第9話 攻略不能なダンジョンが作りたい
えー、起きました。重いです。体が重いです。風邪でも引いたんでしょうか。
と思って頭までかぶっていた布団から顔を出すと俺の上に大量のヒュプノスライムたちが乗っかっていた。重い。
隣で寝ていたはずのハヅキはいつのまにかいなかった。俺が重い体?というか布団を持ち上げて起きると、上に乗っていたスライムたちは一斉にぽよんぽよんとははけていった。あれ?一匹ころころ転がっていったな、そのまま床でぐでんとなっている、どうやらまだ寝ているようだ。
椅子を見るとハヅキがキュウを抱いて座っていた。俺にはなぜか見た目は他のヒュプノスライムと一緒なのにキュウが見分けられる。ダンジョンマスターだからだろうか。
「おはようございます、マイマスター。この子たちは昨日召喚されたんですか?」
「ああ、防衛に役立ってもらおうと思ってな、とりあえず上限の100匹まで召喚してみたはいいもののすぐに全員寝ちゃってな、とりあえずこの部屋で寝させといたんだ」
昨日は召喚してすぐに寝てしまったが、いまはみんな楽しそうに遊んでいる。あ、あれは某RPGに出てくるスラ〇ムタワー? あ、一番上のが落っこちた。
さっき転がっていったやつはおんなじ場所でまだ寝ているようだ、きもちさっきよりぐにょーんと伸びている気がする。
『キュウ、こいつらと意思疎通はできるか?』
『できるよー、さっきまでいっしょにあそんでたー』
ふむ、さすがに100匹全部に名前をつけるなんて真似、俺のネーミングセンスでは不可能なので今後ヒュプノスライム達にはキュウを通して命令していこうかな。
『さっそくで悪いがその子たちを上の階に行かせてくれるか?キュウ、お前がリーダーだ』
『ぼくがりーだー?わかったー、がんばるー』
するとキュウはスライム達を引き連れて上の階に移動しだした。あれ?一匹少ない?と思ったらさっきのやつがまだ寝ていた。
しょうがない、連れていくか。ぐでーんとしているそのスライムを持ち上げて俺も上の階に向かった。
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さて第一階層にみんなで上って来たが迷路はどうしようか。
もちろん迷路なんて作った経験はない、だがまぁなんとかなるだろう。
ちなみに昨日考えていた構想はぎり覚えていた。
ということで昨日考えた構想を元に壁を作っていこうとしたのだが迷路を作る上で部屋全体が土というのは非常にやりにくい、だからまずはリフォームといこうじゃないか。
部屋の環境変化の能力は結構細かくやりたいことができる。
しっかりと部屋の広ささえあれば町ひとつを作り上げることもできるだろう。太陽や海を再現したり、火山地帯を模したりもやろうと思えばできそうだ。まぁそれ相応にDPはかかるが。
今回俺が作りたいのはSFに登場するような近未来的な壁だ。環境変化はイメージが大切らしい、ということで目を閉じてしっかりと細かいところまで頭の中に創造していく。すると今俺のいるダンジョンの全容が不思議と頭に浮かんでくる。これがダンジョンマスターの能力か。
まず回りの壁と床、天井を1辺1メートル弱の正方形のタイルが敷き詰められタイルとタイルの間から淡い緑色の光が木漏れ日のように差す、そんなイメージ。
うちのダンジョンは<<権能>>からして睡眠をテーマにするのがいいだろうから、ダンジョン内を明るくしたり暖色系の色にするのはもっての他だろう。青や緑は眠気を誘う色だと言われている。俺だってちゃんと考えているのだ。そう、決してかっこいいからこういうデザインとかそういうことではない、うん。
次に高さ3メートルの天井を上部1メートルと下部2メートルに分ける。
この上の1メートルの部分をスライムたちの住み処にしてもらう予定だ。特に知識があるわけでもないが戦闘で上をとれるというのはそれだけで強い気がする。
そしてスライムたちには上から例のぴゅっをやってもらわなければいけない、なので上のタイルは任意で消える。
そんなことできるのかと思うかもしれないがハズキはダンジョンマスターの創造力次第でダンジョンはどんな風にでも変化させられると言っていた。
だからたぶんできるだろう。
このギミックを区切った天井のタイルすべてに適用する。これで一方的な攻撃ができ、さらに侵入者がどこにいようと上の部分を移動することでいつでも奇襲可能という恐ろしい仕掛けができた。
もし侵入者がこの上のギミックに気付き上に入り込もうとしたときのために上の空間自体にダンジョン内の生物以外の侵入不可の概念を付与してみる。できた。やろうと思えばできるものだな。
一旦環境変化の能力に集中させていた意識を戻し、目を開けてみる。
するとさっきまで土の上に立っていたはずが神秘的な光を発するタイルへと変わっていた。
これはすごい、ほんとうに頭で創造しただけですべてが現実になるとは。
試しに上のタイルがしっかりと開くか試してみることにする。
「開け! お、あいt──────────モゴモゴっ──────────────────ふがっ────────────────────────ブクブク─────────── ぷはっ、死ぬっ」
タイルがパッと消えたと思ったら上からスライムが落ちてきたのだ、しかもそのまま俺の顔を覆いやがった。その間実に30秒。さらにたちの悪いことにあいつらの体は睡眠薬と同様の効果を持っているっぽく、顔から引き剥がそうとすると体液が入ってきて眠気に襲われる。
これは恐ろしい、スライムが自ら離れてくれたからよかったものの、睡眠耐性のない俺ではあれ以上やられてたらほんとに死にかけていたかもしれない。
待てよ、だがこれは戦略に組み込めるのではないか?
さっきこの上の部分を侵入者が入れないように細工したがそもそもここに上がれることに気がつかないと先に進めないようにする、そして気がついて開けたとしても上からさっきのスライム攻撃に襲われる、こうすればダンジョンマスターの部屋に通じないダンジョンは作れないという制約もクリアできる、だがどちらにせよしたの部分にフェイクの迷路は必要か。
そうと決まったらここをこうして、ここを──────
こうして俺は第一階層の作成を三日三晩かけて行った。
..........その間俺以外のやつらは全員俺の部屋で寝てた。
ダンジョンマスターの俺が一番寝てないとはこれいかに




