第1話 目覚め
「知らない天井だ......え、どこ?」
我が家は木造建築のはず、だがどうみても土の天井と土の壁にしか見えない。
あたりを見渡すと一人の少女らしき後ろ姿が見えた。
どうやら僕は布団で寝ていたようだ。
「あら、お目覚めですかマイマスター」
「マイマスター?どこだここは?そして君はだれだ?」
「ここは73番目のダンジョン、終の迷宮です。私はこのダンジョンの管理を代理で行っていました、本来はマイマスターのサポート役として生み出されたのですが、マイマスターがずっと眠っているものですから」
「ずっと眠っている...?どういうことだ」
「マイマスターはこのダンジョンが生まれてから2年間ずっと眠っていました」
「2年間!?......なぜ俺は生きている?2年も寝ていたなら生きていられるはずはない、というか人間って2年も寝られるものなのか...?」
「それはマイマスターの≪権能≫が関係しているのではないでしょうか?起きてからなにも説明していませんでしたね。色々と説明しましょう。まず、マイマスターはダンジョンマスターというものになりました。分かります?」
「ああ、なんとなく分かる、つまり俺はダンジョンの管理をすればいいんだな?だがなぜ俺がダンジョンマスターになっている?」
だんだんと記憶がよみがえってきた、俺は確か夏休みの宿題に追われながら寝たはずだ。
だがあの時点では俺はただの高校生だったはずだ。
別に起きたら目の前に美少女が、なんていう展開を望んでいたなんてことはない。
「ダンジョンの生まれた一番近くにいた人間がダンジョンマスターに選ばれます、つまりマイマスターがダンジョンマスターになったのは偶然ということですね」
「そうか、まぁいいや理由なんて。で、具体的に俺はなにをすればいいわけ?」
まじか、ダンジョンマスターか、こんなファンタジーな展開、別に待ってたとかないけど?......うれしいなぁ、生きててよかったぁー
「そうですね、マイマスターが眠っていたあいだは私が代理で管理をしていましたが、今日からはマイマスターにやってもらいます。まずはそこのノートを見てください」
「ノート?......俺の宿題じゃねぇか」
「宿題...?ちょっと何言ってるか分かりませんが、開いてください、そこにSPと書かれているところがあるでしょう?そのSPを使うとダンジョンの拡張やモンスターの生成、合成、罠の設置や設備の作成などができます。SPは魂を分かりやすくポイントとして表したものです。ダンジョンのエリア内で死んだ生物分の魂がダンジョンに吸収されSPとなります、また生物は生きているうえで魂を体から排出し続けますのでダンジョン内にいる生物からは常時SPが貯まります。ちなみに現在このダンジョン内にいる生物は私とマイマスターのみですね。」
なるほど、とりあえず開いてみるか。
「3650000SPと書かれているがこれは高いのか?」
「通常の成人男性一人がおよそ500SP、1日に排出する量はその1/100です。」
「これは君が......そういえばまだ名前を聞いていなかった気がするが名前は?」
「私に名前はありません」
「ない?」
「はい、ですのでマイマスターに付けてもらえたら嬉しいです」
ふむ、名前か...透き通るような水色の髪、髪と同じ色をした瞳、なぜかメイド服......ダメだ思いつかん
「今日って何日だ?」
「マイマスターはきっかり2年眠っていましたので、8月31日ですね。」
「......ハヅキ、とかどうだ?だめ?」
もちろん8月だからである。
「ハヅキですか、分かりましたマイマスター私は今日からハヅキです。」
ハヅキは嬉しそうに答えた。
よかったぁ、なんも浮かばなくてあせったぁ
「じゃあ、話を戻そう、このSPはハズキが増やしたのか?それとも元からあったのか?」
「いえ、私はなにもしていません。マイマスターが起きるまでのあいだ、このダンジョンが人間にみつからないようにした以外は基本的に私も寝ていました。最初は0SPでしたが、一日に5000SPずつ溜まっていたのを確認しています。私はダンジョンに生み出された存在なのでSPは排出しません、おそらくマイマスターが排出したものと思われます。」
なるほど、成人男性が一日に排出する量が5SP、俺は5000SPどうなってんだ?排出というからにはそれだけ分のSP、つまり魂を失っているということだろう。
俺の魂の総量はどうなっているんだ?
