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死に戻りハンターの英雄譚〜「ロード」であらゆるジョブを手にした俺はいつの間にか人類最後の希望になっていました  作者: ころん


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第15話 ユイ

 翌朝、集合場所を駅前ではなく病院の最寄り駅に変更した。


 三浦がメールで送ってきた住所は都内の総合病院で、電車で二十分ほどの場所にあった。改札を出ると三浦が待っていて、昨日殴られた頬に絆創膏を貼っている。

 その上から眼鏡をかけているので、フレームが絆創膏の端を押さえつけていて、頬の肉が少し歪んでいた。


「おはようございます。……顔、大丈夫ですか」


「あ、はい。腫れは引きました。昨日のうちに冷やしたので」


「ユイちゃんに心配されませんでしたか」


「あ、されました。『お兄ちゃんまたケンカしたの』って。またって何だよって思いましたけど、D級の時にもアザ作って帰ったことがあるので。……隠すの下手なんですよね、僕」


 三浦は照れくさそうに頭を掻いた。妹の前では怪我を隠そうとして、でも隠しきれない。その不器用さが、たぶんユイちゃんには全部見えているのだろう。


 病院までは駅から歩いて五分だった。大きな総合病院だ。正面玄関のガラス扉を抜けると消毒液の匂いが鼻に届き、リノリウムの床に蛍光灯の白い光が反射していた。ゲートの中の薄暗さに慣れた目には、病院の白さが少し眩しい。


 エレベーターで小児病棟のある階に上がると、廊下の壁には動物の絵が描かれていた。キリンやゾウやウサギ。明るい色調で、場違いなほど楽しげだ。

 その明るさが、かえってここにいる子供たちの事情を際立たせている気がした。


「ユイの部屋はこの先です。あ、あの、朝霧さん。ユイはたぶん最初からテンション高いですけど、気にしないでください。人見知りの逆みたいなやつなんです」


「人見知りの逆」


「はい。初対面の人にいきなり懐くんです。小さい頃からそうで、犬にも猫にも知らないおじさんにも」


「……知らないおじさんには懐かない方がいいと思いますけど」


「僕もそう言ったんですけど、『だってみんな面白いんだもん』って」


 病室のドアをノックして開けると、窓際のベッドに女の子が座っていた。小学五年生。肩まで伸びた黒い髪を、黄色いヘアゴムで一つに結んでいる。肌は白いが、頬にわずかに赤みがあった。


