365回フラれ続けた俺は誰かにフラグが立っているといわれても信じない。
「好きです、付き合ってください」
「ごめん、無理です!! 妻田君にはもっといい人がいると思います」
俺の言葉に申し訳なさそうに返答をする少女。そのまま少女は屋上の扉から、出て行ってしまった。また、ダメだった。このまま飛び降りれば楽になるだろうか……俺は手すりに寄りかかりながら自虐的に笑う。高校二年生ともなれば恋人を作ってイチャイチャしているやつらもそこそこいるのだ。なのに俺はいまだ独り身である。そこそこの運動神経、そこそこの学力、そして日常会話には困らない程度のトークスキル。身だしなみにだって気を使っているし、そりゃあイケメンとは言わないだろうが、不細工ではないはずだ。なのにまたフラれたよ、もう死にてえよ。やっぱりあれかな。人間性がダメなのかな。
「さっき階段を駆けて行ったのは君が告白した女の子かな? 今度こそは大丈夫って言ってなかったっけ?」
扉から黒髪の少女が意地の悪そうな笑みを浮かべながら屋上に入ってきた。くっそ、こいつなんで嬉しそうなんだよ。また俺をからかうつもりか。
「幼稚園から数えて365回の失恋だね。おめでとう。ギネス記録も狙えるんじゃないかな」
「うるせー!! 今落ち込んでるんだから黙ってくれよ!!」
「あきらめない君が、私は好きだよ」
「はいはい、ありがとうございます!! 俺はお前のにやけ面が大嫌いだよ!!」
この少女は三田美玖。俺の幼馴染であり宿敵である。彼女との付き合いとは幼稚園からの付き合いだ。彼女とは演劇の三匹の子豚で狼役を競ったことから関係が始まった。どっちが役にふさわしいか勝負しようっていうので、ペットの犬小屋に入ってどっちが獣に近いか? みたいな勝負したのだけど、まったくの互角だった。まさか俺と一緒に犬小屋で一夜を過ごすなんてな。このエピソードを話すと決まってみんな頭が残念な人を見るような目でみてきやがる。正直俺も気が狂ってたなって思うよ。
おかげで幼少のときはチーム『野生児』みたいな感じで二人セットみたいにされてしまった。余談だがその時好きだった女の子に告ったが「なんか獣臭い」とフラれてしまった。臭くねーよ、お風呂入ってたよ。まあ、それがきっかけで戦友みたいになりなんだかんだ仲良くやっているわけだ。
「まあまあ、今日は翔の失恋記念に飲み物でもおごってあげよう」
「ありがとよ……くっそ、俺はあと何回おごってもらえばいいんだ……俺に彼女できたらなんかおごってやるよ」
「はは、期待しないで待っていよう」
帰り道の商店街でタピオカの入ったカフェオレ購入し公園のベンチで反省会をする。今流行っているだけあってそこそこ並んだが、美味いんだよな。
「今回はなんでだめだったんだ? 委員会一緒で結構いい感じだったと思うんだけど、目も何回かあったし、ラインも交換してたぞ」
「いや、それだけじゃないか、デートとかしないで告白はだめだよ……」
あきれたように言いながら美玖はタピオカをスマホで撮影している。え? 恋人が一緒に遊ぶのがデートじゃないの? てかデートなんて誘えるわけないじゃん。伊達に365回フラれていないよ。女子をデートに誘って成功する自信なんてもはや100回目くらいで砕けたわ。
ようやく満足した一枚を撮れたのか満足げにインスタに投稿したようだ。せっかくだったらタピオカチャレンジとかすればいいのに……いや、足りないか。彼女の胸部をちらっとみて思う。ちなみにタピオカチャレンジとは女の子が胸にタピオカ飲料を載せて写真をとることだ。
「うおおお、あぶねー。俺の眼球はタピオカじゃねーぞ」
「君が失礼な事を考えてるからだろ!!」
ストローを俺の目に向かって突き刺そうとした手を抑えながら反論する。くっそ、付き合いが長いからか顔に出てたか。
こうしてタピオカを飲む姿は元々綺麗な顔にスレンダーなモデル体系なだけあって絵になる。多分幼馴染じゃなかったら俺なんて相手にもされなかっただろうな。
「そういう美玖はどうなんだよ。顔だけはいいんだからしゃべったり、呼吸しなけりゃもてるだろ?」
「呼吸しなかったら死ぬよね。まあ、自慢ではないけど告白されたりもするけど、あんまりしゃべってない人に好きって言われても心に響かないなぁ。やっぱり中身を見てほしいよね」
