ロスチャイルド
数日後————
「パスポートの提示をお願いします」
ケープタウン行きの
定期貨物船で島を出たヴァカは、
久々に空港の窓口にて
職員の指示に従い自らの
パスポートを提示する。
パスポートの紙面には
ヴァカとは違う名前が表記されている。
『スノウ=ロスチャイルド』
この稀代のマッドサイエンティストは、
本名はハレルヤ、異名はヴァカ、
戸籍はスノウという三つの顔を持つ。
スノウ=ロスチャイルドは、
ヴァカを拾った冒険家
ロスチャイルドが付けた名前であり、
これがヴァカにとっては
正式な戸籍上の氏名となる。
「良い空の旅を♪」
ヴァカは窓口での手続きを済ませ、
東京行きの国際便のターミナルへと足を進める。
ちなみにヴァカと共に
トリスタンダクーニャで拾われたゴミィもまた
戸籍では『グレイ=ロスチャイルド』の名を貰っている。
二人とも国籍は
トリスタンダクーニャが
イギリスの海外領土のため、
それに倣い一応イギリスとなる。
そんな自分の過去を回想しつつ、
ヴァカは離陸した飛行機の客席から、
眼下の大西洋を眺めるのであった。
時に西暦2024年ー令和6年ー
「アキバも随分
キレイになったわね~」
東京の秋葉原に着いたヴァカは、
昔ゴミィと一緒に秋葉原で
レトゲーを買い漁ったことを思い出し、
区画整理で小奇麗なビジネス街に
なりつつある今の秋葉原と比べ、
何とも言えない嘆息を漏らす。
それより直近では
イートニャンだったころの冒険を思い出し、
何度か日本にも来たなと懐かしさに浸る。
もっともその時は江戸時代だったので、
すっかりコンクリートジャングルと化した
今の東京に、その面影はほとんど残ってはいない。
「スノウ=ロスチャイルドさん。
ようこそ日本へ。徳川ホールディングスの徳川零です」
サモンシーカーの会場につくと、
サングラスにスパンコールのラフな
格好の好青年に声を掛けられる。
ゲームにも使っている
ハンドルネームの『ヴァカ』ではなく、
戸籍の氏名で呼ばれ、ヴァカは少しばかり
『徳川』を名乗る目の前の男を警戒するのであった。




