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シャッフルワールド!!  作者: 夙多史
第六巻
224/315

三章 パワースポット防衛戦(6)

 手を抜いて勝てるほど甘い相手じゃない。

 直線攻撃の魔剣砲を撃ったところでかわされるだけだろう。ならば――


〈魔武具生成〉――ツヴァイヘンダー。


 全長一.七メートルほどあるドイツの巨大両手剣。それを上空に、奴らを取り囲むように生成する。

「聞いてた話と違ぇなー。レイジは右手だけに生成できるんじゃなかったのか?」

「魔王の力を取り込んだことで成長したのだろう」

 ルウとガルワースは頭上に円を描いて並ぶ巨剣を見上げ、感心したようにそんな遣り取りをしている。

 暢気だな。ならその余裕を見せている内に、ぶっ叩く!

「悪いが、前の俺とはもう戦い方が違う。古いデータじゃ俺は攻略できねえぞ!」

 遠隔操作でツヴァイヘンダーを一斉に二人の頭上へと落下させる。

「そのようだ」

 だが、ガルワースは己に降りかかる全てを絶技とも言える剣捌きで弾き、ルウの方も刃に触れることなく全てを拳で叩き落としやがった。

「わふふ、こんなもんかー? つまんねーぞレイ……?」

 ルウが言葉に詰まって目を見開く。ああ、そうだよ。この二人は『王国』の執行騎士。カーインやゼクンドゥムと同格だ。だからアレを防がれることは百も承知なんだよ。

 俺は二人がツヴァイヘンダーに気を取られている間に、無数の刀剣を空中生成しておいた。

 完全包囲だ。

「全方位から降り注ぐ刀剣の雨だ。防げるもんなら防いでみろ!」

 日本刀をその場で素振りする。瞬間、銃弾のように射出された刀剣がガルワースとルウに隙間なく襲いかかる。

 カーインのように闘気の衝撃波で蹴散らしても、すぐに次の波が襲うように調節して仕掛けた。全部を防げるとすれば、この辺り一帯諸共吹き飛ばすような技を出すしかない。

 そうなった時はそうなった時で、俺も次の動きを考えてある。

「なるほど」

 ガルワースが呟いた。

 なんだ? ガルワースとルウが虹色に発光して――

「なっ!?」

 ガルワースが、俺に向かって駆け出した。刀剣の雨に突っ込む形だ。

 避けようとしない。というか、剣が刺さらない。

 まるで鎧を纏っているかのように、あの虹色の光が全部防いでやがる。

「白峰零児君、君の技は手数も威力も素晴らしいが、あくまで魔力によって具現化された攻撃だ。オレの『神壁の虹(ヘブンリーミュラル)』を貫くことはできない」

 魔力攻撃が効かない? なんだよそのチート!

 俺は両手の日本刀で迎え撃つが、奴が纏う虹を斬り裂くことができず――呆気なく日本刀を弾かれてしまった。

 神々しい剣尖が俺の顔に向かって刺突される。

「まずっ!?」

 やられた、と思った瞬間――


「GAAAAAAAAAAAA!?」


 背後から獣の絶叫が轟いた。

「えっ?」

 振り向く。俺を刺すつもりだと思っていたガルワースの剣が、背後から迫っていたらしい恐竜もどきの喉を貫いていた。

 気づかなかった。気配察知には自信のある俺だが、今はとてもそんな余裕なんてなかった。

 助けられたのか? 敵に?

「提案がある」

 ドッと倒れた恐竜もどきを見据えたガルワースがそう言ってきた。

「一時休戦にしないか? あの数の異獣を彼女一人に任せるのは酷だ」

 彼女……悠里のことか? なんでお前がそっちの心配をするんだよ。

「……なんでだ? あんたらには都合がいいはずだろ」

「さっきも言ったが、これはオレの不始末だ。異獣を出現させることは計画に含まれていない。こちらとしても、無用な混乱は避けたくてね」

「自分でこうしておいて」

「だからオレの手で始末をつけなければならない」

 そうか。他のパワースポットに異獣の死骸があったのも全部こいつの仕業だ。なにかの仕掛けや企みかと思ったが、それを遂行するのに不都合だから始末していたらしいな。

「おいコラちょっとガル! んなもんもう監査局(せんもんか)に任せときゃいいだろー? クソ真面目すぎんだろ。あたしはやんねーからなー」

 すると、虹の鎧のおかげで無傷だったルウがぷんすか怒りながら駆け寄ってきた。ガルワースは小さく溜息をつくと、ニコリと微笑んで彼女を見る。

「そうか、それでも構わんが……しばらくヤツハシは抜きだな」

「わふっ!?」

 ルウが世界の終わりを見たような顔になった。

「ぐぬぬ……わ、わかったよやればいいんだろー!? やればいいんだろコノヤロー!?」

 悔しそうに歯噛みしたルウは、ヤケクソ気味に麓の方へと四足歩行で駆けて行った。

 ガルワースが再び俺に向く。

「どうかな、白峰零児君? 君が嫌なら手は貸さなくていい。ただ、ここでお互い消耗し合うのは得策ではないと思うが?」

 確かに、こいつらと戦り合った後で異獣掃除は大変だ。その頃には門も閉じてしまうかもしれないし、一匹でも麓に到達しちまったら大パニックだ。人も死ぬ。

 優先順位は、そっちの方が高い。

「……異獣が片づくまでだ。その後は問答無用で捕縛してやるから覚悟しろ!」

「ハハハ、それは怖い」

 わざとらしくお道化たようにガルワースは笑う。余裕ぶっこきやがって。絶対それまでに虹の鎧の攻略法を見つけてやる!

「あと! 俺も仕事だから協力はしてやるが、あんたらも監査局のルールでやってもらうからな! 異獣は可能な限り殺さず元の世界に帰せ! それができなきゃこの話はなしだ! ルウにも徹底させろ!」

「善処しよう」

 俺はガルワースを一秒ほど睨みつけると、悠里やルウが走っていった方とは別の方角へと駆け出した。


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