 細い腕に点滴のチューブが繋がっていて、ベッドの脇に立つ点滴スタンドからは透明な液体がゆっくりと滴り落ちている。

 だが表情は病人のそれではなかった。ドアが開いた瞬間、顔全体が光ったように輝いた。


「あ! お兄ちゃん!」


 ユイちゃんは声の大きさを全く調節する気がないらしかった。病室に響き渡る元気な声に、隣のベッドで寝ていたおばあさんがびくりと目を覚ましていた。


「ユイ、声。病院だから」


「あ、ごめんなさい。――お兄ちゃん!」


 小声のつもりなのだろうが、全然小声ではなかった。三浦が苦笑いしながらベッドの横に腰を下ろす。


 その瞬間だけ、三浦の顔からゲートの中で纏っている緊張が全部抜け落ちた。肩の力が抜けて、目元が柔らかくなって、声の高さが少し上がる。别人だった。

 ランク11のハンター三浦カズヤではなく、妹の前でだけ戻れる「ただのお兄ちゃん」の顔だった。


「ユイ、今日は仕事仲間を連れてきたよ。朝霧さん」


「はじめまして! 三浦ユイです! お兄ちゃんがいつもお世話になってます!」


 ユイちゃんはベッドの上で器用にお辞儀をした。点滴の管が引っ張られそうになるのを、慣れた手つきで押さえながら。


「はじめまして。朝霧透です。お兄さんにはいつも助けてもらってます」


「え! お兄ちゃんが助けてるの!? すごい! お兄ちゃんすごいね!」


「いや、僕はそんな……ただの荷物持ちだし……」


「荷物持ちだってすごいよ! 重いもの持つの大変でしょ! お兄ちゃん腕細いもん!」


「余計なこと言わなくていいから……」


 三浦が耳を赤くしている。ユイちゃんは構わず僕の方に身を乗り出してきた。点滴のスタンドがカタカタと揺れる。


「ねえねえ朝霧さん、お兄ちゃんって仕事中もビビってる? ビビってるでしょ。あの人ゴキブリでも逃げるもん」


「ユイ! やめろって!」


「だって本当のことじゃん。ねえ朝霧さん、お兄ちゃんゴキブリ出た時どうしてる?」


「……ゲートの中にゴキブリは出ないので、まだ分からないかな」


「じゃあ今度ゴキブリ出た時教えてね! 絶対面白いから!」


 ユイちゃんはけらけらと笑った。笑い方に屈託がない。入院中の子供とは思えないほどのエネルギーで、部屋の空気を丸ごと自分の温度に塗り替えてしまう。

 三浦が「人見知りの逆」と言っていたのは本当だった。初対面の僕にいきなりこの距離感。


 だが不快ではなかった。計算も、媚びもない。ただ純粋に、目の前の人間に興味があるだけだ。


 三浦が持ってきた紙袋からプリンを取り出して、ユイちゃんに渡した。


「今日のおやつ。ユイが好きなやつ」


「やった! ……あ、朝霧さんの分は?」


「え、いや、僕は」


「お兄ちゃん、朝霧さんの分買ってないの? ダメじゃん。お客さんには出すものでしょ」


「ご、ごめん。買ってくる。自販機に――」


「いや、大丈夫だよ。お気遣いなく」


「ダメ! お兄ちゃん買ってきて! 朝霧さんはここで待ってて!」


 三浦はユイちゃんに命令されると逆らえないらしかった。「すみません、ちょっとだけ」と言い残して、小走りで病室を出ていった。パタパタという足音が廊下に響いて、遠ざかっていく。



 *  *  *



 病室に僕とユイちゃんだけが残された。

 窓から午前中の柔らかい光が差し込んでいて、ベッドの白いシーツの上に格子状の影を落としている。点滴の雫が落ちる音が、静かな部屋に規則的に響いていた。


 ユイちゃんがプリンの蓋を開けながら、ぽつりと言った。


「朝霧さん」


「はい」


 声のトーンが変わっていた。さっきまでの溌剌とした声とは別の、低くて静かな声。

 口元には笑みが残っているのに、目が笑っていない。小学五年生の目ではなかった。自分が置かれている状況を、年齢以上の解像度で理解している人間の目だ。


「……お兄ちゃんのこと、お願いしてもいいですか」


「お願い?」


「お兄ちゃん、私のために無茶してるんです。お見舞いに来るたびに、新しい傷が増えてて……。昨日も頬に絆創膏貼ってて。転んだって言ってたけど、転んであんなところ怪我しないですよね」


 プリンのスプーンを持つ手は動いていなかった。蓋を開けただけで、一口も食べていない。


「隠してるつもりみたいだけど、分かります。歩き方がおかしい時もあるし、手が震えてる時もある。あと、匂い。お兄ちゃん、時々変な匂いがするんです。錆っぽい匂い。あれ、血の匂いですよね」


 僕は何も言えなかった。この子は全部分かっている。兄が何をしているか。どんな危険を冒しているか。匂いで血を嗅ぎ分けるほど、注意深く兄を見ている。


「私ね、魔力侵食症っていう病気なんです。知ってます?」


「……名前だけは」


「ゲートから漏れる魔力が身体を蝕むやつです。治療法はあるんですけど、保険が効かなくて、すごくお金がかかるんです。お兄ちゃんはそのためにハンターやってる。全部、私のせいで」


