おばあちゃん家の裏山
小さい頃から、夏休みにおばあちゃんの家に1週間遊びに行くのが私の毎年恒例の行事だった。
おばあちゃんの家は田舎にあり、古い木造の一軒家でほのかに線香の香りが漂う。
誰もが想像するおばあちゃんの家!って感じ。
朝は6:00に起こされ、夜は9:00に寝るように口うるさく言われること以外は、とても楽しい夏休みライフを過ごせる。
ご飯は美味しいし最高。
家の裏側には畑がありその奥には小さな川、さらに奥には山が存在するような地形だ。
毎年、白髪でよぼよぼなおばあちゃんは僕に向かって、「よく来たねぇ」と「ご飯は美味しかった?」と「裏山で遊んだら駄目だよ」と言うのが恒例になっていた。
だから遊びに来た時は、決まって一人で裏の畑で昆虫を採取したり、小さな川で小さな魚を掴んだりして遊んでいたり、言いつけを守って裏山には近づかないようにしていた。
ある晩、ふと気になる。
何故裏山で遊んではいけないのかと。
最初に迷子になってしまうからという考えが浮かんだが、裏山は道がそれなりに舗装されていることは付近で毎年遊んでいる僕は知っていた。
そして、僕は今年で5年生になったし迷子にはならない自信がある。
その後、色々な推測をしたが裏山に入ってはいけない結論は出なかった。
明日、こっそり裏山に潜入することを決め、電気を消し床に就く。
期待と興奮で僕は目が冴えていたが、鈴虫と蛙の子守唄で意識が途切れる。
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翌日、蝉の鳴く音で僕は目が覚める。
いつもはおばあちゃんに起こされて起きるのに、今日は自分で起きられた。
時計の針は大体7:20辺り。
後から思うと朝食の香りを感じなかった。
寝室の窓の外を見る。
(よし、昨日のうちに外に置いておいた靴はあるな)
靴を履き、僕は裏の畑を越え、小さな川に差し掛かる。
ふと、気になり僕は後ろを振り返る。
こちらに向かって猛ダッシュで走る金髪の老婆がいた。
異常な速度。みるみるうちに距離を詰める金髪の老婆。
腰を90度に曲げ、手を腰の後ろに回して顔は僕を見据えていた。
鬼気迫る表情で向かって走る老婆に底知れぬ恐怖を感じる。
僕はその場から一歩も動けず、ついには老婆が目の前で止まる。
それは僕のおばあちゃんだった。
髪がなぜか金髪だが僕のおばあちゃんだった。
「あんた、今どこに行こうとしてたの?裏山ではないでしょうね!?」
「ご、ごめんなさい!」
訳も分からず反射的に謝る。
すると、水面の泡沫の様におばあちゃんの姿は浮かんでは消えた。
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おばあちゃんの声で目が覚める。
周囲を見渡すと、先ほどまで寝ていた寝室にいた。
(夢...だったのか...?)
僕はまず時計を確認すると針は7:00を指していた。
さっきまでの出来事が夢だったのを安堵し扉を向く。
これから裏山に行く事を考えるのはやめておこうかな、と扉の傍にいる金髪のおばあちゃんを見て強く思った。