第3章:楽園の罠 ― エデン・デファザード
この章では、レンが「理想の楽園」という罠に直面します。
表面的な楽しさの裏に潜むのは、自分自身の現実逃避の欲望。
彼が現実を選び取ることで、初めて前に進むことができます。
「いくつかの楽園は、ただの牢獄を隠すために存在する。」
次のゾーンは、スムーズなトランジションから始まらなかった。
カウントダウンもカーテンもなく、ただ「パチン」と音がして、新しい世界が表示された。
そこは、過飽和な色で満たされたジャングルだった。
丘は脈打つように揺れ、植物は人工的に見えた。
空中に回転するサインが浮かぶ:
【ZONE 2 - エデン・デファザード】
レンの記憶では、このゾーンは明るくて楽しいエリアだったはず。
だが今のこれは……そのカラフルな外見の奥に、腐った気配が漂っていた。
花のような敵は花弁が刃物で、触れると爆発する蝶。
プログラムされた存在には思えなかった。
そして、その中から声がした。
「なぜ逃げるの、レン? この世界は、あなたのために作られたのよ。」
振り向くと、そこにいたのはリラの投影。
だがその声は、成熟し、どこか現実的だった。
ゲームのNPCのそれではない。まるで、過去に出会ったセラピストのような声だった。
「ここには目標も責任もない。ただ、永遠の遊びがあるだけ。
それが、あなたの望んだことじゃなかったの?」
トランポリンのような足場。
甘い見た目の罠。
まるでテーマパークのように彩られたステージには――出口がなかった。
レンは気づいた。
罠とは、レベルのことではない。
ここに「留まりたい」と思う、その心こそが罠だった。
もし警戒を解き、この現実よりゲームを選んでしまえば、もう戻れない。
だが彼は覚えていた。アーケードの椅子の硬さ。背中の痛み。
弟・トオルの言葉――「兄ちゃん、もう家じゃなくて、ゲームの中で生きてるみたいだよ。」
諦めかけたその時、現れたのはバイト・バスター。
グリッチしたセキュリティスプライト。浮遊するディスクをレンに投げ渡した。
「君はNPCじゃない! メインサーキットを破壊して、ポータルへ走れ!」
レンはコアモニターを見つけた。
未来を映し出すコードの塊。
それをチャージジャンプで破壊すると、ジャングルは布のように崩れ落ちた。
ポータルに飛び込む直前、彼は遠くにプロト・レンの姿を見た。
ただ見ているだけで、何もしなかった。
「……なぜ止めない?」
「試されてるのか?」
ステージが終わる。
周囲が凍結し、空中にメッセージが現れた。
【ZONE 2クリア】
■ 結果:良好な目覚め
■ 記憶回復率:12%
■ 解放されたトラウマ:[感情ブロック03]
読んでいただきありがとうございます!
次回、レンは崩壊した遊園地のような世界に突入し、自分の多様な姿と向き合います。
「鏡の中のカオス」が、彼の精神を大きく揺さぶるでしょう。
続きもお楽しみに!