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シャッフルワールド!!  作者: 夙多史
第六巻
227/314

四章 京都を包む『王国』の計画(1)

 異界監査局第二十八支部に戻った俺たちは、支部長室に皆が集まるのを待ってから大北山で起こった出来事を可能な限り詳しく説明した。

「『この世界に最悪の災いが降り注ぐ』……ねぇ」

 話を聞き終えると、ジル先生が神妙な顔つきで引っかかったであろう点を呟いた。バートラム先生は沈黙。セレスは神妙に唸って腕を組み、リーゼはわかってないのか小首を傾げているな。ハオユー支局長・リャンシャオ・チェンフェンの京都組は難しい顔で京都の地図を眺めているよ。桜居は関わらせたくないのでこの場にはいない。

「まずその『災い』ってのが一体なんのことかわかるか?」

 俺はハオユー支局長たちに問う。京都に残る伝説とか神話とか、そういうなにかがあるのかもしれないからな。

 だが、京都組の三人は見当もつかない様子で首を横に振った。

「京都の伝説はあるにはあるアルが……」

「地脈を歪めて防ぐなんて方法でどうにかできるものはないネ」

 リャンシャオとチェンフェンが交互に口を開く。監査局が地元の伝説を把握してないことはあり得んから、本当にそういったものはないんだろうね。

「この世界にないなら、別の世界が関わってるんじゃないかしら?」

 そう言ってきたのは悠里だった。

「それこそあり得ないのではないか?」

 セレスが異を唱える。

「奴らはわざと歪みを発生させているのだ。それでは異世界からの災いを呼ぼうとしているのは奴ら自身ということになる」

「順番が違うわ、セレスさん。まず異世界からなにかしらの災いが降りかかろうとしていて、それを彼らは防ごうとしている。そう考えたらどう?」

 言われてみれば奴らの口ぶりはそういう感じだった気もする。だが、俺はどうもそこに納得がいかないんだ。

「あの『王国』が、か?」

『王国』という組織はこの世界の柱を破壊して滅ぼそうとしているんだ。そんな奴らがこの世界を守ろうとしていることに違和感というか、矛盾のようなものを感じている。

「仮にそれが奴らの計画の支障になるんだとして、異世界からの災いってなんだよ?」

 俺の投げかけた質問に対して、悠里は全く逡巡することなく――


()()


 その名称を口にした。

「――なッ!?」

 そうか、悠里は勇者として幾多の魔王と戦ってきた。奴らがどういう存在なのか、俺もよく知っている。絶対悪。破壊の権化。そんなやばい存在が襲来したら……なるほど、『王国』が本来やりたいことまで呑み込んでぐちゃぐちゃにされてしまうだろうな。

 俺も、そこで欠伸しているリーゼも、一般的なものから逸脱してはいるが『魔王』だ。だからその力の凄まじさは嫌ってほど理解している。

 パン! と、ジル先生が柏手を響かせた。

「そこまで。確かにそれも一つの可能性かもしれないけれど、ここで考えたところで答えは出ないわ」

「知っている。わかることから解決するべきだ」

 バートラム先生も相槌を打つ。わからないことをここでいくら議論したところで、結局は不確定要素でしかないからな。俺も賛成だ。

 と――

「レージ、なんか下の方がさっきよりもやもやする」

 暇そうにしていたリーゼが俺の袖をくいくいしてきた。

「どうしたリーゼ? 下って?」

 支局長室の下になにか部屋でもあるのか? それともトイレか?

「お腹空いた」

 きゅるるるぅとリーゼの腹部が可愛く鳴いた。お腹のことかーい! 確かにいい時間だけども! うん、このお嬢様に会議とか無理じゃね? 災いとか一ミリも興味なさそうだったし。

「もうちょっと我慢してくれ、リーゼ。これが終わったらホテルで晩飯だから」

「むぅ」

 リーゼは不満そうに唇を尖らせたが、大人しく椅子に座ってくれた。聞き分けはいいんだよな、一応。

「『災い』がなんであれ、このまま地脈が歪められ続けたらどうなるのだ?」

 セレスが地図と睨めっこしていたハオユー支局長に訊ねた。ハオユー支局長は地図から顔を上げ、冷や汗をハンカチで拭いながら――

「それこそ災いが発生するで候。例えば、この京都の地がかつてない規模の大地震に襲われるとか」

 とんでもなく恐ろしいことを、ちょっと震えた声で告げちゃったよ。嘘じゃないってことはその焦った顔を見ればわかる。

「やっぱりあいつら、出鱈目言って俺たちを混乱させるつもりなんじゃ……?」

 ガルワースもルゥもそういう搦め手を使うような性格じゃなさそうだが、スヴェン辺りが入れ知恵してるのかもしれん。あのクソメガネ!

「一つ確かなことは、このまま彼らを放置できないということね」

「知っている。捕縛して拷問し、真意を聞き出せばいい」

 先生たちの言う通りだな。あいつらをふん捕まえて吐かせれば悩む必要なんてない。

「拷問とはなかなか過激アル」

「ワタシたち拷問器具もいっぱい揃えてあるネ。腕が鳴るヨ」

 妖しく笑う狐娘コンビ。こいつらにだけは捕まらないようにしねえと……いや、別に悪いことなにもしてないけどな。

「彼らはあと三箇所って言ってたわ。いつかはわからないけれど、『刻限がある』とも」

 悠里が壁に掛けられている時計を見た。俺たちが大北山からダッシュで戻って、全員が揃うまで一時間とちょっと経過している。次のパワースポットがどこかはわからないが、奴らの速度なら移動するには充分な時間……と思った方がいいだろうな。

「今までのデータから最も短い間隔でも十時間以上の開きがあるで候。恐らく、連続的に歪めるとそれだけこの地の負荷が強まると奴らも知っているのだと思われるで候」

 ハオユー支局長が取り出したタブレットの画面を操作しつつ、ハゲ頭に掻いた汗をふきふき。もしかしてこの場で一番取り乱してませんかあなた? まあいいけど。

「ルゥたちが動くとしたら早くて十時間……いや、もう九時間もないくらいか」

「そうね。一度戻って休んだら、次の予想箇所の警護をするということにしましょう」

 ジル先生の提案に俺は頷く。時間はあるようでない。なにせ俺たちは奴らが次に狙うパワースポットがわかってないんだ。それを割り出すにしても、援軍を呼ぶにしても、圧倒的に時間が足りない。

 結局、同じように対応するしかなさそうだった。

「ん?」

 方針が決まって支局長室を出ようとした時、俺はズボンのポケットに違和感を覚えた。立ち止まった俺に、悠里が眉を顰める。

「どうかしたの、零児?」

「いや、ポケットになにか」

 手を入れてみると、くしゃっと紙らしきものが入っていた。

 取り出す。それは綺麗に折りたたまれた福沢諭吉――つまり、万札だった。

「あの野郎……」

 ルゥに奢った八ツ橋代ってことかよ。一体いつの間に……本当、律儀な奴だな。多すぎるが、迷惑料ってことで貰っておいてやるか。

 いい奴っぽいのに、なんで『王国』なんかに加担してるのかさっぱりわからん。


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