「ユイちゃんのせいじゃないよ」


「分かってます。分かってるけど、事実は事実です。私が病気じゃなかったら、お兄ちゃんはゲートなんて行かなくていい。殴られなくていい。血の匂いをさせて帰ってこなくていい」


 ユイちゃんはスプーンの柄を指先で回していた。くるくると、無意識の動作のように。

 視線は窓の外の空に向いていて、その横顔は、三浦が怖いものに向き合う時の顔と同じ構造をしていた。兄妹だ。怯えながらも目を逸らさない、あの目の形が同じだ。


「私、治らなくてもいいんです」


「……」


「本当に。治らなくてもいいから……お兄ちゃんに死んでほしくないんです」


 声は震えていなかった。泣いてもいなかった。泣いたら兄が気づく。気づいたら兄はもっと無茶をする。だからこの子はずっと我慢しているのだ。

 見舞いに来る兄の前では元気に笑い、傷を見つけても深く追及せず、「またケンカしたの」と軽い言い方でごまかす。全部、兄を追い詰めないためだ。


 小学五年生が、兄の精神状態まで計算して振る舞っている。


「だから、朝霧さん。お兄ちゃんのこと、見ててあげてください。お兄ちゃんは自分から助けてって言えない人なんです。限界が来ても、倒れるまで走り続ける人なんです。誰かが横で見てないと」


「……分かった」


 頷いてしまった。理屈ではなく、この目の前に座っている小さな女の子の声の重さに、身体が先に反応した。

 喉の奥が詰まるような感覚があった。泣きそうだったのかもしれない。自分が泣きそうになっているのかどうかすら、よく分からなかった。ただ、「分かった」以外の言葉が出てこなかった。


 ユイちゃんは「ありがとうございます」と言って笑った。さっきまでの元気な笑顔とは違う。もっと静かで、もっと深い、どこか大人びた笑みだった。

 そしてその笑みが消えるより早く、廊下からパタパタと足音が聞こえてきた。


「お待たせ! プリン三つ買ってきた! ユイ、もう一個食べるか?」


「やったー! 食べる食べる! ……あ、お兄ちゃん。朝霧さんとね、すごく仲良くなったよ! いろいろ話した!」


「え、何話したんだ?」


「秘密!」


 ユイちゃんが舌を出して笑う。三浦が不安そうに僕を見たが、僕は「他愛のない話ですよ」と答えた。三浦は「そうですか」と納得したような、納得していないような顔でプリンを配った。


 三人でプリンを食べた。ユイちゃんは一口ごとに感想を述べ、三浦に「次はもっと高いプリン買ってきて」と要求し、三浦が「病院の売店にそんな高級なやつないだろ」とツッコむ。


 僕はスプーンを動かしながら、その会話を聞いていた。カラメルの苦さが舌の上で溶ける。甘さの奥にある、あの焦がした苦み。ゲートの中の鉄錆の味とは似ても似つかない、人間の世界の味だ。



 *  *  *



 面会時間が近づき、僕たちは病室を出た。ユイちゃんは「また来てね朝霧さん!」と手を振った。三浦が「毎回来させるわけにはいかないだろ」と言うと、「じゃあ二回に一回!」と即座に値切ってきた。


 エレベーターを降りて、一階のロビーを抜ける。自動ドアの向こうに出ると、外の空気は晩秋の冷たさを帯びていた。

 三浦は並んで歩きながら、しばらく黙っていた。いつもは黙っていられない男が、今日は自分から口を開かない。病室を出てからずっと、何かを言おうとしては飲み込んでいるのが分かった。


