第10話 敗北と渇望
ゲート前の広場に戻った時、空気の質が変わっていることに気づくのが遅れた。坑道の中の空気に慣れきった鼻が、地上の変化を拾えなかった。
「――おい」
横合いから、足音ひとつ立てずに声がかかった。振り返ると三人の男が立っている。入る前に絡んできたチンピラではない。纏っている空気の質がまるで違った。
力を持っている人間の、余裕のある立ち方だ。肩の力が抜けていて、それなのに隙がない。
真ん中の男は仕立ての良いシルバーグレーの戦闘服を着ていた。胸元に剣と百合をあしらった銀のバッジ。大手クラン『銀百合』のエンブレムだ。
優男風の整った顔立ちで、髪はきちんと撫でつけられ、靴には泥一つついていない。ただし目だけは笑っていない。爬虫類のように冷たく、僕を品定めしている。
「……何か用ですか」
「用があるから声をかけたんだよ。君かい? ここのマイン・オーガを狩ったのは」
「そうですが」
「そうですが、じゃ困るんだよね。ここは僕たち『銀百合』が管理している狩場だ。許可なく獲物を持ち出すのは、まあ、窃盗みたいなものかな」
「ここはフリーのゲートのはずです。管理局に確認しましたが、特定クランへの独占許可は出ていませんでした」
「法律の話なんて聞いてないよ。僕が言っているのは『マナー』の話だ。野良犬が飼い主の冷蔵庫を勝手に開けちゃいけないだろう? それと同じことさ」
西条と呼ばれた男が一歩踏み出した。それだけで肌を圧迫する物理的な圧力が押し寄せてくる。
魔力の放出。ランク40台の人間が本気で威圧をかけると、こういう感覚になるのだと初めて知った。
「詫び料として、その魔石と……ああ、その装備も置いていこうか。なかなかいいコートだね。生意気な口を利いた慰謝料ってことで」
「お断りします」
「ふうん。度胸はあるんだね。……でもさ、監視カメラの話がしたいなら、やめておいた方がいい。ああいうものは誤作動でいくらでも記録が消えるからね。『低ランクハンターが装備に振り回されて暴発死した』。報告書にはそう書いておくよ」
西条が動いた瞬間、世界が加速した。
瞬発強化を使った僕よりも純粋な身体能力で速い。反射的に牙剣を抜いて胸元への突きを弾いたが、火花と共に手首を砕くような衝撃が走った。技術で圧縮された、無駄のない重さだ。
「ほう? 反応するか。ランク12にしては悪くない」
攻撃は止まらなかった。雨のような連続刺突が喉、心臓、眉間を正確に狙ってくる。
構造看破で筋肉の予備動作を先読みして致命傷だけを避けるのが精一杯で、反撃の隙が見つからない。暗殺者の長所である「速さ」を活かすには、相手の懐に飛び込まなければならない。
だが、飛び込もうとすれば、西条の剣が正確に急所を狙ってくる。西条は笑みすら浮かべている。まだ本気ですらないのだ。
「クッ……!」
バックステップで距離を取り、ブーツの隠しポケットからサバイバルナイフを抜いて投げた。投擲Lv1が軌道を補正し、ナイフは正確に西条の目を狙って飛ぶ。だが。
「芸がない」
パシィン。
西条は剣を振ることすらなく、空いた左手でナイフを叩き落とした。籠手に魔力が宿っている。ため息が出そうなほどの余裕だった。
「終わりだ」
西条が踏み込んだ。今までとは段違いの速度。殺気。本気の「狩り」の目だ。右斜め上からの袈裟斬り。
(見える……!)
死線の最中で、感覚が研ぎ澄まされていた。構造看破が筋肉の動きを先読みし、軌道が赤いラインとして浮かぶ。
僕は牙剣を合わせた。受け止めるんじゃない。刃の側面を滑らせて軌道を逸らし、その勢いを利用して懐に飛び込むカウンター。
ガギィッ!
