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シャッフルワールド!!  作者: 夙多史
第一巻
27/314

三章 異界監査官(5)

 日本異界監査局の本局は、なにを隠そう伊海学園の敷地内に存在する。

 この学園は山一つを開拓して設立したので、内部は広い上に高低差も激しい。麓近くには初等部と中等部が、元々は山の中腹辺りだった丘に高等部と大学が構えている。

 で、異界監査局は大学側にある。最も高い場所に聳えている白い建物がそれだ。造りは他の学舎と同じで、一号館を表わす『1』の文字がその存在を光らせている。

「にしても」

 俺は一号館の建物を見上げる。

「ここに来るのも久し振りだな。何ヶ月振りだっけ?」

「仮にも平和を守る者が職務放棄していたとは、見損なったぞ零児」

「セレス、お前ホントに最小限の説明しか受けてないんだな」

 俺たち異界監査官には監査局への出勤義務はない。『次元の門』の監視や異世界人のトラブル解決が仕事の異界監査官――つまり戦闘員は、出勤したところでやることはあまりないんだ。その代わり、ほぼ全員が生徒・教師・事務員などの学園関係者となっている。あのメガネ――スヴェン・ベルティルは伊海大学院の院生だったはずだ。

「なるほど、学生として通うことが、そのまま出勤したことと同義になるのだな」

 どうやらセレスは納得したらしい。俺に向ける軽蔑の目を解除してくれた。

「なんでもいいけど早く行くわよ。このわたしを呼び出すくらいなんだから、よっぽど面白いことなんでしょうね」

 いやもう、リーゼがいろんな意味で逞しく見える。

 その時、入口の自動ドアが開いた。

「来たようだね、白峰零児」

 眼鏡を煌めかせてそう言ったのは、スヴェン・ベルティルだった。昨日と全く同じデザインの燕尾スーツを着込んでいる。ていうか、こいつがそれ以外の服装をしているところを俺は見たことがない。

「……お前に出迎えられると気分が悪くなる」

「それは新手のギャグと捉えていいかい?」

「その辺はご自由に」

 今の俺はたぶんあからさまに嫌な顔をしていただろう。

 スヴェンは出席を確認するように俺たちの顔を見回す。それに合わせてセレスは軽く会釈をし、リーゼは……なにかを探すように辺りをキョロキョロしていた。

「なにしてんだ、リーゼ?」

「ん? ちょっとね」

 言って、リーゼはスヴェンにズカズカと歩み寄って行く。そこはかとなく鬼気迫るようなものが感じられ、スヴェンはたじろいだ。

「ねえ」

「な、なんだい?」

「昨日のでっかい人形はどこ? わたしもアレに乗ってみたいんだけど」

 子供かお前はっ! ……って子供でしたね。見た目も中身も。

「ああ、『デュラハン』ならここにはないよ」スヴェンは額の汗を拭い、「それにアレは僕の思念で動かしているから、君が乗ったところで楽しくはないと思うよ」

「そう。じゃあいい」

 楽しくないという言葉を聞いてリーゼは興味を失ったようだ。

「こんなところで立ち話をしていても仕方ない。局長のところまで案内しよう」

 俺たちの返事を待たず、スヴェンは踵を返した。


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