第三試合 -相撲-
「悟空 vs. サーマート始め!」
悟空が大きく深呼吸をする———
久しぶりに暴れられる
荒々しい喜びから果敢にも、
試合開始と共に相手に正面から
ショルダータックルで
突っ込んで行く。
対戦相手は体重200キロは
優に超える巨漢サーマート。
そのあまりにもデカい鎧のような
脂肪の壁に突進した悟空が大きく
弾き返される。
「ふぉふぉふぉ、
吾輩の肉をチミ
ごときが破るのは無理じゃ」
サーマートが厚い
脂肪の層を震わせ、
床に突っ伏した悟空を嘲笑う。
王者モンクットの攻撃をも、
はね返すのではないのかと
観客内で噂されていたほどの
ディフェンスの達人であり、
日本の国技である相撲の
起源とも呼べる形態をもつ。
「俺様の怪力に
ビクともしねーとは……
今度は少し本気でいくぜ!」
再度、勢いをつけての体当たりも、
地面に脚を踏ん張り余裕で耐える。
「クソッ、脂肪が
クッション代わりに……」
「今度は、こちらの番じゃ憤!」
「のわ!?」
強烈な張り手を悟空に
お見舞いするサーマート。
とっさに両手でガードし勢いを
殺すも、そのパワーは強烈であり、
吹き飛ばされた悟空は石板の角に
しがみ付き場外を免れる。
「……上出来だ。
猪八戒の野郎といい勝負だぜ!」
懐かしい仲間を思い出し、
ついつい笑みがこぼれる悟空は
体を回転させ元の位置へ戻る。
巨体を駆使してのぶちかましは、
まともに食らえば今度こそ場外に、
はじき出される。
が、それでも逃げずに真正面から
サーマートへ飛び掛かる。
「おめぇを吹っ飛ばすのが、
無理ならよぉ……」
そのまま加速し、
中空で前傾姿勢になる。
「俺様の石頭を食らいなッ!」
「あいたぁ!?」
短い絶叫の後、肉の城壁が、
ゆっくりと石床へ崩れ落ちる。
喧嘩殺法が見事に
決まった瞬間であった。
「勝者、悟空!」
「鉄壁のサーマートが負けちまったぞ……」
「あのチビ何者なんだよ!?」
観衆の声援の中、小さな
猿人が屈託なく笑って見せる。
「これで、決勝戦で博士と
当たったら、どうなるのかしら?」
「その時は得意の反則技で
博士には負けてもらいましょう。
ヘイト役らしくねぇ」
すっかり実況者になりきっている
八百とホムンクルスであった。