「自分のSPの総量を見ることってできないのか?」
「マイマスターの持っているノートにダンジョン内に存在する生物のステータスが表示されているはずです。確認してみてください。」
また俺の宿題か、普通もうちょっとかっこいいなにかに表示されてるもんじゃないのか?ダサいなんてもんじゃない。
まぁいい見てみるか。
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名前 なし | ダンジョンマスター 所属 第73迷宮 『終の迷宮』
レベル 1 経験値0/50000
体力 738/738(∞)
力 738(0)
耐久 738(∞)
速度 738(0)
精神力 1/1
運 5
魂量 500000/500000
≪技能≫
・ダンジョン操作
ダンジョンを操作することができる。
≪権能≫
・睡眠
【現在使用可能な能力】
睡眠中は体力と耐久が∞となるが、力と速度のステータスは0となり、行動不能とな
る。
24時間の睡眠ごとに基礎ステータスが1上昇する。
睡眠中は魂量、精神力が徐々に回復する。しかしデメリットとして魂量が全回復するまで起きることはない。
魂量が1割をきると強制睡眠。
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いろいろと気になるところはあるが、まず名前なしってなんだ、そういえば俺の名前ってなんだ?
記憶がぼやけて自分の名前が思い出せない。
「なぁハヅキ、俺も名前ないっぽいんだけどさ、決めてくんね?」
「名前、ですか?そうですね、クロでどうです?髪も目も黒ですし、着ている寝巻も黒ですし」
言われてみれば寝巻のままであった、といってもこれ以外に服は見当たらない。
「人のこと言えないけど安直だなぁ、まぁいっか、じゃ俺はクロってことで」
正直いって別に名前なんてどうでもいいしな。
次に気になるのは諸々の数値、これはおそらくゲーム等でよくあるあれだろう。
だが高いのか低いのか分からん、おそらく魂量=SPということなのだろう。
「ハヅキ、ステータスの細かい説明を頼む」
「はい、力・耐久・速度・運はその名のとおりで、一般的な成人男性で10くらいです。運は人それぞれですがね。精神力というのも精神の強さを表していますが、これは魔法に関連する数値です。魔法を使うのにはこの精神力を使います、精神力を使い切り0になると気を失います。体力は身体的ダメージを受けると減少し、0になっても死ぬわけではないですが、0になると魂量の方が削られていきます。最後に魂量ですが、これは生命力のようなものです。生きているだけで少しずつ減少します。食事などにより他者の魂を取り入れることで回復します。マイマスターの魂量の数値が高いのはダンジョンマスターに成った際に生物としての格が上がったからだと思われます。そしてレベルはダンジョンマスターの中での格、経験値が上限に達すればレベルが上がります。」
「経験値はどうすれば増える?」
「外の生物をダンジョンへと吸収することで上がります。」
「なるほどな、最後の≪権能≫睡眠ってなんだ?」
「このダンジョン特有の能力ですね、各ダンジョンには特有の≪権能≫があります。」
なぜ≪権能≫が睡眠なのかは置いておこう、重要なのはここだ『睡眠中は魂量が徐々に回復する。しかしデメリットとして魂量が全回復するまで起きることはない。』おそらくこの能力のおかげ様で2年ものあいだ眠らされたんだろう。
デメリットはあるがそこまで悪くない権能にも思える、寝るのは大好きだし。
残念なのは精神力1/1というところだろう、あなたは魔法が使えませんと言われたようなもんだ、いやレベル1と書かれているしレベルが上がれば魔法も使えるかもしれない。
夢は持つものだ。いつか使えるようになると信じよう。
「SPが多い理由は分かった、ところで第73迷宮ということは少なくともここの他に72個はダンジョンがあるということでいいか?」
「はい、そういうことになりますね」
だとすると他のダンジョンはもう2年前から活動を始めているはずだ、ダンジョンマスターが寝ていてダンジョンが機能していないなんていう間抜けなところはうちだけなのではなかろうか?
「俺はダンジョンマスターとして何をすればいいんだ?」
「このダンジョンは現在人に見つからないように隠れている状態です。ですがダンジョンの役目は魂の回収、このままというわけにはいきません。マイマスターにはこのダンジョンを強化してもらわなければいけません。」
こうしてハヅキからダンジョンの操作方法をいろいろと教えてもらうこととなった。
.....3日ほどかかった




