その名は
――西暦2018年――
絶海の孤島
『トリスタン・ダ・クーニャ』
それは南米から、およそ3千キロの大西洋の
ド真ん中にあり世界一孤立した島と呼ばれる。
島の集落にはポツリとラボが置かれており、
中では長身のすらりとした白衣の研究者が一人
ものぐさそうに皿の上で得体のしれない植物の
切れ端をフォークで突いて観察していた――
「色、きらめき、トキメキよし!」
謎の植物は、まだ生きているのか
クネクネ動きながら、そのままフォークで
貫かれ研究者の口へと運ばれていく。
「あんもぉ、味は察し!?」
噛み砕かれ、なおも口内で、
のたうつソレを一気に飲み下し、
三時のおやつを済ませる。
と、同時にラボへの来訪者の
存在を告げる電子音が研究機材に
ハメ込まれたスピーカーから響く。
乱雑に机の上に置かれたディスプレイに目をやると
ラボの入り口付近に設置された監視カメラが
幼い女性を映し出していた。
『麗しの科学者』
その筋で有名になってしまっている
のも博士は自覚していた。
だからこそ、面倒な諸々の庶務雑務やらを
処理してくれる助手が欲しいと思っていた。
ちょうどそんな時期に『彼女』は
見計らったかの如く目の前に現れたのである。
「……八百です博士、開けて下さい」
それはシャカのような神の存在なのか?
それともただのバカなのか?
人々は麗しの博士をこう呼ぶ
『ヴァカ』と――