「……三浦さん」


「はい」


「話してくれますか。ユイちゃんの病気のこと」


 三浦は立ち止まった。病院の敷地内にある、ベンチが並んだ小さな中庭だ。植え込みの枯れかけた紫陽花が、茶色くなった花を重そうに垂らしている。

 三浦はベンチに座り、僕もその隣に腰を下ろした。


「ユイは魔力侵食症なんです」


「さっき、ユイちゃんから聞きました」


「え、ユイが自分で……。あの子、知ってたのか。自分の病名」


 三浦の顔に動揺が走った。隠していたのだろう。妹には「ちょっとした体調不良」くらいに伝えていたのかもしれない。だがユイちゃんは全部知っていた。病名も、治療費のことも、兄が何をしているかも。


「……ゲートから漏れる魔力が身体を蝕んでいく病気です。三年前に発症しました。普通に暮らしてる分には進行が遅いんですけど、ストレスがかかると一気に悪化してしまうんです。治療法はあるんですが、保険適用外の特殊な治療で……費用が四百万」


「四百万」


「それに加えて、父が残した借金が三百万。合わせて七百万です」


 三浦は自販機で買った缶コーヒーの蓋を開けたが、飲まなかった。手の中で缶を回しながら、淡々と続けた。


「父は三年前に病気で死にました。保険も何もなくて、借金だけが残りました。母は僕が小さい頃に出ていったので、ユイの面倒を見られるのは僕しかいません」


「……」


「普通に働いても返せないことはないです。でも、それだとユイの手術が間に合わない。侵食は少しずつ進んでて、医者には『あと一年が限度だ』って言われてます。だからハンターになった。ランク11しかないけど、ゲートに入れば一日で何万も稼げるから」


 三浦の声は平坦だった。泣き言ではなく、事実の報告として語っている。その平坦さが、内容の重さをかえって際立たせていた。

 缶コーヒーの表面に結露がびっしりとついていて、三浦の指の跡だけが乾いた線を描いている。


「朝霧さんと組むようになってから、初めてちゃんと稼げるようになりました。今のペースなら、あと三ヶ月で手術費は貯まる。借金も一年で返せる。だから……」


 三浦が僕の目を真っ直ぐに見た。殴られた頬に貼った絆創膏が、午前の日差しに白く光っている。


「お願いです。これからも、僕を使ってみてください。荷物持ちでも、雑用でも、何でもやります。朝霧さんの役に立ちたいんです」


 僕はしばらく黙っていた。


 ユイちゃんの声が頭の中で響いていた。「お兄ちゃんに死んでほしくないんです」。「お兄ちゃんは自分から助けてって言えない人なんです」。

 あの子は見抜いていた。兄がいずれ限界を超えることを。そしてその時、隣にいる人間がいなければ、兄は一人で倒れるまで走り続けることを。


 今、三浦は「使ってください」と言っている。道具として、駒として。

 でもユイちゃんが僕に頼んだのは、そういうことではなかった。「見ていてあげてください」と言ったのだ。使うのではなく、見ていてほしいと。


 三浦をこのまま「ただの荷物持ち」として使い潰すことは、もうできないと思った。それは合理性の問題ではなかった。あの病室で「わかった」と頷いてしまった自分自身の言葉の重さだった。頷いた以上、その言葉に応えなければならない。


「……分かりました。これからもよろしく、三浦さん」


「は、はい! よろしくお願いします!」


 三浦が深々と頭を下げた。腰から九十度。病院の中庭のベンチで、その角度は少し大げさだった。


「あの、朝霧さん」


「はい」


「今日ゲート入る前に、ユイにプリンもう一個買って届けていいですか。さっき三つ買ったんですけど、あの子二個は食べるので、明日の分がないんです」


「……どうぞ」


「すみません! 五分で戻ります!」


 三浦は缶コーヒーをベンチに置いて、売店に向かって走っていった。点滴を繋がれた妹のために、プリンを買いに走る二十歳の男の後ろ姿。

 その背中は、リザードマンの内臓に手を突っ込んでいる時と同じくらい必死で、でもずっと明るかった。


 僕は一人でベンチに座り、三浦が置いていった缶コーヒーの結露を眺めていた。結露は缶の表面を伝って流れ落ち、ベンチの木目に小さな水たまりを作っている。


 三浦にとっての妹は、殴られても蹴られても手放さないリュックの中身そのものだ。あの男を動かしているのは金ではない。金の先にある、ベッドの上で笑っている女の子の顔だ。それが三浦の全てで、三浦の弱さで、三浦の強さだった。