金属音が響く。成功だ。西条の剣が外へと流れる。胴体が無防備に晒された。
「貰ったッ!!」
踏み込んだ。瞬発強化で加速した身体はすでに西条の懐に入っている。狙いは喉元。防具のない急所だ。
ランク40台だろうが人間だ。首を裂けば死ぬ。牙剣が西条の首筋へと吸い込まれ――
ガィィンッ!!
硬質な音が響き、手首に痺れが走った。刃が届いていない。
西条の首の数センチ手前で、見えない「壁」に阻まれていた。
「……は?」
「惜しいな。野良にしては速い。でも軽いんだよ」
西条の冷笑が降ってくる。彼の左手には魔力で形成された魔法障壁が展開されていた。無詠唱の防御魔法。右手で斬り、左手で守る。
蹴りが腹部に突き刺さった。
コートの防御を抜いて内臓を直接揺さぶる衝撃に吹き飛ばされ、地面を転がった。口の中に血の味が広がる。肋骨にヒビが入った感触がある。
「西条さん、手こずってんじゃないスか?」
「殺しちゃマズイんでしょ? 手加減って難しいっスよねえ」
(……クソッ)
奥歯を噛み締めた。勝てない。ステータスの差だけじゃない。経験、スキル、装備、数。すべてにおいて負けている。
逃げるか。いや囲まれている。背後の魔法使いが杖を構えているのが見えた。動いた瞬間に狙撃される。
西条が動いた。さっきより速い。剣の軌道が複雑に変化する。
上段からの斬撃――と見せかけて、手首を返しての突き。構造看破で筋肉の動きを先読みし、牙剣で払う。
キンッ!
だが西条の攻撃はそこで終わらない。弾かれた剣の勢いを殺さず、回転して裏拳のような形で障壁を叩きつけてくる。
「くっ!」
牙剣の柄でそれを受け止める。衝撃で体勢が崩れる。そこへ追撃の剣閃。
速い。重い。途切れない。右手一本では防御だけで手一杯だ。攻撃に転じようとすれば防御が空く。防御に徹すればジリ貧になる。
「どうした! 手が止まってるぞ!」
西条が嗤う。剣と盾を使った波状攻撃。右で斬り、左で殴る。シンプルだが、片手武器の僕には悪夢のような連携だった。
(もう一本あれば……!)
もう一本の剣で西条の盾を抑え込めるのに。剣をパリィしたその瞬間にカウンターを叩き込めるのに。
ない。僕の片手はただバランスを取るためだけに空を切っている。
「隙ありィ!」
横合いから大剣使いが割り込んできた。西条の猛攻に釘付けにされた僕の、無防備な側面。
「しまっ――」
反応できない。右手は西条の剣と噛み合っている。回避も間に合わない。
ドスッ。
鈍い音がした。熱いような、冷たいような違和感が脇腹を貫いた。遅れて激痛が脳髄を焼く。
「ガ、アアアアッ!?」
大剣ではない。短剣だ。隠し持っていたサブウェポンが、腎臓のあたりを深々と刺し貫いていた。
「ははっ! ガラ空きだぜ坊主!」
男が短剣を引き抜く。鮮血が噴き出し、地面を赤く染めた。膝から力が抜ける。
「……終わりだよ」
西条の声。見上げると、冷徹な刃が振り上げられていた。
「いい勉強になったろう? 身の程ってやつだ」
走馬灯のように思考が駆け巡る。悔しい。負けたことじゃない。「足りなかった」ことが悔しい。もう一本の刃があれば。あの奇襲を弾けた。障壁ごと腕を切り落とせた。
渇望が、薄れゆく意識の中で激しくスパークした。
振り下ろされた剣が首を断ち、視界が回転して夕焼けの空が滲んだ。
* * *
暗闇の中に浮かぶ青白い文字列を、僕は奥歯を噛みしめながら見つめた。
四度目の死。脇腹を貫かれた熱さと、首を断たれた冷たさが、同時に身体の奥で反響している。
慣れない。何度経験しても、死の残滓は上書きされずに積もっていく。
【死亡しました】死因:出血多量および斬首(対人戦闘)
【リザルト集計】
討伐数:22体(コボルト種x20、ジェネラルx1、マイン・オーガx1)
対人撃破:二階堂(ランク31)x1
ボーナス:ゲート単独攻略、ジャイアントキリング(極大)
獲得経験値:+28,500 獲得コイン:+220,000
総合評価:B+
【レベルアップ:Lv10 → Lv16】
一気に六レベル。二階堂を殺した経験値がここで精算されていた。
そしてショップ画面に並んだ三つの選択肢は、さっきの死の瞬間に脳裏を焼いた渇望をそのまま文字に変換したものだった。
