狼煙 -者-
一方、天狗とドラクルも
眷属を撃退し、互いに
激しい攻防を繰り広げていた。
ドラクルが
魔法の達人であるなら
天狗は体術の達人である。
接近戦は不利とみて
魔法で牽制するも、
天狗の肉体はそれを
弾く剛体であり、
ドラクルが捨て身覚悟で
剣で切り込み天狗の面を
割ってみせる。
「……やはりな。
自分との闘いというのは
御免こうむるものだ」
天狗の面を砕くと同時に、
両手剣も砕け散る。
ドラクルをベースに改良された
天狗の魔人は、顔も同じであった。
「どうした同胞よ。
うぬの力は、その程度ではないはず」
あらゆる魔法が弾かれ、
剣をも破壊されたドラクルは
二人きりしかいない、
このフィールドでなら
奥の手である禁忌の呪文が
使えると静かな覚悟を決め、
ゆっくりと両手を合わせ
大きく息を吐きだす。
「……そうだ。
出し惜しみせず全力で来い!
その技が通じなかった瞬間、
勝敗は決定するのだ」
張りつめた異様な空気を
感じた天狗が武者震いをする。
「これは二度と使うまいと、
余は決めていたのだがな」
イートニャンらと
出会うよりも前、
かつて空中都市で飛龍の
大軍と戦っていた時、
今と同様に天人たちの
勢力は劣勢であった。
ドラクルは最後の手段として
ハレルヤ博士から禁じられた
力を発動させる。
しかし、心身ともに
未熟であったドラクルは、
その力を制御できずに暴走。
結果、飛龍の大軍を全滅に
追い込む事に成功するも、
ファルザードをも飲み込む。
都市が崩壊するその最中、
ドラクルは動力源である
ネクロノミコンの魔力を利用し
命からがら逃れる事ができた。
ファルザード文明と
飛龍絶滅のトリガーを
引いたのはドラクルであった。
自身のせいで多くの天人の命を
奪ってしまった自責の念から、
後に72柱との
戦いに身を投じた後も、
これだけは使うまいと
固く決めていたはずであった。
今日この日を迎えるまでは————
「技の名は無い。
が、惑星もろごとを断つ、
『魔断』とでも命名しておくか」
それは、地上の大陸を
軽く削るほどの威力であり、
炎、水、雷、風の元素を
一点に全解放する事によって発動する。
反面、ネクロノミコンの
ない状態で行えば当分、
魔法は使えなくなり、
必ず当てなければ
敗北は必至。
しかし、幸運にも
ドラクルと天狗のいる場所は、
ファルザードの最上部。
さえぎるものも、
誰かを巻き込む事もない。
最悪でも消えるのは
二人で済むのである。
「なんだと!?
自爆するつもりかッ」
「貴様は、これまで闘った
どの敵よりも強かったぞ。
さらばだ!」
天狗もろとも、
太陽のような巨大な光に
ドラクルは飲まれていく。
かつての贖罪と、
満ち足りた顔を浮かべ————