 ユイちゃんに「分かりました」と言った。あの約束の重さが、今になってじわじわと効いてきている。僕はあの子に何を約束したのだろう。

 三浦を守るということだ。荷物持ちとして使うのではなく、隣にいるということだ。それがどういうことなのか、まだ正確には分かっていない。でも、少なくとも「駒」とは呼べなくなった。


 駒に妹はいない。駒の妹はプリンを二個食べない。駒の妹は、兄の血の匂いを嗅ぎ分けたりしない。


 三浦が「買ってきました!」と走って戻ってきた。手にはプリンが二つ。


「二個買ったんですか」


「ユイ用と、ユイの隣のベッドのおばあちゃん用です。いつもユイのこと見ててくれるんで」


「……行きましょう。プリン届けてから、ゲートへ」


「はい!」


 三浦がプリンを届けに病棟へ駆けていく。僕は立ち上がり、缶コーヒーを一口飲んだ。

 冷めていた。ぬるくて、苦くて、金属の味がわずかに混じっている。ゲートの中の鉄錆の味と似ていなくもなかったが、こちらの方がずっとましだった。



 ポケットの中でスマホが震えた。明菜さんからのメールだった。猫の写真が一枚。公園のベンチの下にうずくまっている、白黒のハチワレ猫。その下に一言。


『今日見つけた。かわいい』


 それだけのメッセージだった。返事に悩んで、結局「かわいいですね」とだけ打った。


 送信してから、自分が猫の写真で一瞬だけ口元が緩んだことに気づいた。三浦に「朝霧さんが笑ったの一回も見たことない」と言われたばかりだったが、笑ったかどうかは分からない。

 ただ、口元の筋肉がほんの少しだけ動いた。それだけのことだ。


 三浦が病棟から戻ってきた。


「ユイが『朝霧さんにもう一回来てって言って!』って。……すみません、断ってもいいですけど」


「二回に一回、でしたっけ。次の見舞いの時に、また寄りますよ」


「……! ありがとうございます! ユイ、絶対喜びます……!」


 三浦の目がきらきらと光った。この男は妹が喜ぶことになると、途端に表情が輝く。単純だが、その単純さが眩しかった。


 僕たちは病院を出て、ゲートのある湾岸エリアへ向かった。

 電車の中で三浦はユイの話をした。好きな食べ物はプリンとハンバーグ。嫌いな食べ物はピーマンとナス。将来の夢はパティシエ。入院中に看護師さんから折り紙を教わって、今は千羽鶴を折っている。三百七十二羽まで折ったらしい。


「千羽って遠いですね」


「でもユイ、毎日十羽くらい折ってるんです。暇だから。あと四十日くらいで千羽いくって計算してました」


「計算が正確ですね」


「算数だけは得意なんです。僕に似なくてよかった」


 三浦が笑った。穏やかな笑みだった。

 その笑顔のまま、窓の外を流れる景色を眺めている横顔を見ながら、僕は思った。この男の横にいることが、ユイちゃんとの約束を守ることなのだと。使うのではなく、見ていること。走りすぎている時に「休め」と言えること。


 それが、今の僕にできる精一杯のことだ。


 電車が湾岸エリアの駅に着いた。ホームに降りると、潮風が頬を撫でた。ゲートの匂いはまだしない。ここから先が、僕たちの仕事場だ。


「行きましょうか、三浦さん」


「はい。今日も、よろしくお願いします」


 二人で改札を抜けて、管理局の施設に向かう。三浦の足取りは軽かった。プリンを届けてきた直後の三浦は、いつもより少しだけ強い。


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