【解放可能ジョブ】
1.【決闘者】── 消費:80,000C
受け流し・見切りに特化。防御から反撃へ繋ぐ堅実な剣技。
対応スキル:「見切り」3,000C /「カウンター」5,000C
2.【復讐者】── 消費:120,000C
受けたダメージを攻撃力に変換。格上への特攻補正。
対応スキル:「反撃変換」8,000C /「格上特攻」10,000C
3.【双剣士】── 消費:150,000C
逆手ペナルティ無効。攻撃速度UP。専用剣技解放。
対応スキル:「連撃」20,000C /「クロス・パリィ」30,000C
三番目以外に目が行かなかった。もう一本の刃。首を断たれる寸前にスパークしたあの渇望が、価格と性能を伴って画面に表示されている。
あれさえあれば大剣使いの奇襲を弾けた。西条の障壁ごと腕を叩き落とせた。あの「足りなかった」を、二度と味わいたくない。
【ジョブ「双剣士」を取得】消費:150,000C
【スキル「連撃」を習得】消費:20,000C
【スキル「クロス・パリィ」を習得】消費:30,000C
【スキル「気配遮断Lv2」を習得】消費:10,000C
最終残高:11,370C
脳の中に新しい回路が敷かれていく。二本の剣の重心移動、左右非対称の攻撃リズム、片方で受けながらもう片方で斬り返す同時処理。
それが知識としてではなく、筋肉の記憶として書き込まれていった。空っぽだった片手に、まだ何も握っていないのに、刃の重さの残像が宿っている。
【再構成を開始します】ロード地点:廃棄坑道脱出直後
* * *
夕日が網膜を焼いた。廃棄坑道の出口。
広場には夕暮れの風が吹いていて、アスファルトの熱気と排気ガスの匂いが混じっている。数秒前まで暗闇の中で死んでいた身体が、生温い風に包まれて戸惑っている。
手持ちは右手の牙剣と、ブーツの隠しポケットにある古びたサバイバルナイフ。さっきの戦いで投擲して叩き落とされたはずのナイフだが、ロードで時間が巻き戻ったから手元にある。
抜いた瞬間、双剣士の補正が指先から手首、肘、肩へと波のように走った。錆びたジャンク品が掌に吸い付く。
不格好な二刀流だが、構えた途端に身体の軸がぴたりと安定した。右と左から同時に攻撃のイメージが湧き上がってくる。
(……これだ)
ずっと足りなかったピースが嵌まった感覚。ただし、猶予はない。あと数十秒で三人が来る。
「――おい」
同じ声、同じ方角、同じ傲慢な響きが背中に刺さった。
「……何か用ですか」
「用があるから声をかけたんだよ。君かい? ここのマイン・オーガを狩ったのは」
「そうですが。それが何か?」
西条の眉がぴくりと動いた。前回と微妙に違う返答をされて、台本にないアドリブを振られた役者のような顔をしている。
もっとも、彼にとってこれは台本でも何でもない。初対面だ。初対面のはずの相手が、会話を急かすように先を促してくる。その違和感が、わずかに西条の間合いを乱していた。
「……ここは僕たち銀百合の狩場だ。詫び料として――」
「装備と魔石を置いていけ、でしょう? すみませんがお断りします。お急ぎでしたらどうぞお先に」
西条の目が細くなった。さっきまでの慇懃さが剥がれて、爬虫類の冷たさが剥き出しになる。
大男が腕を伸ばしてきたので、左手のナイフをちらつかせた。鼻先を錆びた刃が掠め、大男が慌てて手を引っ込める。
僕は右手に『守護者の牙剣』を、左手に錆びたサバイバルナイフを構えた。
不格好な二刀流。
だが、構えた瞬間にジョブ『双剣士』の補正が働き、身体の重心が最適化される。
左右の腕が、それぞれ別の生き物のように独立して駆動する感覚。
「……殺せ」
* * *
大男が大剣を振りかぶった。上段からの叩き割り。さっきと同じ初手だ。
軌道が見える。速度が分かる。一度殺された身体が、あの剣の重さを覚えている。
右手の牙剣を大剣の側面に合わせ、クロス・パリィを発動した。刃と刃が接触した瞬間に力の方向を書き換える双剣士の防御技術。
大剣の軌道がぐにゃりと横に逸れ、勢い余った刃先が地面に突き刺さった。
ガキィンッ!
