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イートニャン  作者: 坂本龍馬♀
―トリスタン・ダ・クーニャ―
261/273

World's Mine (2)




口から発せられたのは八百の

声色ではなく異形の何かの声――


まるで、この時を待っていたかのような

暗い歓喜がイートニャンには感じられた。



「汚いぞ……」



「いーえ、私は私ですよ。

現に博士は倒す事ができないはず」



「そりゃ人質みたいな

真似をされるとね」



「しかし、私はこの

安物のナイフを博士の

心臓へひと突きするだけで

デモンイーターを簡単に始末できる」



今まで様々な強敵と戦ってきた。

ある時は船の上での海獣との闘い、

ある時は空の上での飛龍との闘い、

ある時は能力を封じられた状態での闘い、


時には大魔王ドラクルとの死闘までも

制したイートニャンであったが、


そのどんな強敵よりもたった

一本のナイフで向かってくる少女が、

ここにきて最後のそして

最大の脅威になっていた。



「わかった、降参よ。

だけど一つ教えて」



「……なんですか博士」



断崖絶壁の上で、じわじわと

迫りくる八百の足がとまる。



()()()の目的は、人類じゃなく

同じシードの滅亡だったの?」



イートニャンの質問に、

八百が冷徹に微笑む。



「言ったはずです、私は私であると。

二つの自我はお互い離れられない存在。

出会った時から、博士が見ていたのは

八百でもあり、シードの化身

ヴェパールでもあるのです」



「じゃあ、あの山籠もりの話は何!?」



「確かに一時は八百に

体の主導権をとられました。

しかし、それも永久を生きる

私には時間の問題でしてね。

じっくり泳がせておいたのですよ、

この時を長い間、待ちながら」



「この時って……

別にあたしをやるのは

いつでも出来たじゃん?

寝込みを襲うとかさ」



それは見当外れだと、

ヴェパールが肩をすくめてみせる。



「私は八百と共に

見てきたのです。

時代を、世界を……


当然、シードの所業は

見過ごせないものがある。


人間も同じ人類だからといって

全員が仲良しじゃないでしょう。


ゆえに寝込みを襲い

博士を殺す必要はない。


だから体を譲ったのですよ。

時がくるまではね」



「なんで時がきたら、

あたしを始末する必要があんのよw」



「八百の目論見は

私もろとも消す計画でした。


でも私の見解は八百とは

最後の部分だけが異なる。


まず、グシオンを泳がし書を集めさせる。

そして用済みになったグシオンには、

デモンイーターであるあなたに

始末させ、集めた書をいっきに奪う。

まさに一石二鳥というやつですね」



八百が着ている法衣の内側から、

ヘルメス文書とルルイエ異本を

取り出し地面にバサリと放り投げる。


二冊の書はネクロノミコンと共に

グシオンに奪われたはずであるが、

ファルザードの内戦において

いつの間にか取返していた。



「これは大魔王様が

ネクロノミコンと共に回収したもので、

そう簡単には燃やせない爆発にも

耐えうる禁忌の書。

だから無傷で入手できたのですよ。

いずれ手元に戻ると思っていましたがね、

赤い石が私の前に現れるように……」



ヴェパールがポケットから

龍石をとりだしてみせる。

先のファルザードの争乱で

手に入れていたのであろうか。



「グシオンが博士じゃなく

悟空とホム君に敗れたのは想定外でしたが、

結果的にグシオンが消えたのならそれで結構。


運命は私の味方を

しているというだけの事。


あとは、取り返したこの

ルルイエ異本で精霊を呼び出し、


白紙のヘルメス文書に72体目を私から、

イートニャンの名前に書き換えてもらえば

ゴエティアの準備は完了です。


あなたの死をもって私以外の

シードを全時空から消し去る事ができる。


()()()()

博士の存在も全時空から消えます。

宇宙に旅立ったハレルヤ博士もろとろもね……」



ゆっくりと迫る八百。

鋭いナイフが心臓を狙っている。


イートニャンにとっては、

かわすことも反撃することも可能である。


しかし、いくら人格が

ヴェパールであるとはいえ、


八百の姿である限り

デモンイーターの力を発動する事は、

イートニャンことヴァカ博士には出来ない。



「何がもちろんなんだか(>_<)」



その時、

二人しかいない断崖の絶壁から

やや離れた森の影から優しく、

そして哀しい笛の音が風にのって流れた――



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