森の魔女
森の?と問われればあなたは何が思いつきますか?
くまさん?それともピアノ?あるいは──。
今の目の前の状況整理が先であろう。黒いマントにランプを持つ右手から覗かせる赤い爪。左手には杖のように持たれた上部が丸い形をした長い棒。フードの合間から病的なまでに白い肌が見える。
ついに会えたのだ、この森に住むという魔女に。
「運命だ!僕はあなたを探していた!」
「ひえぇ、ごめんなさい!裁判、魔女裁判だけはご勘弁を〜」
僕の出会えたことに感動する気持ちとは裏腹に、魔女は泣きべそをかくような声でいきなり土下座をしだした。真逆な反応に思わず二人して怪妙な表情をしてしまう。
「魔女……裁判?」
「運命?」
このままお互いに硬直していては埒があかない。思い切ってこちらの話をし始めてみた。
「僕はこの森に住むという魔女に弟子にして欲しくてここにきた。僕の名前はストレーガー、お願いできませんか?」
「弟子?お願い?どいうこと、だって今年は千年目よ。魔女狩りや裁判はどうなっているの?」
なんとも物騒なことを次々と言い続けている。このままではせっかく見つけたのに逃げられてしまうかもしれない。
「あの!タダでとは言いません、弟子にしてくださる代わりにこれはどうですか」
なんとしてでもこのチャンスを物にしたい。そのためなら手の内は全て明かさなければいけない。そう思い青い石がついたペンダントを外して手に持つ。そして両手を胸の前に石を持ったまま翳す。
「シールド」
するとあたりは透明の仕切りを作る如く隙間なく僕達を囲む。
「これは、貴方は能力者なの?」
「はい、青の石。サファイヤの使い手です」
その能力を確かめる様に貼られたシールドに手を当てていた。かなりの頑丈性のあるシールドが貼れたはずだと自負している。そこから魔女は少し考えてからこう答えた。
「わかりました。貴方が私の守護をするという約束するなら弟子にしてあげましょう」
「本当ですか!やったー!」
思わずその魔女の手を取り飛び跳ねた。
森の?と問われれば貴方は何を思いつきますか?
僕はこの魔女のこと、ただ一つ。