大男の体勢が完全に崩れている。その脇腹に左手のナイフを突き入れた。腹斜筋の腱が断たれる手応え。致命傷ではないが、もう大剣は振れない。
「ガアッ!? な、何しやがっ――」
後方で魔法使いが詠唱を開始した。足元の石を蹴り上げ、投擲Lv1の補正で口元に直撃させる。
「ぶげっ!?」
詠唱中断。取り巻き二人を無力化するまで、五秒。
前回は彼らに囲まれて詰んだ。今回は戦闘が始まる前に退場してもらった。残るは西条ひとりだ。
「……ほう」
西条の目が変わった。さっきまでの値踏みが消え、代わりに研ぎ澄まされた警戒が浮かんでいる。
魔法剣を構え直し、腰を低く落とした。遊びの姿勢ではない。
「見かけによらないね。面白い」
「どうも」
西条が踏み込んだ。高速の刺突が飛んでくる。
一撃目、喉元狙い。右手の牙剣で弾く。二撃目、心臓。半歩ずらして回避。三撃目、右目。左手のナイフが軌道を逸らした。
キン、キキンッ!
二本の刃が左右から同時に動く。右で弾いて左で返す。左で受けて右で突く。さっきの戦いで防戦一方だった波状攻撃を、今度は双剣が捌いていく。
同じ攻撃が二度目には通用しない。身体がパターンを覚えている。構造看破が筋肉の予備動作を拾い、双剣士のスキルが最適な受け方を両手に振り分ける。
「ッ……! なぜだ。初見のはずだ。なぜ僕の剣筋が読まれている……!」
「さあ。勘がいいんですよ、たぶん」
嘘だ。勘ではない。一度死んで、全パターンを体験しただけだ。でもそれを言う義理はない。
西条の焦りが攻撃の精度を落とし始めていた。連撃の合間にフェイントを混ぜてくる。未体験の軌道だ。一瞬、身体が固まりかけた。
だがクロス・パリィが反射的に右手を動かし、牙剣が剣閃を横に弾く。その反動をそのまま左手に繋げて、ナイフの切っ先が西条の二の腕を掠めた。浅い傷。だが銀色の戦闘服に赤い線が滲んだ。
西条の血が、初めて地面に落ちた。
「……お前」
低く絞り出された声には、さっきまでの余裕も嘲笑も残っていなかった。二の腕を押さえた指の隙間から血が滴り、アスファルトに小さな赤い斑点を作っている。
* * *
バックステップで距離を取った西条が、左手を突き出した。空気が歪み、見えない壁が展開される。魔法障壁。
さっきこれに阻まれて、カウンターが届かなかった。あの壁の向こうに刃が届かず、蹴りで吹き飛ばされ、取り巻きに刺されて死んだ。
(だが、今回は違う)
「【連撃】」
僕は小さくスキル名を呟き、踏み込んだ。
一撃目。
左手の錆びたナイフを全力で障壁に叩きつけた。
バキィッ!!
