第5話「最後の困惑」
【シーン1:カフェ/午後・シェアスタディ当日】
笹川、ノートと教科書を机に出しながら、少し硬い表情で座っている。
笹川
「始めるわよ。シェアスタディ。」
佐藤、ノートを取り出しながら笹川を見る。その表情に、どこか落ち着きのなさを感じる。
佐藤
「そうだね。じゃあまず英語を教えてくれるかな?」
笹川
「そうね。東大理系だったら、文脈を追えば大体のことはわかると思うけど……大事なのは“行間を読むこと”かしら。」
佐藤
「いや、俺さ……単語を覚えるのが苦手でさ。」
笹川は少し驚いた表情で、すぐに笑みを浮かべる。
笹川
「単語なんて簡単よ。覚え方、教えてあげる。……その前に、飲み物頼まない?」
佐藤
「そうだね。俺、ミルクティーにする。」
笹川
「私も。」
注文を終え、ミルクティーが運ばれてくる。
二人、並んでストローを口にする。しばし静寂。
佐藤
「なるほどね。単語は一つ一つの意味を覚えるんじゃなくて、ざっと何周もする……。これなら俺でもできそう。頑張ってみるよ。」
笹川 (笑顔で) 「うん。今の英語力から単語が伸びれば、かなり強いと思うよ。」
笹川、ふとミルクティーを見て口元に笑み。
笹川
「ねぇ。ミルクティー、もう飲み終わったの?」
佐藤、コップを見て頷く。
笹川
「じゃあさ。……この東大の一昨年の問題、訳せたら――私のミルクティー、飲んでいいわよ?」
佐藤、一瞬フリーズ。心の声。
佐藤(心の声) 【え? 間接キス……? いや、笹川さんってそういうの気にしないタイプ?……でも、自分から言うってことは……。】
笹川、じっと見つめてくる。
笹川
「どうするの? 早く訳してみて。」
佐藤、やや慌てながらプリントを見つめ、英語を訳し始める。
佐藤
「そうだな……ここが主語で、動詞がこれで……これは関係詞。だから……こう、かな?」
笹川(微笑みながら) 「ふふ。何よ、ちゃんと訳せるじゃない。」
笹川、自分のミルクティーを佐藤のほうへ差し出す。
笹川
「ほら、飲んでいいわよ。でも……全部はダメ。」
佐藤、顔を赤らめながらストローを口に含み、ひと口だけ飲む。
佐藤(照れ隠しながら) 「……あ、うまい。いや、その……ミルクティーが、ね。」
笹川(くすっと笑って) 「何照れてるのよ。」
佐藤(心の声) 【もうこれ完全に間接キスじゃん……。 え、もしかして……笹川さん、俺のこと……?】
笹川、何事もなかったようにミルクティーを飲み続ける。
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