「え? じゃあ、お前一生恋人できないじゃん。だって宝箱と思ったらごみが入っているようなもんだぜ」
「よし、その喧嘩かった!!」
そしていつものようにじゃれあいがはじまる。俺はこの時間がわりかし好きだ。多分異性として見ようと思えば彼女を見ることはできるだろう。でも告白して振られたらこんな風にしゃべることもできなくなるというのを俺は知っている。365回フラれ続けた俺はその悲しい現実を知っているのだ。
「そういや、お前はデートとかしたことあんのかよ? 何か断りにくい誘い方とかキュンとした行動とかない? 今後の参考にしたい」
「デートなら翔としょっちゅうしてるじゃないか、そうだなぁ、この間私の誕生日にサプライズで欲しかったお菓子を買ってきてくれたり、家まで送ってくれたのはキュンとしたなぁ」
全部俺じゃねーかよ。お菓子だって誕生日一週間前から欲しい欲しいと言われたから買っただけだし、家も隣だからね、必然的に送るよね。むしろ別々に帰ったら仲悪すぎでしょ。
その後もくだらない話をして俺達は帰宅した。といってもすぐまた会うんだけどね。
今夜は両親がしないので美玖が料理を作りにきてくれるのだ。キッチンからいい匂いがやってくる。俺はそろそろ料理が出来る頃だなと思い皿の準備を始めた。
「そら、今日はひき肉が安かったからね。ハンバーグだよ。せっかくだし旗でもつけようか?」
「お子様ランチかな? お子様なのはお前の体系……嘘です。すっごい美味しそう。いつもありがとうな。後片付けは俺がやるよ」
「ふふ、助かる。どうも片付けは苦手なんだ……」
包丁を持った女性を怒らせてはいけませんね。死を覚悟しました。
慣れた感じで彼女は料理をテーブルに並べ俺の向かいに座る。中学らへんからだろうか。俺の両親も彼女の両親も共働きのため一人で家にいるのは寂しいし、危ないからという事で時々こうしているのだ。それをクラスメイトに言うと「え、お前らもう付きあっちゃえよ、てかそれで付き合っていないのかよ?」とか言われるが、365回フラれ続けた俺はそんな言葉には騙されない。これはあくまで両親に言われたからだろう。勘違いするほど俺は愚かではない。
「そういや、お前告白されたりするんだな。どんなやつだよ」
「ん? 嫉妬かな。相手が誰かはプライバシーがあるから言わないけどね。まあ、私は君とは違ってそこそこもてるんだよ。彼氏ができたらこんな風にはできなくなってしまうね。なんとかしないと私の手料理が食べれなくなるね」
そう言って何やら得意げな笑みを浮かべた。ちょっとうぜえけど可愛いいな。でもそうだよなー、こいつに彼氏ができたらこんな風にはできなくなるだろう。俺が彼氏だったら知らん男の家に料理しにいってるとか知ったら切れるもん。
「このハンバーグが食べられなくなるのはいやだなぁ……そうなると結婚……?」
「何を言ってるんだ、高校生で結婚とか重いよ……」
あきれたような顔をしつつ少し顔が赤くなっている美玖。これだけをみたら実は俺のことを意識していると思うかもしれない。だが勘違いしてはいけない。365回フラれ続けた俺はそんな言葉には騙されない。どうせ、料理してて暑くなったとかそんなオチだろ。
俺達はそのままテレビをみてゲームをして怒鳴りあいながらも時間をすごす。
「ああ!! そこで赤甲羅はずるくないかい?」
「うっせ、勝てばいいんだよ。あ、お前コントローラー抜くなよ!!」
「勝てばいいんだろ? ほら私の勝ちだ。明日の映画は私が決めるよ」
そんな風にだらだらしながら深夜になったので解散した。隣の家だが一応送っていってやる。この話をするとまるで恋人みたいだねとかいいやがる。残念ただの幼馴染です。
「なあ、お前本当に三田さんとは付き合ってないんだよな?」
「それ何回目だよ。付き合ってないっていってるだろ? 365回告白してフラれ続けた俺にそんなあっさり彼女は出来ないぜ」
「うわ、一回増えてんじゃん。また振られたのかよ、お前の心どうなってんの?メンタルすごくない?」
「何言ってんだよ、ガラスのハートだよ。あ、映画の時間やばいからそろそろ帰るな」
「防弾ガラスかな。 また三田さんと帰るのか。たまには僕とも帰ってくれよな」