衝撃が腕を伝って肩まで痺れさせた。ナイフが真ん中から折れ、錆びた破片が夕日を受けて散る。
同時に、障壁の表面にも亀裂が走った。蜘蛛の巣のように広がる白いヒビ。
「ハハッ! 武器を一本無駄にしたな! 安物は安物ってことだ――」
言い終わる前に、右手が動いていた。
牙剣に残りの魔力を全て注ぎ込む。刀身が赤黒く脈動し、守護者の素材が呼応するように熱を帯びた。亀裂の一点に、全ての速度と体重を乗せて突く。
「砕けろ……」
パリィィンッ!!
澄んだ破砕音が夕暮れの広場に響き渡った。
障壁が粉砕され、魔力の欠片が夕日を受けて一瞬だけ虹色に光り、霧散する。その虹の向こう側に、無防備な西条の胴体があった。
牙剣が手首を切り裂いた。腱が断たれ、指が開き、銀色の魔法剣がからんと乾いた音を立てて地面に転がった。
「ギャアアアッ!!」
西条が手首を押さえて膝をつく。血が指の間から溢れ、アスファルトに赤い模様を描いていく。さっきまで余裕の笑みを浮かべていた顔が、苦痛と屈辱に歪んでいた。
僕は地面に転がった魔法剣を拾い上げた。
「返しやがれ!それは特注品だぞ!」
銀色のレイピア。折れたナイフの代わりに握ると、双剣士の補正が走って柄が手に吸い付いた。牙剣と対になる重心。右に黒、左に銀。
不格好な組み合わせから、ようやく正式な二刀が揃った。
「これは慰謝料としていただきます」
「ふざけるな……! 銀百合が黙っていないぞ……! 必ず殺してやる……!」
僕は無言のまま、牙剣の切っ先を彼の喉元に突きつけた。
西条がヒッと息を呑み、硬直する。
殺すべきか。
【復讐者】のジョブを選んでいれば、迷わず首を刎ねていただろう。
だが、今の僕にとって彼はもう「障害」ではない。
ここで殺して殺人犯として追われるリスクと、生かして情報を持ち帰らせるリスク。
天秤にかける。
「次に来る時は、もっとまともな準備をしてきてください。また同じ結果になるのは、お互い時間の無駄でしょう?」
* * *
立ち上がり、背を向けた。広場を抜け、駅へ向かう雑踏の中に紛れる。路地裏に入って人目がなくなったところで、壁に背中を預けた。
息が荒かった。心臓がまだ暴れている。戦闘中はアドレナリンが痛覚も疲労感も塗り潰してくれていたが、戦いが終わった瞬間にそれらが一斉に請求書を突きつけてきた。
右腕が震えている。クロス・パリィの連続で筋繊維が限界に達していたのだ。
ポケットの中には折れたナイフの柄だけが残っていて、断面のギザギザが掌の皮膚を切っていたことに、今になって気づいた。じわりと滲む血が、コートの裏地に染みを作っている。
勝った。だが、この勝利は一度死んだ上に成り立っている。
初見の西条に僕は完敗した。ロードがなければ広場に転がっていたのは僕の死体だ。パターンを知っていたから勝てた。それだけだ。次に初見の格上と当たれば、また同じように死ぬかもしれない。
強くなった実感はある。でもそれは「死なないと強くなれない」ということの裏返しでもある。
【現在のステータス】
氏名:朝霧 透 レベル:16 ジョブ:暗殺者、双剣士
装備:守護者の牙剣/魔法剣「銀蜂」/黒影のコート
スキル:気配遮断Lv2、構造看破、瞬発強化、急所特効、連撃、クロスパリィ
コイン残高:1,370
ステータスを閉じて路地裏を抜けた。大通りに出ると、帰宅ラッシュの人波が僕を飲み込んでいく。
黒いコートの下に二振りの魔剣を隠した男が、くたびれたネクタイのサラリーマンや買い物袋を提げた主婦に混じって、改札へ向かっている。そのことに、誰も気づかない。
首元に触れた。傷はない。だが、四回分の死の冷たさが、まだ薄く残っていた。




