第7話 やるぞ、今度こそ、やるぞ
目が覚めた。
さて、毎度毎度なにかを進めようとする度に寝てる気がするな、うん。
今度こそ気を取り直してダンジョンを強化していかねば。
なにをしていたんだったか、寝る度に記憶が薄れてなにも進みやしない。
えーっと、たしかキュウに名前を付けて通信できるようになったんだったっけか?
キュウとハヅキはどこだ?
部屋を見回すがどこにも姿は見当たらない、布団と椅子くらいしかない簡素な部屋だから隠れるようなところもないはずだ、となると上だろうか。
そう思い第1階層へと向かうと案の定ふたりが入り口でなにかをしていた。
しきりのひとつすらないだだっ広いフロアを抜けてふたりに近づくとハヅキがこちらに気づいて心配そうに走りよってきた。
キュウも後ろをぽよんぽよんとついてきている。
「おはようございます、マイマスター。ご気分はいかがですか?」
相当心配そうな顔でハヅキが尋ねてきた、そんなに心配かけるほど寝込んでいたのだろうか。
だが俺は続く言葉に絶句した。
「マイマスターは三日三晩ぴくりとも動かず眠っておられました」
3日!?俺はまた3日も寝てたのか!?なんてこった、精々数時間寝てしまったものと思っていたのに。
『キュウ?すごいな、お前のぴゅってやつ、でも俺にはかけないで欲しかったな』
するとキュウはほんとうに申し訳なさそうに
『ごめんなさい、、、ごしゅじんさま、、、』
と謝ってくれた。スライムのきれいな丸の形が平ぺったくなるほど反省している?ようなのでさすがにこれ以上言うわけにもいかないだろう。
それに、なによりそのぴゅっの威力を身をもって体験できたしな、今後のダンジョン作りに大いに役立つだろう。
『それよりもふたりしてなにしてたんだ?』
『えっとね、いりぐちをふさいでたの』
どうやら俺が開けてしまった穴を塞いでくれていたらしい。
見ると穴が開いていた場所が土で埋められていた。
どうやら、俺が寝ている間に敵が入って来ないようにと入り口を塞いでくれたらしい。ありがたいことだ。
だがさすがにそろそろ第1階層くらいは作って敵に備えないとな、キュウの話ではゴブリンが侵入してきていたようだし、それにしてもなぜゴブリンがいたのだろうか、ハヅキの話によるとここは森の中にあるはずだ。
俺が寝ている間にこの世界は魔物がうろつくようになってしまったのだろうか。
ずいぶんと変わってしまったものだ、まぁ、記憶はほとんどないんだけどね。
2年も寝ていたせいなのか、ダンジョンマスターになったせいなのか分からないが、俺は記憶があまりはっきりしていない。
名前も覚えていなければ親の顔や親しかった人のことも覚えていない、ぼんやりと2年の睡眠の直前のことは覚えているが、起きてからはそれらのことがどうでもよくなっていた、今はダンジョンのことの方を大切にしたいと思っている。不思議なものだ、おそらくはダンジョンマスターになった影響だろう。
もしも俺の親や知り合いがこのダンジョンに来てしまったら、俺はどうするのだろう、侵入者である以上俺は排除しなければいけない。
相手は俺のことを覚えていても俺は相手を覚えていない。
さぁ、感傷に浸っている場合ではなかったな、今日こそダンジョンを強化せねば。
一回目は運良く倒せたが次はそううまくいくとも限らない、寝る前にしっかりと準備をせねば。
そんなことを考えていると、
「私は先に下で寝ていますね、マイマスターも終わったらおやすみくだざい」
「お、おう、おやすみ」
大きな欠伸をしながらハヅキは下へと下りていった。
まったく人のことは言えないが、どれだけ寝たら気がすむのだろう。まったく人のことは言えないが。
ハヅキが下に行くとなんとそのあとを追ってなんとキュウも寝にいこうとしだした。
おいこらちょっとまてい、お前は仕事だ、今日こそ実験を手伝ってもらうぞ?
速度をあげてぽよぽよと逃げるキュウをぽよんと掴み抱き抱える、ふふふ、これで逃げられまい。
観念しましたとばかりにキュウは俺の腕のなかでおとなしくなった。
『さてキュウよ、こっからお前のことを色々と調べさせてもらうぞ』




