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4、ノエルの嫁入り①

「久しぶりだね、ノエル!」


 (くも)りのない笑顔。勇者ホ―ネッドはノエルの手を取った。あの悪夢のような婚約発表から二ヵ月。ノエルとその家族はホ―ネッドのお屋敷に来た。ノエルの両親は村に戻ることになっているが、ノエルの弟・エドモンドとその婚約者のアリスは役人として、ホ―ネッドをサポートする。


「魔法旅団よ、御苦労だった。パーティーの準備は整っている。疲れを癒すといい。コックたちが腕を振るってくれたのでな」

「いえ、ノエル様の強力な転移魔法で全員疲れておりません」


 リーダーの赤髪の女がケロリとした顔で答える。


「そ、そうか」


 弱冠引き気味でホ―ネッドは答える。ホ―ネッドは向き直ると、ノエルの方を見る。薄桃色の美少女魔法使い・ノエルだ。色白で今にも折れてしまいそうな細い体。華奢だが、決して弱くない心。共に旅をしてきた最高の相棒にして、至高の恋人であるノエル。


「ホ―ネッド様ぁ」


 ノエルが我慢できずに抱きついて来た。


「ノエル、会いたかった・・・・・・!」


 二人はしっかりと抱き合う。


 まるで王子と姫のように絵になる光景だった。


「うわー、これ。ミリンダ様。負けましたわ―。二人の愛のパワーに」

「アリスっ、しっ、ミリンダ様に聞かれたらどうすんだよっ」


 アリスのズケズケとした物言いに慌てて、エドモンドが口を(ふさ)ぐ。


「ノエル、あれが君の新居だ。今は工事中だから。それまではミリンダと三人で部屋にいよう」

「ああ、嬉しいですぅ、ホーネッド様」









*****


 屋敷の二階の窓からノエルとホ―ネッドの抱擁はミリンダに丸見えだった。


「あの乳牛・・・・・・人目も(はばか)らずにっ、何て奴なの」


 プリプリと怒るミリンダにフィーネは黙る。


「今日から毒を盛りましょう。徐々に弱らせていくの」

「はい。計画通りに事を進めます」


 ミリンダはにやりと醜悪な笑みを浮かべた。


「それとさっきからはしゃいでいるあの子って、乳牛の妹?」

「弟の婚約者でアリス様とおっしゃるそうです。あの方たちもお屋敷に住むことになります」

「弟?へえ、あの乳牛に弟がねえ」


 ミリンダはアリスの弟を見る。なかなかの男前だ。あれでは魔法旅団の女子たちやメイドたちが放っておかないだろう。


「面白い」


 ミランダの言葉にフィーネはびくっと震える。また良からぬことをミランダは思いついたのだろう。フィーネは恐怖に震える自分の体を止められなくなっていた。


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