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イートニャン  作者: 坂本龍馬♀
―ファルザード―
259/273

World's End


数日後。

多くの犠牲者をだしたこの戦いで、

ハレルヤ博士は、残った少数の天人と共に

他の星へ移動する事へ決める。



「行ってしまうのね……」



八百が新たなファルザードの

リーダーになったハレルヤに、

名残惜しく声を掛ける。


生き残った天人たちは

戦後処理を含めて総員で、

この星に留まるべきか

否かを議決に掛けた。


その結果が新たな新天地を

目指すという決定である。



『何のために多大な犠牲を払い、

飛龍を滅ぼしたのだ!』



『もはや敵はいないのだぞ?

今度こそ安住できるのではないのか!?』



との声もあったが、

ハレルヤはこう反論したらしい。



『ここに来るべきでは

なかったのかもしれない。

何よりもこの惑星の未来の調和を、

取り返しのつかない形で乱してしまった』



ハレルヤにゴミィ、その他の天人たちが、

軌道エレベーターで地上に降りようとする

八百たちに別れの挨拶をする。



「……お元気で。

危ない研究は、ほどほどにね」



「願わくば、その力を新たに

出会う星のために使って欲しい」



八百とフェノメノンが

別れの言葉を投げかける。



「分かってるよ。

キミはどうするんだい?」



ハレルヤがドラクルに視線を向ける。



「元はこの場所で生まれたとは言え、

あまりにも長い時を過ごしてしまった。

余は、この第二の故郷の未来を

見定めるため、ここに残るとしよう」



ドラクルにとっては自身を作り出した

生みの親との今生の別れである。


二人が固く抱擁を交わした後、

八百たち一行は空へ向かって新たな

旅へ出る天人達を見送るのであった。



「……さて、私たちも戻りましょ。

もしかしたら悟空やホム君が

先に戻って待っているかも」



地上に残った八百と、

ドラクル、フェノメノンは

タイムマシーンがあった場所へと向かう。

そこに待っていたのは————



「貴様が簡単に負けるとは

思っておらなんだが……」



「死んだと思ったのよ!?」



八百の言葉に

イートニャンが

辛そうに口ごもる。



「アリスが、ね……」



大気圏ギリギリの戦場で、

それぞれの機神は摩擦で

燃やされつつあった。


揉みあいの激闘の末、

ついにフォークで敵の

コックピットを突き刺す。



「「馬鹿な、私たちが

おされるなどと……」」



ついに露になったヴァサゴの核。


そのまま宇宙空間に

イートニャンは飛び出し、

断末魔を上げるメビウスと

ヴァサゴを捕食する。



「すぐに戻って!」



機体の損傷をチェックしていたアリスが、

破壊された敵機の異変に気が付く。


イートニャンが敵の

コックピットに目をやると、

自爆までのカウントダウンを示す

コンソールの赤い数字が、

無慈悲に残り時間を告げていた。


ヴァサゴがイートニャンに

捕食される最期の直前、

せめて道ずれにしてやろうと、

自爆コードを発動させたようである。


コックピットに戻ったイートニャンが、

必死の形相でコンソールを叩く

アリスの顔を不安そうに覗く。



「腕が絡まって抜け出せない————」



白兵戦によって機神の体が絡み合い、

敵機の腕を引き離そうにも、

自機のユニットも損傷し

思うように動かなくなっていた。


加えて大気圏の摩擦熱で、

外部装甲の耐久力は限界に達し、

エンジンも排熱が追いつかず、

無理をすればオーバーヒートを

起こすことは避けれそうにない。


自力での帰還は、

もはや不可能であった。



「あんもぉ☆

万策尽きたわ(>_<)

これもシードを創った報いかしら……」



イートニャンは死を覚悟する。



「あ!

まだ、生きている

システムがありましたw」



一筋の光を見出したアリスが、

あるスイッチを躊躇ためらいなく押す。


直後、イートニャンの座席が切り離され、

脱出ポッドとなってそのまま地球の

重力に引かれ落下する。


緊急脱出用のスイッチの内、自分の

座席だけが運よく起動したように

イートニャンは思えた。



「アリスちゃん!?」



アリスが残った機神は、

半壊したエンジンのブースターを

最大限に解放し、敵機の残骸ごと

宇宙の彼方へと飛び去っていく。


アリスの座席の脱出装置が

機能しなかった訳ではない。


元からこうするつもりだったのであろう。

爆発からイートニャンを遠ざけるために。






「……そうか、最期まで

聡明な女性であったな」



ドラクルがアリスをしのんでみせる。



「無事だったなら、なんで

すぐに姿を現さなかったの!?」



詰問きつもんする八百にイートニャンは

後頭部を掻きながら面目なくうつむく。



「脱出ポッドの着陸地点が

ドラゴヴァレスだったのよ。

捕食し忘れてた敵の残骸が

あったからちょうどよかったわ。

ところで、悟空ちゃんとホムは?」



そのとき、夜空を

二筋の流れ星が駆ける————



ドラクルは深く目をつむり、

ようやく取り戻した書を

きつく握りしめていた。


それはエクシードと化した

メフィストがいた場所に落ちており、

悟空とホムンクルスも居たはず。


そこにおもむき、書を無事回収したドラクルが、

その顛末てんまつを知らないはずが無い————



「元の時代に戻り、

余は杯を上げるのだ……

書を取り戻せたからではないぞ。

貴様も今夜は晩酌に付き合え」



イートニャンが

言葉なくうなだれると、

夜空を見上げているドラクルと八百に、

フェノメノンが静かにつぶやく。



「この時代とも永遠にお別れだ。

二人の勇敢な仲間ともな————」



覆面音楽家の持つ楽譜が

不気味に輝くのであった。



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