「……トイレに行きたい」

「言っている場合かしら!?」

 流石の望月の表情からも余裕が消えているよ。俺も今絶賛『便意の魔王』と戦っているから余裕ありません。

「B以上は罪! クソビッチは死ね!」

「なんだい、悪いもんでも食ったのかい!」

 呪詛女と山姥が飛びかかってくる。二人を抱えたままでは望月も対応できないぞ。俺の狙いも発動しなかったし、あれ? これもしかして詰んで――


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 また俺の腹が……と思ったけど違う。今度こそ地鳴りだ。山全体が大きく振動し始めたぞ。

「やっと来たか。あの中二病女がトドメになったみたいだな」

 呪詛女と山姥は足を止め、神父やシスターもなんだなんだと困惑しているその時――耳を劈く爆発音が響き渡った。

 山の頂上から黒煙が噴き上がり、真っ赤な柱が天を衝いたんだ。

 噴火。そう、この島は火山だ。俺や敵の攻撃で無理やり叩き起こされて激怒したみたいに、凄まじい勢いで溶岩を噴出しているよ。火山雷まで発生させちゃってるね。

 正直賭けだったが、溶岩の柱は天井の結界までしっかり届いた。大自然の力がどこまで魔王に通じるのかも祈るしかなかったけども――パリィン! 島を包んでいた乳白色の結界は少しの拮抗を見せた後、冗談みたいに砕け散ったんだ。

「今だ望月!」

「ふふっ、準備はできているわ」

 察しがよくて助かる。望月は懐から取り出した銀色のピラミッドをカチリと起動。次の瞬間、俺たち三人の周囲が眩い光に包まれる。

「待ちなさい! 逃亡は罪ですよ!」

「逃がさないわ!」

 マティアとマトフェイが駆け寄ろうとするが、遅い。俺たちを包んだ光は視界が埋まるほど強く輝きを増し、そして一瞬の無重力感の後、弾けるように消え去った。

 そこは、俺たちがいた小島とは別の洞窟の中だった。

「ふう、なんとか逃げられたな」

「一時はどうなることかと思ったわ」

 望月はルウを地面に寝かせ、俺はその場にへたり込む。この洞窟も望月たちが拠点にしていた一つなんだろうね。焚火の跡など、少し生活した様子が窺える。

「ところで望月先輩、お手洗いは?」

「ここで漏らしたら殺すわよ。洞窟を出て遠くでやって……」

 ん? 望月が洞窟の出口を指差して固まったぞ。俺も腹を擦りながらそっちを見て、目を見開く。


「静寂と孤独。我だけの戦い。この試練に打ち勝ち、熾天の聖女は栄光への(きざはし)を駆け登る」


 洞窟内を明るく照らす白い翼を広げた少女――十二使徒のマトフェイがそこにいたんだ。

「なっ、転移に間に合ったってのか!?」

「是。魂の共鳴が我を自由の地へと召喚したようね」

「わんこさん、通訳お願い」

「さも俺が中二言語を履修しているように振ってきた!? えーと、ギリギリ間に合ったから召喚に巻き込まれたってことだろ」

 驚いたおかげで便意の波が少し引っ込んだ。でも波だからな。またすぐに押し寄せてくるぞ。それまでにこいつをどうにかしないと。

「まあいいわ。最弱さんが一人くらいなら私だけでも充分よ」

「最弱言うな!? わたしは強いんだぞ!?」

 なるほど、『最弱』ってワードを出すと素に戻るんだな。望月は弄り甲斐のありそうな相手だとわかるや、女性がやっちゃいけないような超嗜虐的な笑みを浮かべてマトフェイに歩み寄る。

「な、なんだ! やるのか! 我が光で滅してや――」


 ドゴォオオオオオオオオオオオン!!


「……は?」

 爆音が轟いたかと思えば、洞窟の天井が一瞬で吹き飛んだ。どれだけの山だったのか知らないが、開放的になって星一つない暗い空が見えるよ。

 やったのは当然俺たちでも、マトフェイでもない。


「やはり、ここへ来ましたか。貴様らの拠点と思われる場所に我らを配置したエルヴィーラ様の采配は流石と言えましょう」


 ジャラリと鎖の音を響かせ、一人の神父が洞窟の入り口から悠然と歩いてきた。いや、一人じゃない。吹き飛んで崖となった洞窟の天井の両脇に、何人もの神父とシスターが整列してやがる。

 読まれていた? エルヴィーラはあれだけの準備をしていながら、俺たちが逃げることまで考えて策を巡らせていたのかよ。いや、想定するべきだったんだ。他の十二使徒がいなかった時点で。

 先端に十字架を取りつけた鎖を操り、片手で眼鏡のブリッジを押さえる神父には見覚えがある。

「うげっ、使徒パウェル……」

 マトフェイが嫌そうに顔を顰めた。そうだ。確か俺がこの世界に来てすぐ見かけた滅罪使徒だ。やっぱりこいつも十二使徒だったんだな。

「使徒マトフェイ、なぜ貴様が彼らといるのです? 裏切りは罪ですよ」

 冷徹で冷酷で冷血な青黒い目が、俺たちよりも先に仲間であるはずのマトフェイを睨みつけた。


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