10
進めば、次の答えが出る。
レンはずっと、そう信じてきた。
次のゾーンに入った瞬間、違和感を覚える。
画面に表示されるはずのログが、どこにもなかった。
【ZONE 読み込み中】
その文字だけが、宙に固定されたまま動かない。
レンは歩き出す。
床はある。空間もある。
だが、目的地が存在しなかった。
「……案内は?」
問いかけても、返答はない。
システムメッセージも、警告音も、評価も表示されなかった。
これまでのゾーンでは、必ず何かが示されていた。
敵、条件、制限、あるいは“正解”の形。
だが、この場所には、それがない。
レンは無意識に走り出していた。
立ち止まることが、怖かった。
しばらくして、気づく。
どれだけ進んでも、風景が変わらない。
同じ壁。
同じ床。
同じ沈黙。
「……ループ?」
確認するように振り返ると、そこに立っていた。
プロト・レン。
以前のような敵意はなかった。
だが、同情もない。
「今回は、説明がないな」
彼は淡々と言った。
「システムが壊れたのか?」
プロト・レンは首を横に振る。
「違う。必要ないだけだ」
「何がだ?」
「答えが」
レンは反射的に言い返す。
「答えがなければ、進めないだろ」
「今まではな」
その言葉に、レンは何も返せなかった。
沈黙が続く。
音も、評価も、結果も出ない。
初めてレンは理解する。
このゾーンは、クリアするためのものではない。
【システム通知なし】
それが、この場所の唯一のメッセージだった。




