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シャッフルワールド!!  作者: 夙多史
第七巻
243/315

一章 魔王たちの会合(4)

「やあ、お兄さん、また会ったね」

 俺の隣に座ったゼクンドゥムが不気味に笑いかけてきた。くっ、他人のフリは無駄か。

「いろいろ言いたいことはあるが、お前、魔王だったのか?」

「そうだよ。あー、直接は言ってなかったね。ボクが『悪夢から生まれた存在』だってことは教えた覚えがあるけど」

 そういえば名乗った時にそんなこと言ってた気もする。てことは、こいつは『悪夢』という概念から生まれた魔王ってことか。どうりで得体の知れない強さだったわけだ。

「レージ、そいつ知り合い?」

「いやリーゼも会ったことはあるだろ。監査局に潜入していた『王国』の執行騎士だよ」

「んー、あんまり覚えてない」

 あの時、リーゼは仮死状態になっていて直接こいつらには関わらなかったな。だから印象が薄いんだろうね。

「ゼクンドゥム、お前はなんでここに――」

「ヒャッホホ! 想定外の役者も揃ったところで会合を始めよう!」

 高々と上がったグロルの声で俺の質問は遮られた。もう少し情報を聞き出したかったが、今はそれどころじゃねえな。

「さてさて、魔王諸君らはどのようなゲームがお望みか? どんどんアイデアを出し合ってほしい!」

 グロルが参加者たちにそう投げかける。会議はブレインストーミングの形式らしい。そんないきなり言われても俺の意見は『ゲームとかいいからお前ら帰れ』しかないんだよな。

「んなもんデスゲーム以外にねえだろ! 最後まで生き残った魔王が『千の剣』の身柄とこの世界の侵略権を貰う!」

 真っ先に発言したのは炎髪女――『煉獄の魔王』フェイラ・イノケンティリスだ。やっぱり物騒なこと言うよなぁ。世界の侵略権って、お前らで勝手に権利決めんなよ。その世界の意思も尊重してください!

「……某は手っ取り早く一対一での決闘を望む。無論、敗北者は勢力ごと全滅でござる」

 侍男――『概斬の魔王』切山魈(きりざんしょう)が腕組みしたまま発言。割とまともそうだと思ったけど、負けた方が全て失うとか却下だ却下!

「戦争ダ。誰ガコノ世界ヲ先ニ滅ボセルカ競ウノダ」

「オレも戦争は賛成だぁ。だが、狙いを間違えちゃいけねぇ。誰が『千の剣』をぶっ殺せるかの競争だろうがよぉ。その過程でこの世界が滅びようと知ったことじゃねぇなぁ」

 サイボーグ野郎とサソリ野郎――『鐵の魔王』MG-666と『蛇蝎の魔王』フィア・ザ・スコルピもなんとも魔王らしいこと言ってやがる。絶対こいつらの意見を通しちゃダメだ。

「罪の数を数えましょう。多い者から滅びましょう」

 シスター――『贖罪の魔王』エルヴィーラ・エウラリア。お前それはゲームじゃないだろ。

「……」

 お前はなんか言えよ影野郎――えーと、『仄暗き燭影の魔王』ンルーリか。よく全員覚えたな俺。

「キヒッ、お兄さんたちが潰し合うのは勝手だけど、ボクとしてはこの世界を今滅ぼされちゃ困るんだ。だからこの世界に害なそうと言うならボクは黙っちゃいないよ」

 不気味な笑みを貼りつけて他の魔王たちを見回すゼクンドゥム。だが、その目は一切笑ってねえな。魔王たちも少し怯んだ様子だぞ。

「おお、敵なのにお前が頼もしく見える……」

「あ、このお兄さんだけを取り合うなら全然いいよ」

「うぉい!?」

 敵の敵は味方だって言うが、やっぱり敵だぞこいつ。

「わたしは燃やせればなんだっていいわ!」

「お嬢様は会議に向いてませんね! 知ってたけどね!」

 リーゼを連れてきた意味あったのか不安になってきたが、まあ、俺一人で敵地に乗り込むよりは精神的に助かってるからよしとする。

「『千の剣』、ツッコミばかりしてないで君の意見も出すといい」

 グロルが俺に発言を促してくる。だが、『帰ってください』と言って通じる相手ならそもそもこんなところに来ちゃいない。なにかしら全員を納得させる比較的安全なゲーム内容を考えないと最悪詰むぞ。トランプでポーカーとかダメかな? ダメか。

 魔王たちを納得させるには――

「……お前らは、どうしてこの世界に集まったんだ?」

 まずは、こいつらの目的をハッキリさせるべきだろう。俺が目的だってことはわかるが、具体的になにをしたいのかはわかっていないからな。

「言わなきゃダメか?」

 と聞き返してきたのは炎髪女のフェイラだった。さっきまでのガツガツした勢いは失せ、じっと俺の目を見詰めてくる。

「ああ、誰が勝っても目的を達成できるゲームにしないといけないだろ?」

 言うと、フェイラは仕方なさそうに炎の髪を掻き毟るような仕草をして――


「〝魔帝〟の嫁になることだ」


 少し顔を紅潮させてそう告げた。

「ほわっつ?」

 フェイラがなにを言ったのか理解できなかった。え? ヨメ?

「うっせえな! ウチは連合を自由にできる権力が欲しいんだよ! 面倒事は〝魔帝(だんな)〟に任せて好き勝手できる権力がな!」

「お、おう……」

 本音か建て前かわからないことを喚くフェイラに生返事をした俺は、とりあえず逃げるように視線を侍男に向けた。

「……某は強者と剣を交えたいだけでござる。『千の剣』と称される貴殿を斬ることができればより高みへと昇れよう」

 こいつは『概斬の魔王』だ。その通り名から恐らくは『斬る』という概念の化身。だから似たような名の俺と戦いたいってことか。

「魔力ダ。〝魔帝〟ノ魔力ヲ喰ライニ来タ。オナカイッパイニ」

「オレ様はもう言ったろぉ。てめぇをぶっ殺して格を上げるためだぁ」

「罪あるところに贖罪ありです。私があなたを(すく)いましょう」

 MG-666とフィア・ザ・スコルピはわかりやすい理由だな。エルヴィーラはなに言ってんのか相変わらずだったが、こいつも要するに俺を潰したいって腹だろう。

「……」

 ンルーリだけは無言。影を徹底してるな。なんで来たの?

「ボクの目的もさっき言ったね。魔王のお兄さんお姉さんたちにこの世界を滅ぼさせないためだよ。今、ちょっと大事な時期なんだ」

 ゼクンドゥムについては『王国』の方の目的を聞き出したいところだ。めっちゃ詳しくな!

 だが、どうするかな。結局俺が狙われてるわけだから、俺が相手すればいいのか? こいつら全員? 死ぬんじゃね?

「ヒャッホホホ! なるほどなるほど、皆々それぞれの目的が見えたところで、この私からも一つゲーム内容を提案したい!」

 パチパチと手を打ち鳴らして立ち上がったグロルが、パフォーマンスでもするかのように円卓に沿ってぐるりと歩き始めた。なにをする気だ?

「結局、我々は魔王だ。欲しい物は略奪する。だからこそだ!」

 俺の横で立ち止まったグロルは、手元に出現させたステッキをクルクルっと回転させると――

「――ッ!?」

 俺の左胸に、深々と突き刺しやがった。


「こういうのは、いかがだろうか! ヒャッホホホ!」


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