表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第6章:複製との対話 ― 真実の声とコードの檻

この章では、レンが自分自身の「影」との本格的な対話を果たします。

敵ではなく、自分が見たくなかった過去と向き合うことで、彼の旅は深みを増していきます。


「最も危険な鏡像とは、敵ではない。

自分だけが正しいと思い込む心だ。」


ドアをくぐった瞬間、カーニバルはねじ曲がった。

光は消え、音楽は逆再生され、磁気テープのように不安定に響いていた。


【ZONE 2 - デュプリケート・ドーム】

レンは落ちなかった。投げ込まれたのだ。


そこは閉ざされた回転ギアの空間。床はなく、すべてが錆びたコードのにおい。

中心には、より明瞭な姿のプロト・レンが立っていた。


その声は、もはやプログラムの残響ではなかった。

完全な「存在」として、彼は語り始める。


「まだ分かっていないのか?

俺はゲームが生んだものじゃない。

お前が前に進むたび、捨ててきたものの結晶だ。」


戦闘が始まった。


プロト・レンの攻撃は「言葉」だった。

「失敗」「疲労」「空虚」といった単語が、弾丸のように飛んでくる。


レンにできるのは、回避と記憶の呼び起こしだけ。


トオルと遊んだ日。母の笑顔。甥の笑い声。

その一つ一つが、攻撃を打ち消していく。


クライマックスでは、二人の身体が空中でぶつかる。

ビットの雨が空間を満たす。


落下するプロト・レンは、笑っていた。


「勝ったところで……戻れると思うか?」


息を切らせながら、レンは答える。


「分からない。でも、前に進む。お前と一緒に閉じこもるよりは、ずっといい。」


プロト・レンは金色の粒子となって消えた。

そこに残ったのは、一片のコードだった。


レンがそれに触れると、空間が静止し、画面が浮かび上がった。


【ROUND 2 クリア】

■ 結果:内なるカオス解消

■ 記憶回復率:29%

■ 解放されたトラウマ:[インポスター症候群]


画面がちらつき、新たなインターフェースが読み込まれる。


【次のゾーン読み込み中:マレア・トレムラ】

■ 危険レベル:高

■ 時間歪曲:臨界状態


そしてその時、初めて聞く声が響いた。


柔らかく、だが痛みを含んだ女性の声。


「レン……? あなたなの……? 本当に……戻ってきてるの?」


それは、母の声だった。現実の。


画面は暗転。次のゾーン、読み込み中……


お読みいただきありがとうございます!


次回、レンは水中の記憶世界「マレア・トレムラ」へと沈んでいきます。

そこには、彼が避け続けてきた本当の「痛み」が眠っています。


次章「眠れる水の記憶」もぜひご期待ください。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