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イートニャン  作者: 坂本龍馬♀
―東京―
269/273

サモンシーカー



ここはトリスタンダクーニャ。

人が住む地域としては

世界で最も孤立した辺境である。


そんな中でヴァカ博士はいつも通り、

自らの研究に没頭しているかと思いきや————



「この道具カードを装備して……」


「よっしゃ、クイズに正解してヒントGET!」


「お、複数で来る!? ならこのカードを使って……」



ゴテゴテした機器が付いた

ゲーミングパソコンで、

ヴァカは独り言を喚いている。



「あんもぉ☆

どいつもこいつもアホばっか!」



奇声をあげガッツポーズを決める。

どうやらオンラインゲームの

対戦に勝利を収めたらしい。



「いけない……

息抜きにやるつもりが……」



勝利の余韻から覚め、

少し冷静になってヴァカが呟く。


パソコンのディスプレイには、

『サモンシーカー』という文字が映っている。


最近、日本でリリースしたゲームの名前である。


サモンシーカーとは、アバターを

使用したオープンフィールド型のバトルと、

クイズを解きゴールを目指す要素を掛け合わせた

オンラインゲームである。


その革新的なアイデアから、

今やその人気は日本を超え世界で

ヴァカ博士のような熱狂的な

ファンを獲得している。



「そろそろ、研究に戻らないと」



ヴァカがゲームを

ログアウトしようとした、

その時である————



「ん、ブラフマン!?」



突如としてフィールド上に、

ヒンズー教の修行僧のような恰好をした

アバターが現れると、


ハンドルネームを見た

ヴァカの脳裏にふと、

うんちくがよぎる。


ブラフマンとは、

古代インドに発するヴェーダ哲学において

宇宙全体の根源をさす。


そんなおおげさな

名前を付けて挑んで来る相手に、

ヴァカはこれまで倒してきたプレイヤーとは違う

知的なセンスと強敵の雰囲気を感じ取っていた。


先ほどまで研究所としての

本懐に立ち返ろうとしていたのも

つかの間、ヴァカは再び

ゲーム画面にくぎ付けになる。


ところが、数分後————



惨めにゲーム画面の前に

うなだれるヴァカの姿があった。


次の日も、また次の日も

ブラフマンに挑むも、

ことごとく敗北を喫してしまう。



「ぐぬぬ、研究しなくちゃ

いけないっちゅーのに(>_<)」



ブラフマンとの邂逅から一週間が経っていた。

ヴァカは今日もブラフマンに連敗し、

頭を抱えながら『サモンシーカー』に夢中になっている。


そんな中、パソコンのタスクバーに、

未読メールの通知を知らせるマークが浮かぶ。



「あたし宛に?

珍しいわね……」



ヴァカはパソコンの

メール画面を開いてみると

差し出し人は、徳川零とあった。



「え、なんで!?」



思わずヴァカは目を疑い

メールの文面を凝視する。



徳川零とくがわれい



今やゲーマーであれば、

その名を知らぬ者は、

いないであろう。


このメールの送り主こそ、

『サモンシーカー』を作った

クリエイター張本人である。


サモンシーカーが有名作になった事で、

その名前は一躍世界の知るところとなり

世情に疎いヴァカでさえ

徳川零の名を知っているほどである。


メールの文面は丁寧な文体で

概ね次のようなことが書かれてた。



サモンシーカーの世界において、

『ヴァカ』は、その驚異的な戦績から

一角のプレイヤーとして注目を

浴びているということ。


ここ最近の『ヴァカ』と

『ブラフマン』の戦いのログも、

徳川零自身が全てチェックしていたこと。


今度の連休に日本の秋葉原のゲームショップで

公式戦とは別個にサモンシーカーの大会が行われるので

是非ヴァカにも直接会場にきて参戦して欲しい、と。


そして最後の文面に

ヴァカは強く心惹かれた。


ブラフマンのプレイヤーにも

同じ誘いのメールを送ったので、

今回の大会にそのプレイヤーが

来る可能性は高いとのこと。


リベンジを果たすと共に、

そのプレイヤーと直接対面を

果たしてみたくはありませんか?


という一文によって

メールは締めくくられていた。



「ふ~ん、日本か。

どうしようかしらねぇ~」



言葉とは裏腹にヴァカの心は

もう決まっていた。


天才である自分を何度も打ち負かした、

フラフマンという名のもう一人の天才。


そして普段は熱狂とは無縁の自分をハマらせた、

『サモンシーカー』を作った徳川零の粋な計らい。



「こんなゾクゾクするのは、いつぶりかしら」



ヴァカは迷うことなく

零へ大会参加の返信をタイプする。


久しぶりに好奇心を強く揺さぶられる

瞬間を感じていたのであった。



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