第6話 丸いから...
部屋に戻ると相変わらずスライムがなにかを伝えたそうにぽよんぽよんと飛び跳ねていた。
「ただいま。すごいな、ハヅキの声がそのまま頭の中に響いてた。」
「おかえりなさいませ、マイマスター」
俺はさっき見て気がかりになっていた足跡についてハヅキに聞いてみることにした。
「ハヅキ、さっき上にいったら入り口のところに穴が開いていてこのダンジョンになにかが入って来たような足跡があったんだが、なにか知らないか?」
するとハヅキが答えるよりも先にスライムが俺に飛びついてきた。
「スライムがなにか言いたいようですね、名前を付けてあげましょう」
そうだな、だがあいにく俺もハヅキもネーミングセンスはない。
さて、なににしようか、丸くて、ほんの少し緑がかった透明で触ると実はあったかい。さっき起きた時に背中に感じた謎の暖かさはどうやらこのスライムだったようだ。
ふーむ、キュウとかどうだろう。
丸い、球、キュウ。だめかな?安直かな?いや、でもキュウって名前だけ聞いたらそんなに悪くないのでは?うん、キュウでいこう、そうしよう。
「じゃあ、お前の名前はキュウだ。どうだ?」
ハヅキからの目線は少し痛かったが、キュウは結構気に入ってくれたようで俺の肩に乗ってぽよんぽよんしている。
さて、これでこの子とコミュニケーションがとれるだろうか?
『聞こえるかい?キュウ』
『きこえるよ、ごしゅじんさま!あのねあのね!きのうのよるね、へんなみどりのがおうちにはいってきてたんだ、だからね、ボクねぴゅってやったんだ!ごしゅじんさま、えらい?えらい?』
頭の中にかわいらしい声が聞こえてきた。
言いたいことはなんとなくわかった。どうやら昨日の夜、例の足跡の侵入者が入って来たらしい。
そしてそれをキュウが倒しちゃったのかな?ぴゅってなんだろう、ぴゅって
スライムって俺の中では弱いイメージがあるんだが、強いんだろうか?
『おぉ、それは入って来た敵を倒したってことかい?よくやったな』
『入り口はしっかりと塞いだはずですがどこかに穴でもあったのでしょうか?申し訳ございません、マイマスター』
『いや、おそらく俺がダンジョンの構造をいじった時に入り口が出てしまったんだろう、なにもせずに寝てしまった俺の過失だ、気にするな。それよりもキュウ、どんな敵が入ってきてたんだい?』
これはとても気になるところだ、今のところキュウがうちの唯一の戦力だからな。
『えっとね、みどりいろのへんなの!』
なるほど、分からん。
これはなんでも知ってるハヅキ先生案件ですね。
『ハヅキ、なんだと思う?入り口のところには人よりも小さめの足跡がついてたんだが』
『おそらく、ゴブリンでしょう』
ハヅキの話によるとゴブリンは基本的には緑色のものが多く、サイズも人間より小さいことが多いらしい。
だがハヅキの話によると、スライムとゴブリンでは圧倒的にゴブリンの方がステータスが高く、さらに、武器を使う知能も持ち合わせているため、普通のスライムに勝ち目はない、とのこと。
こうなってくると益々ぴゅっ、というのが気になってくるところだ。
『キュウ?そのぴゅっていうのはなんなんだい?できれば見せて欲しいんだけど』
『いいよ!みててね、ごしゅじんさま!いくよー?』
そして俺の視界が揺れた、まさにぴゅっという擬音がふさわしい攻撃であった。完全に油断していた、まさかおれにぴゅっをしてくるとは、キュウめ、やったな。
どうやらぴゅっ、というのは睡眠薬を飛ばすと同時に睡眠魔法をかけることだったらしい。そんなことを考えながら、俺の意識はゆっくりと沈んでいった。
最後に目にうつったのは駆け寄ってくるハヅキと、やっちゃった...みたいな雰囲気でぽよんぽよんしているキュウの姿だった。
にしてもまさか【睡眠】に耐性がないとは...




