間章(1)
暗く深い闇がどこまでも広がっていた。
その中で大小様々な大きさの白い球体が無数に漂っている。
球体の明暗は様々で、強く輝かしい光を放つものもあれば、灰色に濁っているものもある。さらにはほとんど闇に溶けかけている球体も存在していた。
溶けかけの球体は間もなく完全に消滅するだろう。たとえ強い光を放つ球体でも、時が経てば次第に衰え、やがて闇と同化する。
そのような光景を、〝彼女〟はただ静かに見詰めていた。
他には誰も存在しない。正確に言えば、〝彼女〟自身もそこには存在していない。まるで神様のように白と黒のみのモノクロな世界を俯瞰しているのだ。
孤独。
〝彼女〟はそう思わないし、感じない。なぜならこの世界は〝彼女〟の世界であり、何人たりとも侵入することはできないのである。
物質の存在できない精神世界。
白い輝きの玉は、〝彼女〟の〝思い出〟。
それが闇と混ざり合うということは、〝彼女〟の〝思い出〟が消失したことを意味する。
長い時間をかけて自然と消えていくものは仕方ない。命と同じで、そういうものなのだからと納得している。
だが――
「!」
〝彼女〟は息を詰まらせた。白い球体の一つが、月食のように一瞬にして闇に汚染されたのだ。
明らかに自然消滅ではない。なんらかの要因が〝彼女〟の〝思い出〟を喰らい尽くしたとしか考えられない。
その要因がなにか、〝彼女〟は既に気づいている。知っている。必死に抗おうとしている。
けれど、闇の侵食は止まるどころか勢いを増すばかりだった。
「ごめんね」
泣きそうな掠れた声で呟く。
「また、守れなくて……」
短いですが、間章ということで大目に見てください^^;
それと、これからちょっといろいろなものを安定させるためにストックを溜めたいと思います。なので、次回の更新はしばしお待ちくださいm(_ _)m