俺は適当に手を振って友人の山本に別れを告げた。ホモみたいなこと言いやがる。とはいえたまには山田と一緒に帰るのも悪くないよな。と思いながら少し離れた席で友人としゃべっている美玖の方へと向かった。
「美玖ー、昨日のインスタみたよ。男の人の手が写ってんじゃん。一緒にいたのは彼氏かな?」
「違うよ、いつものあいつだよ。別に私たちはそんな関係じゃないし……」
「でもこのインスタなんか幸せそうじゃん、あ、妻田ー、美玖のインスタ見た? これあんたでしょ? あんたら本当に付き合ってないの?」
「ちょっと双葉変なこと言わないでほしいな」
なにやらにやにやしている双葉さんとあわてて携帯画面を隠す美玖。もちろん俺達は付き合ってないし、365回フラれ続けるような俺はインスタのようなキラキラした世界ではなく、この世全ての闇を凝縮したツイッターの住人である。
「いやー、インスタやってないんだよな……ごめん今日も美玖借りてくね」
「いってらっしゃい、返さなくていいよ、そのまま持ち帰っていいからね」
「人をものみたいにいわないでくれるかな。また明日ね」
俺達は教室を出て映画館へと向かうことにした。今日は美玖の趣味でファンタジーアニメの映画だ。なんかすばらしい世界で祝福される話らしい。俺も異世界転生してえなぁ。ハーレム主人公になりたい。
「昨日負けたからな。ポップコーンもおごってやるよ」
「本当かい、太っ腹だね。そういうところ好きだよ。お礼に今日一日恋人ごっこでもしてあげようか? いまならなんと手をつないであげるよ」
「あ、そういうサービスはいいんで」
パパ活かな? そんなことして俺がほれたらどうすんだよ。大体まわりは俺と美玖が付き合えばいいのにとか言っているが365回フラれ続けた俺は誰かにフラグが立っているといわれても信じない。
「はあー、君はいつもそればっかりだね……私だって一年に365回くらい好きっていってるんだけどなぁ」
どうやら俺のぼやきが聞こえてたらしい。てか、こいつ好きな人いんの? 俺といて大丈夫なのかな? それともアニメキャラかなんかに好きって言ってるんだろうか? まあ、もしも彼氏ができたらちゃんと引くとしよう。なんだろ胸がズキって痛んだ気がした。でも大丈夫。365回フラれ続けた俺は心に傷をうけるのには慣れている。
「あの二人さっさと付き合えよ……見ててもどかしいんだよ」
仲良くしゃべりながら教室を出た二人をみて山本はぼやく。大体妻田も三田さんも回りがどうみているかわかっているわけではないだろうに……妻田の告白が上手くいかない要因の一つは三田さんとの仲のよさもあるだろう。もはやただの幼馴染じゃないだろっていう雰囲気は彼らは自覚していないが学校で有名だ。
「山田ー、妻田は美玖に告白する気ないの?」
「ああ、あれはだめだな。なんだかんだ肝心なところで度胸がないんだよ、あいつら」
山田に双葉が声をかけた。二人は妻田と三田がきっかけで話すようになり今では二人を密かにくっつけようとしている仲間である。
「美玖も美玖で後一歩踏み込まないのよね、なんか昔、告白っぽいこといったけどスルーされたらしいのよ」
「変なところで自分に自信がない男と普段は絡むくせにあと一歩踏み込む勇気がない女の恋愛だな。めんどくせえ」
ぼやきながらも二人は作戦会議を始める、なんだかんだ二人には幸せになってほしいのだ。もしかしたら何かがきっかけであの二人が一歩進むかもしれない。こうして今日も日常は続く。
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「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」を読んでいたらラブコメ書きたくなりました。短編はどう終わらせるかが難しいですね。
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異世界転生ものもかいているのでよかったらよんでくださると嬉しいです。こちらも今日更新予定です。
「ゲームのかませ貴族に転生した俺はプレイヤー時代の知識を使って成り上がってみせる!!」
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