World's Mine (3)
「フェノやんに……
ドラ公!?」
ここに呼び出されたのは
イートニャンだけであるが、
耳のいいフェノメノンにとっては
遠くからでもすべて筒抜けであった。
フェノメノンはドラクルを誘い
森で監視していたらしい。
断崖に現れた二人の人物をみて、
八百が臆する様子もなく
ドラクルに声をかける。
「大魔王様。
私は地上には興味がありません。
書を発動したあかつきには、
この地上を任せますよ。
代わりに私は主を失った魔界を手にし、
そこで楽園を築きたいと思っています」
「ふむ……」
ドラクルは、肯定も否定もせず、
ただ静かに見守っている。
大魔王にとっては
ネクロノミコンさえ取り戻せば、
あとはどうでもいいという
事なのであろうか。
それとも何か考えがあり
二人の決着を静かに
見届けているのであろうか———
「八百。
私の真の目的をまだ
言ってなかったな」
フェノメノンが、
ゆっくりと語りだす。
「フェノさん、もはや
あなたが何者であろうと、
博士が降参している以上は
出る幕はないのよ」
気だるげに八百はせせら笑う。
「……どうかな。
私がここにいるのは全て、
この時のためだとしたら?」
フェノメノンが再び笛を構えると、
安らかな音色が静寂な海と森を包み込む。
「長い間を待ち続けたのは、
なにもお前だけではない。
響けレクイエム!
彷徨える者の魂を解放したまえ!」
高らかに最後の秘儀を唱えると、
フェノメノンの楽譜が強く輝きだす。
その清浄な白い光は八百の体に導かれ
中へとしみ込んでいく。
「な、これは……」
八百の体から一瞬、
霊魂らしき物体が天に昇ると、
みるみる内に抜け殻となった肉体が
禍々しい人魚の体へと変貌する。
「今だイートニャン!
八百の魂を本体から引きはがしたぞ!」
勝負がついたのは一瞬である。
イートニャンがダッシュと
同時にナイフを召喚し
人魚、すなわち
ヴェパールを一刀両断すると、
素早く一飲みし胃の中に
消化させるのであった。
その直後ゴエティアが輝き、
紙面に記された悪魔の名前まで
鮮烈に輝きだしては、次々に
その名前の部分が消えていく。
やがて書そのものが白く輝き、
焼き崩れて灰になると
悪魔を探し消滅させるために創られた
この書もまた役目を終えるのであった———




