最果て
八百が絶海の地に滞在して数日がたつ。
それは南大西洋に浮かぶ火山島であり
島には唯一の集落と呼ばれる場所に
ヴァカ博士の施設がある。
集落の名は
『エディンバラ・オブ・ザ・セブン・シーズ』
かのビクトリア女王の子息
エディンバラ公が訪問した際に、
その名を付けられ
最果ての孤島ではあるが
衛星によってインターネットは
利用でき船が停泊できる港もある。
ウェールズ本土から
やってきた八百は
地層や、植物、動物など
有形・無形の文化遺産を
調査するかたわら、
ヴァカ博士の怪しげな
研究の助手として
実験の雑務をこなしていた。
……といっても朝は、
まずヴァカが栽培した
怪しげなコーヒー豆を
ドリップして軽食を作ったり、
昼は水槽に培養された
謎の植物を観察し経過を
データに記録したり、
夜はごちゃごちゃに
チラかっている様々な
研究資料の整理整頓など、
いたってOLがやるような雑事である。
そして資料や実験を通して
見えてきたヴァカ博士について――
年齢は20代~30代であろうか。
すらっとした長身やせ型、
性別不詳のフェミニン系。
白髪のポニーテール、
くるっとした前髪、
分厚いクチビルと
分厚いグルグルの
丸眼鏡からは瞳が見えず、
戦争やお金儲けもできたであろう
数々の技術をルンルン気分で
趣味に使っている。
この恐るべき能力は、
まるでシャカのごとく
神のような存在なのか、
それともただのバカなのか。
ついた異名が『ヴァカ』
その世界の筋では、
よからぬ噂が蔓延している。
しかし実は無害な人物なのでは?
八百自身も、そう考え始めていた。
あの世紀の装置を
発見するまでは————